番組には、お馴染みとなっているJリーグの原博実副理事長、Jリーグウォッチャーの平畠啓史さんに加え、FIFA・AFC・JFA審判インストラクターの深野悦子さんが登場。桑原学さんMCのもと、SNSで反応が多かったシーンをピックアップして議論を行った。
■松田は「ボールにプレーできる状態ではない」
話題になったのは、仙台vsC大阪の後半半ばに1-1のイーブンな状況で訪れた仙台のチャンスシーンだ。ボックス右に侵攻した西村は鋭い切り返しでDF松田陸のチェックを振り切ろうとするが、スライディングをかわされた松田は身体を投げ出すようにしてボールをカバー。もつれこんで倒れた西村がシュートを放つことはできず、近くにいたDF瀬古歩夢がボールをクリアしたが、笛が鳴ってPKの判定となった。
平畠さんは、SNSを通じて『身体を入れているDFが背中から突っ込まれたので、仙台側のファウルに見えます』という意見や、『進路妨害しているように見えます。PKで妥当かな』という意見が集まったことを紹介。自身の見解として「『あれPKなのかなぁ、PK取るのか…』というのが僕の率直な意見」と述べたが、賛否が分かれているようだ。
また、原副理事長も「PKではなくていいと思う」とまずは簡潔に主張し、次のように自身の考えを口にする。
「(接触の結果ではなく)西村の方がバランスが崩れて倒れてしまった感じに見える。仮に倒れずにボールに足を振りにいって、その時に松田の頭が危ないから『うわ、蹴れない』となれば、それはファウルかも分からない。けど、もう倒れていて蹴られる状況ではないように見えてしまう」
一方、深野さんは2人の意見に対して「正直、意外だなと思った」と反応。「PKで間違いないと思いました」と主審を支持し、その理由をこう説明した。
「2番の選手(松田陸)は一度スライディングにいって、その後なんとしても止めたいということで、頭とか身体を出して止めようとしている。結局、それが仙台15番の選手(西村拓真)を身体でトリップしたというふうに私には見えました」
さらに、原副理事長からの「(接触によって倒れたのではなく)西村が倒れるのも早いような気がする」という指摘に対しては、ボールにプレーできるかが重要だと強調する。
「結局、松田選手は寝転がっていてある意味で死に体というか、ボールにプレーできる状態ではない。(DFが身体を入れたと解釈できるのではないかとの意見については)もしスタンディングポジションで同じプレーをしていればボールを保持していたということになるので、多分(PKは)違うと思います。ただ、あの状態はボールにプレーすることができない状態で、とにかく体を投げ出して止めたいというように見えたので、主審の判定は納得できる」
■間接FKや警告ではない
(C)J.LEAGUE最終的に深野さんは、接触のあるファウルがボックス内であったためにPKで妥当と結論。SNSでは『ボールにプレーできないのに進路妨害したとするなら、PKではなく間接FKです。不当なチャージであればSPAかDOGSOでカードが出るはず』という疑問も噴出していたが、それもひとつずつ紐解いていく。
まず、間接FKについてはその条件を口にし、“接触”があったことを根拠に否定している。
「間接FKは、(ルールブックに)書いてあるのは『身体の接触を伴わずに相手競技者の進行を妨げる』となっている。この場合は接触をしているので間接FKにはならない。(ボックス内ではPKにシフトする)直接FKの方の反則になる」
そして、カードが出されなかった判断に関しては「カードが不要というのは、DOGSOではなかったので、SPAで1段落ちてノーカード」と解説した。
カードの基準としては、DOGSO(決定的な得点の機会の阻止=退場の基準)、SPA(相手の大きなチャンスとなる攻撃の阻止=警告の基準)が用いられる。DOGSOは4要件(「プレーの方向」、「反則とゴールとの距離」、「守備側競技者の位置と数」、「ボールをキープできる、あるいはコントロールできる可能性」)を満たす必要があるため、深野さんは退場ではなくSPAに該当し、さらにPKによりブレイクダウンしてノーカードが妥当だと判断する。
具体的には、瀬古の存在が関係していたようだ。
「(西村は)まだシュートモーションにきちんと入っていなかったと思いますし、真隣に瀬古選手がいたので打てる状況でもなかった。最終的に瀬古選手がボールを突っついている。DOGSOに近いかもしれないですが、完全な100パーセントのDOGSOとも言い切れないというところだと、やっぱりSPAでいいと思います」
今回のジャッジリプレイでは、このほかにもガンバ大阪vs名古屋グランパスの87分の得点、鹿島アントラーズvs湘南ベルマーレの28分にハンドが疑われたシーンについて議論された。さらに、新コーナーの「REFEREE'S SUGGESTION」では深野さんが自らピックアップした判定が扱われている。
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