2020-10-18-cerezo-seko-dazn🄫J.LEAGUE

「本能」で守っていたC大阪・瀬古歩夢がロティーナ監督の下で見つけた新しい自分/インタビュー

スポーツ配信チャンネルDAZN(ダゾーン)とパートナーメディアが立ち上げた「DAZN Jリーグ推進委員会」が「Jリーグ月間表彰」を開始した。リーグ戦で顕著な活躍をした選手、チームを参加各メディアが毎月選出する。

Goalは『月間べストヤングプレーヤー』を担当。第1回となる9月度はセレッソ大阪DF瀬古歩夢を選定した。9月のリーグ戦全7試合に先発フル出場、今季躍進を見せるロティーナ・セレッソの守備の要へと成長した桜の生え抜きだ。年代別代表にも選出される二十歳の若武者が語る今季のチーム、そして自身とは?(聞き手=川端暁彦)

■とにかくガムシャラなだけだった

——今季はコロナ禍によって、非常に難しいシーズンとなりました。

「本当に難しい年になったと思います。自粛期間はすごくウズウズしていたのを覚えていますし、それだけに始まったときはうれしかったですね。お客さんが入った最初の試合もすごく印象的で、応援してもらえることのありがたさを感じましたし、サッカーができることへの感謝の気持ちを本当に持てたと思います」

——再開して最初の試合はやはり印象的ですか。

「グッとくるものはありました。もちろん試合勘は全然なくなっていたので、ちょっと苦しんだ部分もありましたけれど、そんなん言ってられないので。最初はお客さんもいなかったですけど、DAZNを通じて応援してくれている人がたくさんいるのも分かっていて、その人たちのために自分たちができることは何かと言えば、戦って勝つことだけなので。それだけを意識してやりました」

——難しいシーズンではありますが、瀬古選手個人のパフォーマンスは昨季を超えるものを出せているように感じます。

「試合にもコンスタントに出ることができて、自分としても成長できているなと感じることのできる年になってますね」

——例えば、どういう部分で?

「去年はとにかくガムシャラなだけでした。今年は試合に出続けている中で、遠慮していても仕方ないし、良い危機感というか、責任感を持ったプレーができるようになっていると感じます」

——ロティーナ監督のサッカー、その戦術を消化するという部分では当初苦戦していたところもあったように見えました。

「やっぱり最初はそうですね。守備の部分のポジショニングであったり、ある場所にボールがあれば、こういうポジションに立つといった、ポジショニングに対する考え方が今まで自分のやってきたこととは違っていたので、監督の言うことにトライしていくところで時間がかかったのは事実ですね。

 ただ、逆に攻撃の部分では、後ろの選手がしっかりボールを持って動かしていくというのは自分の特長だったので、そちらはすんなり入っていけました。毎試合意識してプレーしています。ビルドアップのところは自分の特長を出さないといけない」

——今年は左足を使ったビルドアップでも良いプレーが目立ちます。

「センターバックの右でプレーすることが多かったので右足の印象が強いと思いますが、もともと左足を使うところでも問題なくプレーできるんです。両足を使えるのも自分の特長なので、慣れれば(CBの)左でプレーすることに問題はなかったです」

——もう一つ、肉体的にもスケールアップした印象があります。

「自分でも思います。ただ、個人的にはもっともっと上げないといけない。日本のトップ選手と対峙すると、まだまだ細いなと思っていますし、課題でもあると思います。上に行くためには、もっともっと上げないといけない」

——コロナ禍の中断期間でもウェイトトレーニングは結構やって筋肉をつけていた?

「やりました。あと、膝を手術しているので、そこを補強するようなトレーニングも継続してやっています。ただ、リーグが始まってからちょっと付けすぎたかなという部分もあって、逆に少し落としたりもしました。そこはやりながら(ベストの肉体を)探している感覚もあります」

■「〜されるかも」を考えて

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——それでは、具体的なプレーについても教えてください。観ていて印象に残ったシーンについて聞きたいのですが、9月13日第16節・横浜Fマリノス戦の29分にカウンター対応からシュートブロックに至る流れなんですが、覚えていますか?

