リーグ戦で顕著な活躍をした選手、チームを参加各メディアが毎月選出する「DAZN Jリーグ推進委員会」の「月間表彰」。「月間べストヤングプレーヤー」を担当するGoalが選ぶ10月の若武者は名古屋グランパスDF成瀬竣平だ。
マッシモ・フィッカデンティ監督に抜擢されたアカデミー出身の19歳は、今季開幕スタメンを飾って以降コンスタントに出場を重ねている。監督との出会いと、試合に出ることによって強化された守備面での成長。先を行く名古屋アカデミーの同期・菅原由勢を意識しつつも、名古屋で結果を求め続けている。(聞き手・文=川端暁彦)
■試合によっての浮き沈みという課題
——改めて最近のプレー面の変化についてどのように分析していますか。
守備の理解度もそうですし、攻撃の部分でもシーズン初めよりどんどん質を上げられていると思います。ただ、試合によっての浮き沈みが激しいので、どの試合に出ても同じクオリティを求めてもっとやっていかないとなあというのはあります。
――浮き沈みがあった中で「良かったな」と思えた試合はありますか?
先月なら鹿島戦ですかね(10月31日第25節・2-0)。縦パスの部分と、突進していけるところも自分の特長だと思っているので。何本かだけですけど、縦パスが入れられたりできたのかな、とは思います。
――成瀬選手はプロ入りまではMFをしていたこともあって、先が「見えている」ところは特長ですよね。
攻撃では次のプレー、自分がパスを出した先で受けた選手がどうなるかを特に意識しています。手前からじゃなく、まず奥から(パスを)つけるところもそうですし、出した後に3人目として関わっていけるようなところも意識しています。
あとは、その付けた先で、自分がもう一回関わってクロスに行く、ゴール前に顔を出していくというプレーはもっともっと増やしていかなきゃいけないと感じています。まだ今年はアシストもできていないので、もっと直接的な関わり方ができればとも思います。
――一方で、やっぱりサイドバックはまず守備からという考えでチームもやっているように見えます。
守備については監督が厳しく言ってくれるので(笑)。まずは失点をしないというところを徹底して、そこから逆算して攻撃にも繋げていくという考え方をしています。自分のところでは絶対にやられたくないですし、逆に自分のところでの良い守備から攻撃に繋げられれば、そこがチームとして狙っているところだと思うので、もっとそういったシーンを増やしていきたいですね。
——監督は守備に厳しい?
もうたくさん言ってくれます。1対1でも裏への対応でも細かく指摘してくれるので、そのおかげで(守備が)上手くなったなという感触も確かにあります。
——1対1のところは武器でもあると思います。Jリーグにも強力なサイドアタッカーはたくさんいますが、そうそう簡単にはやられていない。
そこは絶対に負けたくないという気持ちでやっていますし、向上もしていると思います。そこで絶対勝てないなとなったことはないですね。
――では、続いて動画を観てもらって具体的なプレーについても聞かせてください。第22節・札幌戦(3-0)で地味なシーンではあるんですけれど、逆サイドから入ってくるクロスボールへの対応。サイドバックにコンバートされた選手が軒並み「難しい」と言うようなシーンだと思います。
本当にその通りで、こういうプレーは難しいです。シーズンの初めのころはやっぱりクロス対応だったり、自分の裏に抜けてくるボールだったり、すごく苦労した部分でした。クロスに対して、自分のところから失点してしまうシーンもありました。別に今が完璧とは言わないですけれど、シーズン初めに比べると良くなったと思います。
――しかもこのシーンは、体の強いアンデルソン・ロペス選手が相手でした。
自分より大きい相手と競るときは特にそうですが、基本的にまず相手に体を当てることを意識しています。先に跳ばれてしまうと、どうしても上からかぶさるような形に持って行かれるので。そこは先に跳んで体を当てて、相手に自由を与えないというのが基本的な対応ですね。
――守備は全般的に格段と上手くなっていますよね。鹿島戦でのサイドでの粘り強い対応も印象的でした。
自分が一番嫌なのが、一発でかわされることなんです。自分から動き過ぎてしまって相手がその逆を取ってかわされることがある。相手の動きを見てついていく、相手が隙を見せたらしっかり寄せて取りに行く、この二つは意識しています。
――前へ奪いに行くときとポジションを守るときの判断も向上しているように見えます。
それは同じサイドのセンターバックである中谷(進之介)選手から、自分が(ボールへ)行く時と行かない時の判断について練習から言ってもらえるのが大きいですね。このシーンは行かなきゃいけない、このシーンは行っちゃだめだったというのを自分の中で毎試合整理しながらやっています。
試合を重ねると、まったく同じではないですけれど、似たようなシーンが出てくるので。自分が気になったシーンとか、周りの選手から指摘を受けた場面は後から映像で確認したりすることはよくあります。
■MFのポジションへの未練は…
🄫J.LEAGUE――名古屋はポジション争いも厳しいですよね。
今年初めから何試合か出させてもらえて。そこから一回パタッと出られなくなった時期もありました。毎試合毎試合気を抜けないというのを再認識しましたし、本当に一試合一試合が自分としての正念場というつもりでやらないといけない。一回のミスが命取り。名古屋には自分よりもうまかったり、怖さがあったり、フィジカル的にも上の選手がいます。そういう選手たちに練習からしっかり食らいついてプレーを盗んだりといったことの繰り返しで……。まあ、頑張っています(笑)。
――もうMFのポジションに未練はない?
