2021-07-16-Kashifu Bangunagande©Hiroto Taniyama

推進力が武器の19歳。「SBですが攻撃の中心になるぐらいのプレーをしたい」FC東京・バングーナガンデ佳史扶

「攻撃が大好き」な左利きの左サイドバック。東京都足立区出身、小学生のころから青赤育ち。FC東京U-18所属時に2種登録でJ3を中心に経験を積んできた。プロになって2年目の今季はカップ戦で出場を重ね、6 月19日の第18節・横浜FC戦で今季リーグ戦初先発すると、積極的なプレーでチームのアクセントとなっている。

DAZNとサッカーメディアで構成する「DAZN Jリーグ推進委員会」の月間表彰で、Goalは6月の「べストヤングプレーヤー」にバングーナガンデ佳史扶を選出した。(聞き手:吉村美千代/Goal編集部)

■左にいるから見えるスペース

――今季、ここまでの手応えを教えてください。

 今季はカップ戦でチャンスをもらっていた中で、最初のほうはチームが勝っても自分のプレーがあまり出せず、悔しい思いがありました。最近は徐々に、まだまだですけど自分のプレーが出せるようになってきています。課題も多いですが、特に自分の特長である攻撃の部分では、「やれる」という自信が徐々についてきました。

――今季リーグ戦で初先発した横浜FC戦(1○0)は結果として連勝の最初の試合となりました。長谷川監督から何か指示はありましたか?

「何も気にすることなく自分のプレーをすればいい」と言われました。「ガンガンチャレンジしろ」と。その言葉どおりに何も考えず…ではないですが、前向きなことしか考えずに試合に臨めました。そこは本当に長谷川監督のおかげだと思います。

――次の第19節・徳島戦(1○0)は交代出場、第20節・大分戦(3○0)ではフル出場。大分戦の47分、小川諒也選手のチーム3点目は、バングーナガンデ佳史扶選手のクロスが起点になっています。左SBの佳史扶選手と右SBの小川選手との連係は、新たなチームの武器に見えました。これは、お二人で決めましたか?

 そうです。二人というか、その週の練習で小川選手から「俺が中に入るから見ておいて」って言われていて。試合中も小川選手を常に見ていましたし、小川選手が逆サイドで内側に入ってきた時に、目が合うシーンも何回かありました。事前に話していて良かったと思います。

――小川選手がそういったプレーをしようと持ちかけてきたのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

 小川選手はずっと左SBをやっていて、左でえぐっていった時にどこが空いているかを分かっていたと思うんです。多分ずっと思っていたことを僕に伝えてくれた。だから、(逆に右SBに入った)小川選手がそこ(空いているスペース)に入って来てくれて、あの得点が生まれたのだと思います。

――監督から言われたとかじゃなくて、完全に二人で決めたのですか?

 選手間で話し合って、確認し生まれた得点でしたが、そういうシュチエーションを監督が作り出していただいたと感じています。

――よく会話できている証拠ですね。あとこの試合は特に後半、推進力がかなり見えたのですが。

前半からも積極的に行っていましたが、相手に退場者が出たこともあって、後半はより前に行けたのだと思います。ハーフタイムに監督から「ここで安パイに行くんじゃなくて、追い打ちをかけるんだ、追加点を奪いに行くんだ」という話もありました。加えて、自分はもうここでアピールするしかないと思っていたので。相手が一人少なくなったからSBが前に出れば、チームにプラスになると思ってガンガン行きました。

――それが後半早々の小川選手の得点シーンにもつながるのですね。小川選手は左利きで右SBに入っていますが、佳史扶選手も左利きです。例えば右に入って同様なプレーをしたいと思ったりしますか?

右SBはやったことが一回もなくて(笑)右ウイングバックならあるんですけど、小川選手みたいにあんなに器用にはできないと思うんです。…でも、右でもガンガンしかけていけばやれるかな? やるとなったらそういうプレーをしたいと思います。

■スパーズ時代のベイルが好きだった

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――右、左問わずSBというポジションに対するこだわりはありますか?

一番こだわっているところは、SBではありますが、どんどん攻撃に参加していって攻撃の中心になるぐらいのプレーをすることです。いつも心掛けています。

――FC東京の公式HPで好きな選手にマルセロ選手(レアル・マドリー/ブラジル代表)とギャレス・ベイル選手(レアル・マドリー/ウェールズ代表)を挙げておられます。二人とも左利きでサイドのアタッカー。マルセロ選手は左SBで、ベイル選手は今は前線が主戦場ですけど、キャリアの最初はSBでした。

僕、スパーズ(トッテナム)時代のベイル選手が大好きで。 

――やっぱりそうだったのですね。

 そこに繋がっています。

――どこがすごいと思われます?

   僕、実はSBでプレーすることになったときはイヤでした。

――イヤでしたか。

はい。それでお父さんに「ベイルのプレーを見てみな」って言われて。見たら、「SBでもこんな攻撃していいんだ」って思ったんです。ガンガン上がって行って、シュートもズバズバ決めて。SBだけど好きなことやってるなと思って。SBっていいポジションだな、とベイルのプレーで思いました。

――イヤだったっていうことは当時どこのポジションを?