「ああ、エリキ選手のシュートを止めた場面ですね。覚えています」

——恐らくC大阪としては最悪の場面だったと思います。ビルドアップを自陣で前向きにインターセプトされてしまい、そのままFWへの縦パスが入って、2対3と数的に劣勢な状況を作られてしまいました。

「あれはとりあえず徐々に遅らせるディフェンスをしながらだったんですが、(ボールホルダーの)横にエリキ選手がいるのも見えていました。そこからエリキ選手にパスが出るんですが、ただちょっとだけボールがゆるくて、ワンタッチで打たないでトラップしたんですよ。そのタイミングで『最悪切り返されてもヨニッチがいる』というのもあったし、何より『この選手はこのタイミングなら切り返さないで打ってくる』という予測もあって滑った感じですね」

——シュートブロックに行く決断をするまでに、そこまで予測できていたんですね。

「『〜されるかも』というのをいろいろ考えながらやるようにしているんですけれど、トラップされた瞬間で、その決断ができたのはよかったと思います。あの場面でも、奪われた瞬間からいろいろな『〜されるかも』をイメージしながら対応していました。まず真ん中にいった中で『(パスを)出すやろな』というイメージはできていたので、出した瞬間から対応できたのかなと思います」

——そういう守備のディテールを突き詰められてるというか、よりアラートな選手になれている印象があります。

「それは自分としても成長しているとは実感していて、昔に比べて本当にアラートになっているのはありますね。『こういうときはどう対応するべきか』というのが瞬時に判断することがだいぶできるようになってきたと思いますし、この場面もそれが出せたからああいうプレーになったのかなと思います。それはこの1年くらいで成長した部分かなと思います」

——その直後の34分にも相手のミドルシュートに対して素晴らしいシュートブロックがありました。ここは自分のポジションを捨てる決断をしていますよね。

「これ、ボールを持ったチアゴ・マルチンス選手は“打つ選手”なんですよ。ミドルシュートも素晴らしいのを持っているので、それもあって決断して出て行った感じですね。これがああいう場面でシュートを“打たない選手”だったら、逆に出て行かなかったと思います。そうやって相手の情報も頭に入れてやれるようになっているのはありますね。『この選手はこういうプレーしてくるから、こうしよう』とか」

——ものすごく考えてプレーしていますが、昔はもっと“本能系”のプレーが多かった印象もあります(笑)。

「そうだったと思います(笑)。昔は本当に本能で守っていた部分があって、でも去年からロティーナ監督に教わるようになって変わってきたというか。その中で昔みたいなプレーが必要になる場面もあると思うので、そこはもっと自分の中で整理して考えながらやっていけるようになれればいいなと思います」

——あとはやっぱりビルドアップで目立ちますよね。9月23日の第18節・FC東京戦で印象的だったのは相手が2枚でプレスに来る中で、間を抜いちゃった場面です。

「海外のCBを見ていると、このポジションの選手が一枚はがせるかどうかで生まれるものが本当に大きいと感じます。もっと上を目指すなら、CBでも一人はがせるくらいのプレーができないと現代サッカーではキツいと感じています。

 リスクは多少ありますが、そのリスクを背負ってでも抜ければ、一気にチャンスが広がる。もちろん、状況を観て考えながらやる必要があって、そこで持ち出すべきなのか、一回はたいてサポートのポジションを取るべきなのか色々だと思いますけれど、選択肢の一つとして自分で一枚はがすところは持っていたいと思います」

——ああやって一回プレスをはがせると、次から相手FWは来にくくなりますしね。

「それは狙っていますし、逆に僕から奪おうともっと来てくれるなら、他の選手が空きますからね。どっちになってもいいんです」

■デ・リフトの強さと判断はすごい

20201019_Matthijs de Ligt🄫Getty Images

——話を聞いていると、海外の試合も結構観ているんですか?

「一試合を通してガッツリ観ることはそんなにないんですけれど、自分が好きな選手のプレーを観て参考にしたりすることのほうが多いですね。特定の選手のプレーを集めて、まとめてもらったりもしています」

——たとえば、誰のどういうプレーですか?

