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中村憲剛の視点。再開後のリーグ戦は「駆け引きが増える。選手は大変だが、サッカーの面白さが増す」

 リーグ戦再開にあたっては、交代人数枠の変更をはじめ、高温多湿となる夏直前のリスタート、飲水タイム導入、過密スケジュール、リモートマッチでの開催など、特殊な条件下でシーズンを進めていくことになる。では、これらはどんな影響をゲームに及ぼすのだろうか? 川崎フロンターレの中村憲剛に話を聞いた。(取材・文=林遼平)

■回復の過程で高まるサッカーの熱

 中村自身は、昨年11月2日の明治安田生命J1リーグ第30節・サンフレッチェ広島戦で負傷。左ひざ前十字靭帯損傷、左ひざ外側半月板損傷と診断され、ここまでリハビリを続けてきた。残念ながら、この再開には間に合わない。

 現在はランニングや筋トレのみのメニューを超えて、ボールに触るトレーニングができるまでに回復し、今週は練習後にパス回しを行えるほどになってきている。復帰まではまだかかるが、一歩一歩ピッチに近づいている。

 J1に先駆けて先週再開・開幕したJ2・J3リーグ。スコアレスドローで終わる試合もあれば、驚きの大逆転劇が起きるなど、いつもと変わらないJリーグの風景が戻ってきた印象を受ける。無類のサッカー好きで有名な中村も、もちろんこれら試合を見ていたという。プロ18年目を迎えた中村にとって、様々な変更点があったこの再開戦はどう映ったか?

■交代枠と飲水タイムの影響

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「J2やJ3の試合をいろいろ見ていましたが、やはり交代が3人から5人になったことが大きいですね」と、まず交代枠に言及する。

 過密日程を考慮し、競技規則を定める国際サッカー評議会(IFAB)は交代枠の一時的な規則改正を認めた。Jリーグもこれを適用し、交代人数は3人から5人に、各チームの交代回数はハーフタイムを除いて3回までとなった。

「かなり戦い方に変化が起きそうだなと思いました。単純に選手交代の枠が2つ増えているので、いろいろな手を打てるようになった。そういう意味ではこれまで以上に監督の采配が大きな意味を持ってくるのではないかと思います。また、選手層が厚いチームが絶対的に有利かと言うと、そうとも言い切れない局面がどのクラブにも出てきそうです。

 選手層がそこまで厚くなくても交代枠が『5』もあるので、選手のコンディションをしっかり把握して、うまくローテーションしながらチームを回せる監督も出てくるでしょう。だから結果によるとは思いますが、一概に『戦力が多いほうが良い』という見方がシーズンが進んでいく中で、どういう論調に変わっていくのか気になります」

 再開したJ2リーグでは、5人交代をうまく活用して勝利を手にしたケースがある。徳島ヴォルティスを相手に3点差から逆転勝利を飾った愛媛FCだ。愛媛は0-3で迎えたハーフタイムに、一気に3枚の選手を変更。そこから流れを引き寄せて逆転への道筋を作っていった。

「これまでハーフタイムに3人交代というのは、なかなか打てる手ではなかった。3人交代した後は、もう交代で流れを変えられないですから。そう考えると、あの試合はルールをうまく使って勝ちに繋げた試合だなと感じました」と川井健太監督の大胆な采配に拍手を送る。

 5人という人数はスタメンのフィールドプレーヤーのうち「半分を変えられるということ」だ。極端な手も切りやすくなる。例えば「守備的な選手をより多く投入することで守り切ったり、 攻撃的な選手を多く入れて嵩(かさ)にかかって攻め込めたり、運動量豊富な選手を投入して主導権を握り返したり、そんなことが起こるかもしれない。考えると楽しみ」と中村は言う。

 流れを変えられる手段。それは交代枠だけに限らない。前後半に1度ずつ用意される飲水タイムも試合を左右するポイントの一つになる。

「全試合で飲水タイムが入ってくるのは大きいと思います。ハーフタイムの前後に2回もまとまって話せる機会が作られるので、そこで戦術的な微調整ができたりする」。そしてその微調整は、自分たち、相手、双方に影響を及ぼすことになる。「その試合に向けて準備してきたものをそのまま出せていたとしても、流れを変えられてしまう可能性がある」からだ。

■一つのやり方だけでは勝てなくなる

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「ハーフタイムを合わせて3回時間が止まるのと5人交代ができることは、いろいろ考えることが増えそうですね」と中村。試合の中で流れを変えるタイミングが増えることは、 言ってしまえば一つのやり方だけでは勝てなくなることを意味する。それでいて夏直前でのリスタート。総力戦になることは間違いない。

「夏場の時期に始まることに加え、試合は2、3日ごとにくる。監督や選手だけでなく、 コーチ始めスタッフの力も含めた総合力が今まで以上に問われてくると思います。戦い方を含めていろいろな手札をチームに用意しておかないといけない。相手が終盤にディフェンスを5枚にしてくるかもしれないし、 フレッシュな選手を前に3人並べてくるかもしれない。相手が誰を入れてくるかを読んで、 自チームの誰を入れるか、入れてどう自分たちの流れに持って行くかなど、トータルマネジメントしないといけなくなるのかなと思っています」

これまで以上に、ピッチでは戦術を含めた互いの駆け引きがより顕著に見られることになるだろう。もしかしたら、試合の中でカメレオンのように戦い方を変化させてくるチー ムも出てくるかもしれない。そういった点ではプレーする側の選手にとっては大変だが、 サッカーが好きな人にとっては新たなサッカーの楽しみ方が増えるのではと、中村は説いている。

「今年に関して言えば、今までとはまた違ったサッカーの新たな楽しみ方が増えると思います。試合のターニングポイントがいくつもあって、流れを引き寄せるために交代策を打ったのを見て、今度は対戦相手の監督がそれを引き戻させるために交代策を打つ。そんな場面は今までもよく見ましたが、それを今までよりも数回繰り返せる可能性が出てきました。そういう駆け引きは、将棋みたいで面白そうですよね(笑)。本当にサッカー好きにはたまらないんじゃないかなと思います。

 周到に準備してきたチームが準備した通りにしっかり自分たちのペースを掴めたとしても、先述したように給水タイムや交代でそんなに長続きしないかもしれないし、これまでもよく起きていた『守備のリズムがいいから交代なしで動かない』というのも、相手側にも交代枠が増えたことで通用しなくなるかもしれない。そういう意味では色々なことが起こり得るので、サッカーを見る楽しさが増えると思っています」

 以前と全く同じ姿ではないJリーグ。新型コロナウイルスによって様々なものが変化を余儀なくされている。しかし、中村が言うように、状況を受け入れながら新たな視点でサッカーを見ること、プレーすることも、“withコロナ”の時代の新たな面白さとなるのではないだろうか。

 もちろん中村はプレーヤーだ。ケガが徐々に回復し、リーグ戦が再開することで、サッカーへの熱、勝負へのこだわりもより高まってきている。チームに中村憲剛というJリーグ屈指の戦術家がいることは大きい。まずは今夜19時にキックオフの時を迎える、第2節・鹿島アントラーズ戦。川崎Fはいかに”変化”に向き合うか。鬼木達監督の采配を含め、その戦いに期待したい。

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