2021-04-19-tosu-nakano©Kazuki Okamoto/ONELIFE

恐るべき17歳の可能性。「J1のすごい選手たちとの1対1が、もう楽しいんです」サガン鳥栖・中野伸哉

現在、J1・3位につけるサガン鳥栖(4月18日時点)。今季9試合に先発出場を果たし、欠かせない戦力となっている17歳の選手がいる。DF中野伸哉。中学時代から鳥栖の育成組織で育ち、昨年すでにJ1デビューを果たした逸材だ。3月には、東京五輪優勝を目指すU-24日本代表にも飛び級招集され、アルゼンチン戦に交代出場している。

DAZNとサッカーメディアで構成する「DAZN Jリーグ推進委員会」の月間表彰で、Goalは3月の「月間べストヤングプレーヤー」に中野を選出。今季ここまでの手応えを聞いた。(聞き手=川端暁彦/取材日:4月9日)

■三笘対策で対面に起用

――昨年は8月1日にJ1デビューを果たしてシーズン終了まで15試合に出場。今季は開幕からフル稼働です。手応えは?

はい、あります。去年は連戦もあってキツく感じる部分もありましたが、今はちょっと感じ方も違っています。同じように連戦ですが、コンディションもよくて「去年よりちゃんとできているな」という感触があります。

――キャンプから順調だったんでしょうか。

実はキャンプの最初はちょっとケガをしていて別メニューでした。復帰したのはキャンプの残り5日くらいですね。開幕スタメンを取るためには本当に頑張らないといけないと思って、めちゃくちゃ必死に頑張りました。(開幕)1週間前ぐらいの練習試合でスタメンで起用してもらったので、そこで「いけるかな」と思って準備していました。

――プレーのレベルやクオリティについては、昨季の段階で「出してもらえればやれるぞ」という手応えもある程度はあったのでは?

ありましたね。まず継続してやれればいけると思っていました。

――4バックの左サイドバックというイメージが強かった中野選手ですが、今年は3バックの一角でプレーする機会も多いですね。

3バックといっても、最初の部分がそうなっているだけで、自分たちがボールを保持しているときは高い位置を取ることになるので、それほど大きな違和感もなくやれていると思います。

――先日の川崎フロンターレ戦(第8節、0●1)に3バックの右で出たときは驚きました。

あれは三笘(薫)選手が出てくると思って起用された形だったんです(三笘は62分から交代出場)。マンツーマンで守備を任せるという感じで。(両チームの戦術的に)1対1になる場面が多くなるから、そこに僕を置いておく形でした。(金明輝)監督からは「1対1で絶対に負けるなよ」と言われていましたね。

――1対1のドリブル対応能力にはやはり信頼があるんですね。中野伸哉を語る上ですごく重要なポイントだと思いますが、自分ではどう捉えていますか。

自分自身、スピードもありますし、縦に来る選手でも対応できると思います。アジリティもあるほうだと思うので、中にカットインされて振られる状況になっても、ついていけていると思います。

――J1でもドリブルでやられたなというシーンがない印象です。

自分でも抜かれているイメージはあまりないですね。出始めた頃は「やられるかも」と思っていましたが、やっているうちにJ1のプレースピードにも慣れてきて、自然と対応できるようになりました。

――やはりそこは強みにできていますね。

ただ、昔はそんなに1対1の守備が得意という選手ではなかったんです。ユースのときにも監督から「もっと寄せろ」と結構怒られることも多かった。ただ、そこで強く意識するようになった結果、だいぶ良くなったと思いました。

――ちょっと体を当てるとかも上手だと感じます。

相手の、ちょっとボールが出たところに体を入れたりとかは得意なので。予測も常にしています。J1はやっぱりレベルが高くて、あまり隙はないのですが、ちょっとした隙を見逃さないようにアプローチしていくところ、そしてボール奪い切るところは意識してやっています。

――あと、どうしても空中戦にさらされるシーンも増えるポジションですが、その点は?