学年が一個上がるたびにポジションが後ろに下がってSBになった、みたいな感じです。最初はFWで、そこからハーフやって、ボランチやって、段々後ろに下がってきました。ちゃんとSBになったのは多分高校3年生、トップ昇格と同時ぐらいなんです。だから最初は、というか今もずっと攻撃が一番好きです。

――今のプレーにそれは表れていると思います。逆に課題はありますか?

いっぱいあります。攻撃のビルドアップの時のポジショニングだったり、前への声掛け。もっとたくさんあるんですけど、まあ一番は守備です。前をどう動かして、自分がどこにポジションを取るか。そういうところはまだまだです。

 今は、(センターバックの)森重(真人)選手や、1つ前(サイドハーフの)のアダイウトン選手に任せっきりじゃないですけど、助けてもらってやっている感じがすごくあります。そういうところを本当に自分でできるように、逆に指示をするようにならないとダメだと思うので。そこが今一番の課題です。

――例えば守備面で、J1の選手でこの選手を止めたい、負けたくないといった選手はいますか?

マッチアップですか? そうですね。J1に在籍して代表でやっている選手には絶対負けたくないっていう気持ちはあります。アンダー世代の代表でも。代表選手には負けたくないです。

■FC東京サイドバックの系譜

20210716Kashifu Bangunagande-ogawa©Hiroto Taniyama

――話は少し変わりますが、FC東京のSBと言えば、加地亮選手(引退)、徳永悠平選手(引退)、長友佑都選手(昨季マルセイユ)、太田宏介選手(パース・グローリー)、室屋成選手(ハノーファー)、という代表の系譜があると思います。ご自身はFC東京アカデミー出身ですが、そういった先輩たちに影響を受けましたか?

  僕が高校1年生くらいの時に、初めてトップに練習参加したタイミングで、太田宏介選手がいました。その時に、太田選手と小川選手の二人の、日本でトップレベルのスタメン争いというか、そういうのを間近で見ていました。初めてトップチームの練習に参加した時で、とても刺激を受けて。

 SBですからクロス練習になると、あの二人と一緒にサイドでボールを蹴ったりしていました。正直、最初はめちゃめちゃ緊張していましたが、同じポジションなのに二人ともなんでも話していて。そういう関係性ってすごくいいな、って思いました。

 その二人が僕にもいろいろ教えてくれたので、僕もすんなり練習に入ることができました。そういう姿勢を見て衝撃というか、さすがプロだな、日本トップクラスのSBだ、と思いました。

――FC東京のSBの先輩たちのように、海外に挑戦したい思いはありますか?

その気持ちはあります。小さい時からの目標は海外でプレーすること、プレミアリーグでプレーすることなので。

――なぜプレミアリーグですか?

小さい時からお父さんがプレミアリーグばっかり見ていたので、自然とプレーしたいと思うようになりました。

――アカデミー選手として、クラブへの思いを聞かせください。

東京に入ってもう10年経ちました。最初は憧れのクラブとして加入してから10年です。今、自分がプロになってみて、アカデミーの子供たちが(トップチームの)自分たちをどう見ているかは、アカデミー出身だからこそ分かります。

 サッカーの結果でも、私生活でも、ファン・サポーターへの対応のところでも、自分が小さい頃に思っていたようなプロであれるように、そのことを日頃生活から意識してやっています。あと、チームの状況が悪い時に、そこを下から持ち上げるのがアカデミーの選手だとも思っています。状況がどうであっても、どんどんチームを押し上げていけるように、プレーでも私生活のところでも、日頃から意識しています。

 隣のグランドでアカデミーが試合や練習をしているので、たまに見たりもしています。今のアカデミーの子供たちは、僕たちがアカデミーの時と比べてすごくうまいので。結構、衝撃を受けています。

――佳史扶選手もうまいですよ。

いや、アカデミーの時はもうチャランポランでしたよ。全然(笑)。

――最後に、少しサッカーを離れた質問を。HPにマイブーム・ウクレレとありました。今も弾いてらっしゃるんですか?

最近、ギターをもらいまして。はい。練習してます。こないだまでウクレレをやってたんですけど。最近はちょっとギターのほうにいっちゃっててウクレレはここ一週間ぐらい触れてないです。

――ギターはどういうのを弾いてらっしゃいますか?

まだ、全然弾けないです。

――コードから?

はい。まずチューニングから始めて。チューニングにめちゃめちゃ時間かかって、これからコードを覚えて、って感じですね。

――人前で演奏したいとかバンド組みたいとかそういうのはありますか?

まったくそれはないですね。恥ずかしがり屋なので。人前では多分弾けないです。まあ家族ぐらい。

――ご家族が音楽好きなのですね。

そうです。家族みんな音楽好きで、太鼓とか家にあります。

――音楽家族、いいですね! 本日はありがとうございました。これからのご活躍、期待しております。

ありがとうございます。頑張ります!

■DF 49  バングーナガンデ 佳史扶 Kashif BANGNAGANDE
2001年9月24日生まれ、19歳。176cm/74kg。東京都出身。FCアビリスタ-FC東京U-15深川-FC東京U-18を経て20年トップチーム昇格。J1通算6試合、J2通算25試合出場(7月16日時点)

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