「自分の中で課題にしているプレーを集めてもらうことが多いんですが、最近は人に対して強く行くプレーについてユヴェントスの(マタイス・)デ・リフト選手のプレーを観ていました。僕とあんまり年も変わらないんですけれど(一歳差)、人に行く強さとか判断がすごいなと思っていて……。

 セレッソでは戦術上、人に対して行くところと行かないところが分かれているんですけれど、そこでうまくいかないこともあって。例えば、FC東京戦の失点シーンはその一つで、スローインからアダイウトン選手に振り向かれてしまってやられていて、あれなんかは完全に自分が潰せていればという場面だったと思います。ああいう場面での状況判断は今の自分の課題ですね」

——そこをデ・リフトから盗みたい?

「予測と準備が素晴らしいのはすごく感じるんですが、あと実際に声は聞こえないんですけど、でもきっと声を出しているんですよ。そして自分が狙いやすいような状況を作って強く行って奪い切っている。そういうことをもっともっと後ろからしゃべって、自分が獲れる状況を作れるようにしたい」

——小さい頃から年代別日本代表でずっとやっているし、そういう欧州のトップクラスも絶対的に遠く感じているわけではないと思います。それこそデ・リフトと競り合うような欧州のリーグにいずれ行きたいという思いは?

「ずっと年代別代表で一緒にやってきた同い年の菅原由勢(AZ)がオランダでやっていますし、そうやって欧州へ行った選手たちから刺激を受ける部分はありますね。そういう場へ行きたいという思いはメチャクチャありますよ。U-20ワールドカップで対峙してやれなかったかといったらそうじゃないと思いますし、行ったらやれるという自信もあります。いまは日本で経験を積んで、いずれはと思っています」

■菅原由勢に刺激を受けている

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——欧州でやる夢をかなえるためにも、いまロティーナ監督の指導を受けられているのは大きいですね。

「自分が今までやってきたこととはまた違った守備のやり方を仕入れた、収穫できたのは大きいですね。やっぱり自分は守備の人間なので、ロティーナ監督からもいろいろなことを吸収しながらやれている感覚はあります。

——チラッと名前が出ましたけれど、日本代表にも入った菅原選手の存在は刺激になっているようですね。

「そこはそうですね(笑)」

——やはり同い年には負けたくない?

「あの年代の代表に入っていた選手はみんながそう思っているんじゃないですかね」

——みんな負けず嫌いだったものね。

「そうですね(笑)。仲も良かったですし、その中から欧州でやる選手が出て来ているのは、自分はどの選手もすごく大きな刺激を受けていると思います。

——同年代の選手と競うという意味では、来夏の東京五輪も大きな目標ですね。

「今年五輪があったら、たぶん自分は選ばれていないです。そういう立場だったと思います。大会が延期になったことはポジティブに捉えています。C大阪で試合に出られるようになったことでチャンスが広がったと思いますし、でも出ているだけではダメなのも確かなので、一試合一試合を大切にしたいです」

——森保一監督もボールを運べるCBを求めていますし、タイプ的に合わないということもないと思います。

「そこに関しては、自信は持っていますね。五輪代表はたぶん3バックですけれど、自分が真ん中にやるにしても、サイドをやるにしても、やっぱり自分の課題である、状況を判断しながら人に強く行くところが大事になってくると思います。そこを意識しながらトレーニングして、試合でもやっていきたいですね。でも、決して遠くはない目標だと思っています。

——最後に今後のJリーグですが、川崎フロンターレが独走していますけれど、「まだあきらめねえぞ」というのはありますよね。

「直接対決で負けたのは悔しかったですが、チーム全員誰もあきらめてはいないです。残りの全試合で勝ち点3を積むための準備をし続けて、食らい付いていくつもりでやっていきたい。最近失点が増えてしまっているので、後ろの覇気というのをもう一度出していかないといけない。その上で戦術上のポジションを守ることだったり、積み上げてきたものをもう一度再確認して、残り全部勝つつもりでやっていきたいと思っています」

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