空中戦になってくると、本当に体の大きな選手を相手にしたら負けてしまうこともありますが、普通の180cmくらいのFWだったら勝てますね。僕自身、ジャンプするタイミングはいいと思います。空中戦について苦手意識はあまりないですね。

■攻撃的サイドバックになりたい

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――そうやって強い相手とやるところも楽しんでいる。

それはあります。フロンターレとやったときも、交代で出てくる選手までみんなすごい選手ばかりで(笑)。家長(昭博)選手は本当に強くて、ボールを取りに行けない感覚がありましたし、三笘選手も時々止められるくらいだと思います(笑)。でも、J1のすごい選手たちとの1対1はもう楽しいですね、やっていると、やっぱり。

――今の鳥栖のサッカーも見ていてすごく面白い。能動的ですよね。攻守で自分たちからアクションを起こしていく。

自分たちからボールを奪いに行って、しっかり前からハメに行くというのは、監督も強調している部分です。あれだけ前から行ってくれていると、後ろの守備の選手としては予測もできるので、しっかり寄せられますし、ボールも奪いやすいですね。

――そして攻撃になったらまた違う役割になります。

僕は高い位置を取って、ボールを受けたら、(林)大地選手だったり、(小屋松)知哉選手だったりを使いながら運び出す感じですね。「運べ」というのはよく言われていますし、「クロスもどんどん上げていけ」と監督には言われています。

――昨年12月の日本クラブユース選手権では、切り込んで右足のミドルシュートという形ですごいゴールを突き刺していましたが、あれは両足のキックができるという良さが生きた形でしたね。

両足で蹴れるのは自分の武器だと思うので、流れの中でそれを生かしてもっともっとやれたらいいと思いますし、やらないといけないですね。

――今回、改めて昔の中野選手の取材記録を掘り返したんですが、中学2年生で初めて話を聞いたときにも、左右両利きの話をしていました。「特に努力したわけではなく、自然と両足で蹴れる」と。

そう、本当にそんな感じなんです。小学生くらいから蹴れていて、左右どちらのキックも違和感なくやっていました。だから右サイドでプレーするときも、視野の感覚は変わりますが、キックに関してはまったく問題ありません。

——改めてプレーで参考にしている、あるいはこうなっていきたいみたいにイメージしている選手はいますか。

リヴァプールのロバートソン選手は、すごく自分の目指しているスタイルです。まず攻撃的で、クロスもめちゃくちゃいいのを上げるんですよ。やっぱり、ああいう攻撃的サイドバックに僕はなりたいので。そこを目指してやっています。

■クラブが支える、高校との両立

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――学校との両立はどうしているんですか。

通っている高校とクラブが提携しているので、いろいろと融通を利かせてもらえています。チームの練習にもちゃんと出られていますね。そこは本当にありがたいです。学校とトップチームでの活動を両立させることもそこまで大変でもないんです。サッカーにも集中させてもらえて、本当にありがたいです。

――サガン鳥栖のアカデミーが良い選手をいっぱい出せるようになってきているのも、クラブがいろいろな仕組みや施設を作ってきてくれるからでしょうね。

クラブがいろいろ動いてくれるので助かっている部分は間違いなくあります。学校もそうですし、助けられているなと感じることは多いです。

――今はコロナ禍ですが、アカデミーの海外遠征なども熱心でした。アヤックスと提携していることも含めて、海外に関する部分は充実していますよね。

はい。外国人の選手と対峙したり、海外のことを学んだりといった機会は、日本にいるだけだと滅多にないと思うので。本当にいろいろよい経験をさせてもらったと思います。

――ユース年代から培ってきたものを出せる環境という意味でもう一つ大きいのは、金明輝さんが監督をやっているという点もありますね(金監督はトップチームの監督就任する前はU-15、U-18の監督を歴任)。

監督が思っていること、要求してくることも分かっているので、すごくやりやすいです。球際だったり走ることだったりの大切さも叩き込まれてきたので、まずそこをしっかりやれているから試合に出られているのだと思います。

――怒られることも?

僕はよく怒られています。厳しさもめっちゃある人です。

――どういう時に怒られるんですか?

ちょっと守備をゆるくいったりしたら、言われますし…。球際の部分で負けても、怒られます。当たり前にやるべきところをやらなかったとき、特に怒られますね。でも本当に監督の指導を受けたおかげで人間性もすごく向上したと思います。

――褒められるようになってきましたか?

ちょっとずつ、徐々に褒められるようになってきていると思います(笑)。もっと褒められる選手になれるように頑張りたいです。

――あとは今年の鳥栖、チームとしての結果といった部分は?

4月は山場だと思います。強豪ばかりが相手ですから。その中でアシストだったり、ゴールだったり、もっともっと僕自身チームに貢献したいです。

――今季の鳥栖は面白いですよね。やっている側も楽しいのでは?

めちゃくちゃ楽しいです(笑)。だから、頑張ります!

■DF 47 中野伸哉Shinya NAKANO(2種)
2003年8月17日佐賀県生まれ、17歳。173cm/64kg、サガン鳥栖U-15→鳥栖U-18。J1リーグ戦通算24試合出場(2021年4月18日時点)。

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