2021-11-24-riku-handa-yamagaya©J.LEAGUE/Getty Images

19歳の現代型サイドバック半田陸、プロ2年目の手応え。「山形への恩返し」を胸に世界を目指す

ピーター・クラモフスキー監督就任後12試合無敗を続け、一時は5位まで順位を上げたモンテディオ山形。このチームで19歳ながらここまで35試合に出場する選手がいる。山形生まれの山形育ちの半田陸。年代別日本代表にも選出され、サポーターから「山形の至宝」と期待を寄せられるDFだ。DAZNとサッカーメディアで構成する「DAZN Jリーグ推進委員会」の月間表彰で、GOALは10月の「ベストヤングプレーヤー」に半田を選出した。(インタビュー日:11月16日 聞き手:吉村美千代/GOAL編集部)

■試合に出ることでプレーの幅が広がる

――ユース所属時にプロ契約となり今季2年目。開幕当初はサブでしたが、3月28日の第5節からほぼ先発出場しています。今季の手応えをまず教えてください。

 自分が出始めてから勝てない時期もありました。自分自身の調子も全然良くなかったのですが、試合に出続ける中で、だんだんと自信を持ってプレーできるようになってきました。監督が代わったこともあり、プレーの幅もすごく広がったんじゃないかなと思います(※)。

 ※4月21日に石丸清隆監督が解任され、同月30日ピーター・クラモフスキー監督の就任が発表。5月13日の第14節・愛媛戦から指揮を執った。

――今回は10月の月間表彰となります。10月の山形は4勝1敗で半田選手は全試合フル出場。第35節のザスパクサツ群馬戦(1○0)では加藤大樹選手の決勝点をクロスでアシストしました。

 あの時は、後ろから組み立てていたんですが「前に収まりそうだな」と思ってその時にはもう前にスプリントしていました。マルティノス選手がいいタイミングで僕を使ってくれて、中に何人か山形の青のユニフォームの選手がいたので、「誰かに合えば」という感じで中に入れました。

――半ば倒れながら上げたクロスでした。今季は右サイドで、サイドハーフの中原輝選手との関係性がすごく際立っていると思います。普段から話しているのですか?

 「距離感は近くしてやろう」と練習や紅白戦とかでもずっと言っています。そこに近いボランチやセンターバックの選手とも話をして、僕と輝くんともう一人二人で「どうすれば右サイドを崩せるのか」というのを工夫してやっています。監督や(川井健太)コーチからもいろいろなアイデアをもらっていますし、その時その時で一番相手が嫌なことをしようとはしていますね。

 基本は内側に入りますが、そのままの立ち位置だったら相手も崩れないので、そこからうまくローテーションしながらやれているのかなと思います。

――ローテーションしながら崩していく、その原則は決まっているのですか?

 それは僕も中原選手もそうですが、それぞれの判断で臨機応変にやっていますね。

――10月はU-22代表の活動もありました(AFC U-23アジアカップ予選/Jヴィレッジ)。23日のJ2・群馬戦終了後に代表に合流し、26日のカンボジア戦は出場されていませんが、28日の香港戦はフル出場。戻って31日が栃木戦、11月3日が東京V戦、7日が岡山戦と厳しい日程でした。

 去年、チームは5連戦もありましたが、僕は全然試合に絡めていなかったので、そういう経験をしてきませんでした。今回、初めて連戦を経験しましたが、やはり最後のほうになってくると、後半に足が止まってしまうなというのはありました。でも、試合が終わって、またすぐ試合が来るのですごく楽しかったですね。

――その中で、東京V戦(1●2)、岡山戦(0●1)と連敗を喫してしまいます。その理由をどう捉えていますか?

 先に点を取られてしまうと苦しい展開になってしまいます。相手も僕らの研究をしてきていて、サイドハーフの中原選手のところにほぼマンツーマンのような感じですごくプレッシャーをかけてきて、なかなかそこで時間が作れませんでした。こういったシーンが最近は増えてきているので、それをどうにかして上回らなければいけないと思います。

――続く大宮戦は2-2のドロー。試合終了近く、樺山諒乃介選手が反転しながらすごいゴールを決めて追いつき、連敗を止めました。このゴールもアシストしています。

 あれは、ヴィニシウス・アラウージョ選手がめちゃくちゃ優しいパスをくれて、中を見る時間というか余裕がすごくあったんです。中を見たら樺山選手がいました。最初、GKとDFの間を通そうとしたんですけど、無理そうだなと思って、DFの手前に(マイナス気味に)入れたらカバがうまく流し込んでくれました。

――群馬戦のアシストは無我夢中だったけれど、大宮戦は見えていた?

 中を見る余裕がありました。実は試合前に健太さん(川井健太ヘッドコーチ)からクロスのことを言われていたんです。「ドタバタして焦らないで、ちょっとカッコつけて、シャープに」と、そんな話をちょうどしてもらった時だったので、落ち着いてシャープにできたのかなと思います。

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■プロに教えてもらってプロを目指した

――ここで少し半田選手の原点を教えてください。上山カメレオンFCから山形ジュニアユース村山を経て山形ユース。出身は上山市なのですか?

 はい。

――サッカーを始めたきっかけは?

 いとこがサッカーをしていました。そのいとこや親と一緒に家の前でボールを蹴って遊んでいてそれが楽しくて。小1から入りました。

――上山カメレオンFCの頃に影響を受けた選手、指導者はいますか?

 その頃は秋葉勝選手(現・山形ジュニアユース村山U-15コーチ、上山市出身)がトップチームにいて、オフシーズンとかたまに練習に遊びに来てくれていたんです。そのプレーを見て、「プロ選手ってすごいな、かっこいいな」と思って僕もプロを目指すようになりました。

――何歳からプロを目指されたんですか?

