■今シリーズ最高の強化試合
3日に行われたU-24代表との試合も含めて、今回の5試合の中で最高のテストと強化の場になると見られるセルビア戦。森保一監督はベースは3-0と勝利したU-24代表との試合で先発したメンバー、そこに2次予選のタジキスタン代表戦での評価を加えてセルビア戦のスタメンを決めるプランを明かした。
「FIFAランクでも我々28位でセルビアが25位ということで、実際には25位以上の力を持っていると思います」
元名古屋グランパスのドラガン・ストイコビッチ監督が率いるセルビアについてそう語った森保監督。吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航がオーバーエイジ(OA)で、さらに五輪世代ながらA代表の主力を担ってきた冨安健洋や堂安律も東京五輪に向けたU-24代表に参加している。
さらに5月28日のミャンマー代表戦で5得点を記録するなど存在感を見せていた大迫勇也が、来シーズンや最終予選に向けた怪我のリスクを考えて離脱が決まった。そうした中でチームの底上げをして最終予選に向かう意味でもセルビア、さらに2次予選ラストとなるギルギス戦で慣れない組み合わせもテストしておきたい。
■セルビアは可変システムを採用
(C)Getty images当初の来日メンバーに入っていたFWアレクサンダル・ミトロヴィッチ(フルアム)などが辞退したが、強さと速さを兼ね備え、左右の足から強力なシュートを放てるデヤン・ヨベリッチ(フランクフルト)がおり、4-1-4-1が予想される中盤は攻守のバランス役であるアンカーのネマニャ・グデリ(セビージャ)を軸に、流れに応じて立ち位置を変えてくるなど、持ち前の肉体的な強さに現在の欧州サッカーのトレンドを取り入れている。
中盤では190cmの長身でボール捌きのうまいマルコ・グルイッチ(リヴァプール)も警戒するべき選手。リヴァプールからの同僚では仲が良い一人という南野拓実は「非常に身体が大きくて、それでいて技術も高くて、中盤で上手くボールもさばけるし、こっちとしては非常に厄介な選手」と語る。
7日に行われたジャマイカ代表戦では4バックを採用したが、攻撃時にはグデリが頻繁にセンターバックの間に落ちて組み立て、後半からは3バックに変更した。そもそも3月のシリーズでは3バックを使っており、日本戦でどちらを使ってくるかは分からない。いずれにしても川島永嗣の同僚であるステファン・ミトロヴィッチ(ストラスブール)がディフェンスリーダーを担うバックラインはボールを動かしながらのポジショニングが巧妙だ。
■南野&鎌田の“Wトップ下”は通用するか
(C)GOALセルビアリーグで18得点をあげた浅野拓磨の1トップを、大柄な選手が揃うセルビアのディフェンスに試す価値は小さくない。加えて古橋亨梧も裏に抜けるスピードがある。おそらくタジキスタン戦の出場時間がより短い浅野がスタメンになるが、古橋にもチャンスはあるか。追加招集のオナイウ阿道も抜ける動きとポストプレーの両面で働きが期待できる選手で、この試合でチャンスを得られるか注目される。
ここまで目立つのは鎌田大地と南野拓実の“Wトップ下”とも呼べる関係で、基本的には南野が左右どちらかのサイドに入り、もう一人を縦に仕掛けられる伊東純也や原口元気が担うことで、非対称な関係を作って攻撃のバリエーションを加える。左右のサイドバックは同サイドのアタッカーがどういうタイプかで攻撃参加やサポートの仕方も変わってくる。
もっとも南野も鎌田との近い距離感でインサイドにポジションを取ることもあれば、大外に張る形でインサイドのスペースを作ったり、タイミングを見てゴール方向に飛び出す形も見せており、サイドバックやボランチを絡めた攻撃は相手にとって的を絞りにくくなってきているようだ。後ろからのビルドアップもボールを持った選手ができるだけ前に持ち上がり、相手のプレスを引きつけてから周りの選手に出すなど、さらなる効果を生むための意識が見られる。
センターバックに関しては吉田麻也、冨安健洋、板倉滉の3人がU-24代表の方に参加している。U-24代表との試合では植田直通と谷口彰悟が中央で組み、タジキスタン戦は中谷進之介と昌子源だったが、植田と谷口で行くのか、それとも入れ替わりがあるのかは注目ポイントの1つだ。
タジキスタン戦は1失点につながった1本しかシュートを打たれておらず、2年ぶりの代表選出となった昌子も初先発だった中谷も悪いパフォーマンスではなかった。ただ、序列を覆すにはアピール不足なところもあり、そのまま植田と谷口で行く可能性が高い。もっとも先発予想が難しいのはGKだ。
これまで2次予選などでは権田修一がファーストチョイスになることが多かったが、ベルギーで経験を積んだシュミット・ダニエル、フランスのストラスブールで多くの試合に出場した川島永嗣も状態は良さそうだ。中村航輔も含めて良い競争をしている。経験値では川島だが、相手のセットプレーの高さなどを考えるとシュミットを起用するのが面白いかもしれない。
取材・文=河治良幸
