オランダのPSVは今夏の移籍市場で、日本代表DF板倉滉の獲得に動くも、最終的に見送る決断を下した。同クラブ制作のドキュメンタリー『Ever Change a Winning Team』では、その舞台裏が明かされている。
レギュラーのフランス人DFオリヴィエ・ボスカリがブライトンへと去ったPSVは、今夏に新たなセンターバックを模索。昨年から関心が伝えられていたボルシア・メンヒェングラットバッハの板倉に動くと見られていたが、日本代表DFは結局PSVのライバルクラブ、アヤックスへの移籍が決まった。
一方で、PSVはバレンシアから20歳のU-21スペイン代表DFヤレック・ガシオロヴスキを獲得。そして、ドキュメンタリーの中では、クラブがアヤックスやフェイエノールトも本腰を入れていた板倉の獲得レースから、自ら撤退する経緯も収められている。チーフスカウトのトーマス・シャリンフ氏は、カメラの前でボスカリの後釜探しを次のように振り返っている。
「ボスカリの契約が満了することが分かっていたので、早い段階から動き始めていたんだ。板倉とガシオロヴスキがトップ候補だった。我々は複数のカテゴリーに基づいて、選手の特長を最もよく表す映像を作成している。その映像をピーター(ボス監督)やコーチ陣に渡し、全員が意見を出すという流れだ。それを集約し、最終的に最も良い選択を下さなければならない」
当時のクラブ内部で行われた協議の場面も映し出されており、アーニー・スチュワートTD(テクニカルディレクター)は「資産価値という点で見れば、ガシオロヴスキの方が単純に魅力的だと思う」と経済的な側面の重要性を強調。「板倉に決めるのは非常に難しい…なぜなら、彼に支払う移籍金のうち、○○万ユーロ(金額は伏せられている)をほぼ回収できないことになるからだ」とし、こう続けている。
「決断の基準はそこにある。ある選手にいくら支払うのか、残存価値がどれほど見込めるのか。もちろん板倉にも特定の市場価値はあるが、それでは移籍金を正当化できない。残りのリセールバリューも同じだ。非常に難しい判断だが、我々は将来的に価値を生み出せる有望な選手を獲得する必要がある」
クラブのマルセル・ブランズ会長は、ドキュメンタリー内で「我々は板倉を本当に素晴らしい選手だと評価していた」と語りつつ、「ただ、チームとして上手くいかない時期はいつでもあり得る。そのときに重要なのは、ピッチ上で発揮できる“価値”だろう」とも言及している。
ただ、板倉の獲得を見送る決断を後押ししたのは、フェイエノールトもガシオロヴスキに関心を示していたことも大きいかもしれない。ブランズ会長は「このままでは彼をフェイエノールトに持っていかれてしまう。それは避けたいね」と語り、その言葉にスチュワートTDらがうなずく様子も映し出されている。