 プロ選手を目指したのは、たしか小5、小6ぐらいだったと思いますね。

――サッカーを始めた頃のポジションは?

 小学生の頃はいろんなところをやっていましたね。センターバックもやりましたし、サイドハーフ、真ん中、ボランチとかも、いろいろなところを。多分、みんなそうだと思いますけど、いろいろなところをやってきました。

――カメレオンFCから山形ジュニアユースを選んだきっかけは?

 僕の3つ上に髙橋成樹くん(元モンテディオ山形選手)という先輩がいて、今は(現役を)辞められたんですけど、成樹くんがカメレオンから山形のジュニアユースに合格したので、僕もと受けました。僕の代からは3人受けましたね。

――ポジションの話をさらにお伺いしたいのですが、Jリーグ推進委員会7月の企画で『蹴球メガネーズ』さんのYouTubeに登場されていて、そこで「今季はサイドバックで勝負したいとチームに伝えた」と話されていました。その理由を改めて教えていただけますか?

 それまでは、年代別代表でもずっとセンターバックをやってきて、クラブでも去年はセンターバックで出ることのほうが多かったんです。でも、僕自身将来は海外でプレーしたいので、それを考えた時にサイドバックのほうがいいなと思ったことと、サイドバックのほうが自分の特長を出せるのかなと思って言いました。

――その特長というのは?

 上下動だったり対人だったり。

――対人、強いですよね。

 でもプロに入ってからは、すごく強いというふうにまだそう思われるようなことはできていないと思います。

――逆に、この選手は怖かったみたいな相手の攻撃陣はいます?

 新潟の本間(至恩)選手や甲府の泉澤(仁)選手ですね。泉澤選手は独特のリズム感で仕掛けてくるので怖かったです。

――対人守備をしつつ、攻撃面ではサイドハーフとの崩しやボランチの位置に入ります。チームスタイルがあって、その中でご自身の特長をどう伸ばしていきたいですか?

 ボールを縦に速く攻めるのが一番ですし、それが無理だったらサイドを変えてという中で、サイドハーフを何回追い越せるかとか、SBですけどゴール前のクロスに何回飛び込めるかというのをもっともっと高めていければなと思います。

――逆に課題は?

 課題は、ボールを扱うところがまだまだですし、先ほど言った対人ももっともっと伸ばさなきゃいけないです。状況を見て一番いいところに立ち続けて、動き続けてというところはまだまだだと思います。

2021-10-28-japan-U-22-handaKenichi Arai

■活躍することで山形の子どもたちに夢を

――海外サッカーはご覧になりますか?

 最近は、全然見られていないですね。

――子どもの頃に憧れた選手はいますか?

 憧れというかすごいなと思ったのは、ロナウジーニョ、メッシですかね。あとルーニーもすごいなと思いました。

――サイドバックという目線で海外・日本人問わず理想の選手は?

 理想の選手は、酒井宏樹選手です。酒井選手のようになりたいですし、アレクサンダー=アーノルド(リヴァプール)みたいなクロスを上げたいと思うし、ワン=ビサカ(マンチェスター・ユナイテッド)みたいな、すごく強い選手にもなりたいなと思います。

――世界で戦うという意味で、日本代表のお話も聞かせてください。U-15年代からずっと選出されていますが、代表で活動する刺激とは?

 山形ユースはプリンス東北でしか試合ができないですし、全国の選手と対戦する機会も限られていました。ですからまず、日本の素晴らしい選手たちと練習できることが僕にはとても刺激になりました。その中で、日本のチームとして海外に行って海外の選手と試合をすることは、試合中にいろいろなことを学べます。試合をした人にしか分からない相手選手の足の伸びとかも分かります。そういったことは日本代表でしか得られない経験だと思います。

――ご自身はパリ五輪世代です。目標にしていますか?

 U-20ワールドカップがなくなりました(※)。僕自身、U-17W杯でメキシコに負けて悔しい思いをしたので、それをU-20の時に晴らせればよかったですけどできませんでした。オリンピックという最高の舞台に立ってその悔しさを晴らせたらなと思います。

 ※2021年インドネシアで開催予定だったが、新型コロナウイルスにより中止。次回は2023年(同国)となる。

――海外でプレーしたいですか?

 はい、海外でチャンピオンズリーグに出られるような選手になりたいです。

――リーグは?

 ドイツやイングランドには行ってみたいと思います。

――最後に山形への思いを聞かせてください。アカデミー出身、クラブに対する思いは人一倍だと思います。

 今、トップチームにいるアカデミーの選手は僕だけです。山形県出身も選手としては僕だけで。僕が秋葉勝選手を見てそう思ったように、僕もアカデミーの子どもたちもそうですし、町クラブの小学生たちにもそういう夢を与えなければいけないと思います。山形で活躍してチームでJ1に一緒に行くこともそうですし、僕が将来海外で、ヨーロッパでプレーして、山形のサポーターの方たちに活躍した姿を見せることができれば、山形への恩返しになるのかなと思います。

■プロフィール
DF 31 半田 陸 Riku HANDA

2002 年1月1日生まれ、19歳。176cm/63kg。山形県出身。利き足:右。上山カメレオンFC→モンテディオ山形Jrユース村山→モンテディオ山形ユース→モンテディオ山形。ユース所属時の2019年に2種登録、20年プロ契約を結ぶ。対人やカバーリングの守備面、オーバーラップとインナーラップを使い攻撃を活性化する現代型サイドバック。J2リーグ戦55試合出場3得点(11月21日時点)

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