■川崎Fのビルドアップを無力化
これまで1度も彼らの前で勝利に酔いしれたことがなかった。
J2時代含め、リーグ戦で戦うこと計23回。前回対戦となった8月の札幌ドームの試合も、圧倒的な攻撃力の前に1-6の大敗を喫した。北海道コンサドーレ札幌にとって、過去一度もリーグ戦で勝てていない川崎フロンターレはまさに天敵と言っていい。
だからこそ、この試合にかける思いは、いつものそれとは違った。荒野拓馬は言う。
「ホームで敗れ、アウェイの試合はみんなで悔しさを晴らそうと話していた。個人的にも前回ホームであれだけの大敗をして悔しかったので、絶対にやり返してやろうという気持ちで試合に入りました」
首位を独走する川崎Fに対して前からプレスをかけるのか、それとも引いて守備を固めるのか。
札幌の答えは明白だった。今季、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督率いる札幌が志向するオールコートマンツーマンディフェンスで対抗。川崎Fの陣形に合わせて選手を配置し、マンツーマン気味に前線からプレッシャーをかけてビルドアップの無力化を狙った。
また、チームの狙いを完遂させるために「川崎Fは(前節の)ガンバ大阪と比べても少し質が違うチーム。それもあって今日の先発にはモビリティのある選手たちを起用した」と、前線に荒野、チャナティップ、駒井善成を配置。ストライカータイプではない選手たちを並べることで、何度も前線からプレッシャーに行けるように策を講じた。
そして、この戦術は物の見事に効果を発揮する。川崎Fの足の重さや準備不足があったのは確かだが、前線からの迫力ある守備は相手のミスを誘い、ボールを奪ってはショートカウンターでゴールに迫る。ルーカス・フェルナンデスが決定機を決めていれば、前半で試合が決まっていたかもしれない。それほどに札幌は川崎Fを内容で上回っていた。
■札幌があえて取ったリスク
(C)J.LEAGUE後半も札幌に隙はなかった。相手が選手交代を駆使して流れを変えようとしてきたが、ペトロヴィッチ監督は得点を奪うためにアンデルソン・ロペスとドウグラス・オリヴェイラを投入。投入直後にゴールが生まれたのは指揮官の言うように「出来過ぎだった」かもしれないが、相手に合わせてやり方を変えるのではなく、自分たちのプランの上で得点を奪うための強気の采配をとったことが結果を引き寄せた。
リーグを独走する相手に対し、結果だけでなく内容でも完勝した札幌。試合後、指揮官はオールコートマンツーマンをやり切った選手たちのパフォーマンスに称賛の言葉を送った。
「前からプレッシャーをかけて、ボールをアグレッシブに奪いにいく。そして奪ったところで逆に自分たちがボールを支配する。個の能力とコンビネーションに優れた川崎Fに対し、守備の時に時として後ろを同数で守るようなリスキーな戦いはクレイジーな部分があるかもしれない。ただ、我々はよりアグレッシブにボールを前で奪い、ボールを奪ってから相手のゴールに迫っていく。そういう戦い方を選手たちは非常に規律を持ってやってくれた。運動量、球際、そして規律。本当に選手たちは今日のゲームで素晴らしい試合を見せてくれた。試合を通してみても、我々が今日は相手を上回り、勝利に値するゲームができたと思います」
90分を通してマンツーマンの守備を続けるのは、肉体的にも精神的にも難しいところがある。運動量、球際、1対1の強さ、予測、集中力。「川崎Fに勝つ」という強い意志を持って全てを最後まで発揮できた札幌が、今日の勝者にふさわしかった。
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