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4冠を追ったリヴァプールの感動的な冒険。胸を張れる歴史的なシーズン

夢の4冠を追い続けた戦いは、最終的に2冠で幕を閉じた。これほどの強さを誇り、世界中のサッカーファンを虜にしたチームでも、最終的には国内カップの“ダブル”に留まった。そう考えると物寂しいシーズンに思えてしまうが、決してそんなことはない。彼らは後世まで語り継がれる歴史的なシーズンを送ったのだ。

プレミアリーグの最終節で優勝を逃したリヴァプールは、“カップ・トレブル”を目指してスタッド・ド・フランスのピッチに立った。彼らが目指したのは21年前の再現。ジェラール・ウリエ監督の元でカップ3冠を果たした2000-01シーズンも、公式戦63試合という長丁場の過酷な戦いだった。しかし、あの頃と比較するのは今季のチーム、そしてユルゲン・クロップ監督に失礼だろう。

21年前もリヴァプールはリーグカップを制したあと、FAカップでも頂点に立って、最後に欧州カップ戦のファイナルに臨んだ。しかし、そのシーズンは早々にリーグ戦の優勝争いから脱落し、優勝したマンチェスター・ユナイテッドに11ポイントもの差をつけられ、3位に入るのが精いっぱいだった。公式戦63試合の成績を見ると、21年前が38勝14分11敗だったのに対し、今季は最終的に46勝13分4敗。わずか4回しか負けなかったのだ…。

だから当時と比較することはできないが、残念ながら、それは敵チームについても言えることだった。今季リヴァプールはプレミアリーグで「92ポイント」も稼ぎながらマンチェスター・シティに1ポイント及ばずに優勝を逃した。勝ち点92は、プレミアリーグ史上8番目の成績で、リヴァプールの今季の成績ならばプレミアリーグ発足後の30年間のうち24シーズンは優勝できていた計算になる。当然、2000-01シーズンのユナイテッドの優勝ポイント(80)も遥かに凌駕しているのだ。

21年前と違うのは、プレミアリーグのレベルだけではない。当時の3冠は国内カップ2冠と欧州で“2番目”の大会、UEFAカップだった。そして決勝の相手は、そのシーズンのラ・リーガで10位のアラベスだった。だから欧州No.1を決めるチャンピオンズリーグの決勝で、ラ・リーガ王者と対戦した今シーズンとは比べものにならないのだ。

レアルの神通力

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そしてチャンピオンズに愛され続ける白い巨人は勝負強かった。10回勝負すればリヴァプールが勝ち越すくらいの実力差はあったはずだが、一発勝負の怖さを痛感することになった。注目のファイナルは会場の盛り上がりに反し、気持ち悪いほど大人しい幕開けだった。それもそのはずだ。リヴァプールは最近5年間で3度目、レアル・マドリーは9年間で5度目の決勝である。欧州で最も経験豊富な2チームは、サポーターの熱気や36分間ものキックオフ遅延の影響を受けることなく、まるで普段のリーグ戦のような落ち着きでゲームに入った。

それでも時間が経つにつれて試合を支配したのは、やはりリヴァプールだった。そこは、両者が前回ファイナルで対戦した4年前から積み上げてきた戦力の差が出たのだ。2018年の決勝でリヴァプールが敗れた敗因は主に2つ。GKロリス・カリウスのミスと、試合前半に怪我で交代したエースの穴だった。あれからリヴァプールは世界最高の呼び声高いGKアリソン(今回のファイナルは少し浮足立っていたが…)を獲得し、モハメド・サラーが不在でも戦力ダウンしない前線のタレントを揃えた。

だからリヴァプールが押し込んで好機を作り続けたのは予想通りだった。しかし、彼らの前に立ちはだかったのはレアル側の“積み重ね”、4年前のファイナルの数カ月後にレアルに加入した二人のタレントだった。まずは、アリソンと双璧をなす世界的GKティボー・クルトワだ。前半20分のサディオ・マネのシュートや後半のサラーの決定機など、CL決勝で歴代最多9本のセーブを記録してマン・オブ・ザ・マッチに輝いた。そして59分に決勝ゴールを奪ったのは、何度もリヴァプールの最終ラインの背後を狙い続けたヴィニシウスだった。

CL決勝では、7年連続で先制したチームが優勝するという嫌なデータも気になったが、それでもリヴァプールならば巻き返せるように思えた。なぜなら、彼らには前人未到の4冠を目指せるだけの圧倒的な選手層があったのだ。今シーズンの新戦力も、今後が楽しみな活躍を見せた。決勝の3日前に誕生日を迎えたCBイブラヒマ・コナテは、サンドニのピッチの上でも23歳になったばかりとは思えないほど落ち着きを払った。1月に加入したルイス・ディアスも、欧州5大リーグに初挑戦ながら、シーズン後半戦は失速したサラーやディオゴ・ジョタの代わりに我が物顔で積極的に高速ドリブルを仕掛けてきた。

ベンチを見ても頼もしい選手がずらりと並んでいた。今季プレミアリーグのベストイレブンに選出されてもおかしくないDFジョエル・マティップ。シーズン前半戦にサラーと共に攻撃を牽引したFWジョタ。今季CLでサラーに次ぐチーム2位の5得点を決めたFWロベルト・フィルミーノ。そして国内カップ2冠の立役者であり、FA杯の大会ベストイレブンに選ばれたFW南野拓実など、世界各国のタレントが控えていた。しかし、投入されたジョタやフィルミーノも最後の最後までGKクルトワの牙城を崩すことができず、公式戦19試合ぶりの敗戦を喫して“ビッグイヤー”を獲り逃した。

このリヴァプールでも優勝できないとなると、1992年に大会が刷新されて以降、CL決勝で無傷の8戦全勝というレアルには実力だけでは説明できない強さを感じてしまう。CLはシンプルな大会で、22人の選手が90分間ボールを追い回した末にレアルが優勝する、そう言いたくなるほどに…。

再び立ち上がる

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それでもリヴァプールは胸を張っていいはずだ。55年前のセルティック以来となるチャンピオンズリーグを含む4冠の挑戦は、最終的には実らなかったが感動的な冒険だった。そして、また新たな戦いが始まろうとしている。“スーパーサブ”として活躍してきたFWディヴォック・オリギは今季いっぱいで退団する。サラー、マネ、フィルミーノも契約が残り1年となり去就が騒がれる。そして、そんな彼らを獲得してきたマイケル・エドワーズ(スポーツダイレクター)もクラブを離れる。

そう考えると、一時代の終焉の始まりにも感じるが、そんなことはないはずだ。4年前のファイナルで涙を呑んだ彼らは、翌年には見事に欧州の頂に立ち、2年後には30シーズンぶりにリーグ制覇を達成した。だから彼らは再び立ち上がる。

そう信じるからこそ、サポーターは決勝の試合後、涙する選手たちに『You'll Never Walk Alone』の大合唱を贈ったのだ…。

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