まったくないです。
――プロでこのポジションをやるイメージはありましたか?
初めてサイドバックをやったのが、高校2年生で(トップチームの)沖縄キャンプへ帯同させてもらったときでした。それでSBに多少の手応えを感じた一方で、同時に自分がサイドハーフで勝負していくのは難しいというのも率直に感じてしまって……。
やっぱり名古屋のサイドハーフの選手は自分の特長を持っている選手ばかり。そこに自分が割って入れるかと考えると難しいと感じましたね。でも、こんなにSBとして試合に出られるようになっていることを、サイドハーフをやっていたころの自分に言ったら多分驚くと思います。でも、SBとして今はすごく充実してますし、もっともっと試合も出て頑張っていけたらな、と思います。
――サイドバックとして参考にする選手はいますか?
自分が観ていて「すごいな」と思うのは、海外にもたくさんいるんですけれど、日本では西大伍選手(ヴィッセル神戸)ですね。いつも落ち着いていて、パスも出せて、観ていてすごく勉強になります。
――将来的には海外でプレーしたいというのは?
いずれは海外も視野には入れています。でもまずはしっかりJリーグでスタメンを勝ち取って試合に出続けられるようにならなければ、絶対に通用もしないと思うので。まずはしっかり名古屋で頑張りたいなと思います。
■育成年代の同期・菅原由勢への思い
🄫J.LEAGUE――もう何度も聞かれていると思うけど、名古屋の育成年代からずっと一緒にやってきた日本代表DF菅原由勢(AZ)の存在は刺激になりますか?
そうですね。今はポジションも同じになったので(笑)。タイプは違いますけれど、やっぱり自分もA代表に入って、そこにしっかり追いついていけるようにやっていかなきゃいけないと常に思っています。自分だけじゃなくて中学・高校と同期だった選手たちはみんなそうだと思っているんですが、やっぱり「由勢で行けるんだったら自分でも行ける」、と。絶対にそう思ってるはずです(笑)。
――「そんなには負けてねえだろう」と?(笑)
はい(笑)。そう思っているとので、自分も「由勢には勝てない」じゃなくて、絶対に負けないと思ってやっていきたいなと思います。
――菅原由勢は年代別日本代表でもずっとレギュラーでプレーしていて、U-17、U-20のW杯にも出場して、同学年で先を行っていた印象もあります。
由勢は自分たちの年代では常にトップを走ってきた選手なので、本当にそういったところはすごく尊敬しています。でも、やっぱり負けたくないっていう気持ちが一番強いので。自分もいずれ同じ舞台に立てるように頑張りたいという気持ちが一番ですね。
――あとは今季の残りの試合に向けてどういう爪痕を残したいですか?
まずは残りの試合、とにかく失点をしない、なるべく少なくするところはあらためて追求したいです。個人としてはやっぱりアシストだったり、得点は狙っていきたいですし。アシストは残りの試合で絶対一つ、二つ取りたいなと思います。
――アシストはクロスからの形とかイメージできていると思いますが、戦術的にも右サイドバックがシュートを狙うのは場面自体がなかなか来ない印象もあります。
そこは、こぼれ球なり……。
――ちょっとおいしいのを一発?
そうですね、はい。逃さないように狙っていきたいです。
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