マンチェスター・ユナイテッドがラルフ・ラングニックを暫定監督に採用した理由は2つある。
まず、大きな影響力を持つドイツ人戦術家はミスが多く、組織化されていないチームに秩序と一貫性をもたらすことが期待されていた。そしてプレミアリーグをトップ4で終え、来シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)行きを決めてほしいという思惑もあった。
だが現在、ユナイテッドはCL出場圏内に入っておらず、オーレ・グンナー・スールシャールが解任されたときと状況(当時7位)はさして変わらない。つまりラングニックはフィールド上で結果を残すことができていないのだ。
では、この役割から離れた後のラングニックは、どんな未来を見せてくれるのだろうか――。
そもそもコンサルタントとしてチームに残れる契約があったからこそ、ラングニックは暫定監督の地位を受け入れた。6か月少々の期間だけの仕事を受けたい指揮官はそれほど多くない。
ただ実際のところ、アドバイザーとしての役割は、権力、影響力のどちらも限定的だと言われている。
確かにラングニックは現在トップチームでの役割に集中しており、リーグ戦は6試合残っている以上、トップ4に滑り込める可能性は完全に潰えたわけではない。だが、後任の正式監督の選定にラングニックは関与していないことも事実だ。本人がこのように語っている。
「何人かに話を持ちかけたことは知っているが、これまでのところ、その会談で得たことや印象については聞いていない。これについては私の担当ではない。私にとっては、次の試合に集中することが重要だ」
次期監督選定のタスクを担っているのは、フットボール・ダイレクターのジョン・マータフ氏、テクニカル・ダイレクターのダレン・フレッチャー氏、そして新CEOのリチャード・アーノルド氏の3名。情報筋によると、ラングニックは新戦力や新監督についてのミーティングには参加している模様。だが、彼の意見は“尊重”されるものの、“重視”はされていないとのことだ。
■明確な計画を提案したが…
Gettyラングニックはこれまで4か月間チームと共に行動しており、数年以内にユナイテッドがメジャータイトルに返り咲くためにすべきことをはっきりと分かっている。
会議では自身の意見を上層部に何度も伝えており、来季に向けていくつかの計画を実行すべきだと提案しているという。
ひとつが、選手獲得の際にマンチェスター・シティやリヴァプールを参考にすべきだということ。まずは特定のプレースタイルをチームに根付かせ、それにフィットした選手を連れてくるというやり方だ。現時点でユナイテッドに明確なプレービジョンはない。
二つ目は、オールド・トラッフォードでプレーするに値するメンタリティを持ち合わせているかどうかを重視するということ。当然、強いフィジカルやアグレッシブさ、技術などを求めた上で、ユナイテッドのユニフォームを着る素質を持っているかを見極める必要があると考えている。
そして最後に、これまでの失敗を修正するためには移籍市場3回分の時間がかかることを受け入れる必要があると主張した。
だが、あくまでもラングニックの主な仕事は今季をできるだけテーブルの上で終えるということのみ。新監督を探すのは他の人間で、当然プランを立てるのも別機軸にあると、情報筋は伝えている。
■テン・ハーグ就任後はどうなる?
Getty Imagesエリック・テン・ハーグが正式な面談の場で感銘を受け、このポジションに就くための交渉を進めていると言われている。リーグ優勝を争っている最中のアヤックスは避けたいだろうが、シーズンが終わる前に正式発表を行う可能性も否定していない。
新監督がやってくれば、もちろんラングニックはオールド・トラッフォードのベンチから退くわけだが、彼の新たな役割がどのようなものになるのかについては、若干の混乱が見える。
オーストリアサッカー協会は、スポーツ・ダイレクターのペーター・ショッテルがラングニックに代表監督就任を打診したという報道をすでに否定する動きを見せている。
だからといって、ラングニックがユナイテッドでコンサルタントを続けながらよそで監督業を行うことができないというわけではない。
そういったやり方ができるどうか12月に尋ねたときには、ユナイテッドの幹部が決めることだとラングニックは話していた。そして今も、監督業から降りた後ラングニックがどうなるのか、まだはっきりしていないのだ。
実際のところ、コンサルタントとして月に数日程度しか従事しないのではないだろうか。
クラブはラングニックの知識や経験を活かしたいと思ってはいたが、彼にオファーしたときには、アーノルドやマータフ、フレッチャーらのような新たな階層の一員として迎え入れるという考えはなかった。
シーズンが終わり、新監督がやってくれば、ラングニックがチームにどれほど携わっているのかが明らかになるだろう。