■OAそれぞれが異なった特徴を発揮
改めてオーバーエイジ(OA)の力には唸らされた。「オーバーエイジの3人が頼もしすぎた」と堂安律が話せば、久保建英は「やはりモノが違うなと思った」と彼らを表現。百戦錬磨の3人がピッチ上で示した存在感は別格で、多くの若い選手たちに安心感をもたらすに至った。
それぞれが異なった特徴を発揮してチームに影響を与えていたが、一言で表すなら大きな“経験値”を五輪世代に還元していると言っていい。戦況を見る目が圧倒的に秀でているのだ。
酒井宏樹ならば対人の強さを発揮し、ここぞという場面ではしっかりとボールを回収。もしできなかったとしてもファウルで止めて、相手に流れを持っていかせない守備を披露した。
遠藤航にしてもプレッシングをかけたときに、かわされたとしても高い強度で2度追い、3度追いをして相手の攻撃を抑止。互いに球際の強さという特徴を生かしながら、細かいところまで気を配って「相手が出てくるぞ」というタイミングを察知しつつ流れを止める守備は完璧に近かった。
■五輪世代に“気づき”をもたらす
(C)Getty imagesまた、吉田麻也のゲームマネジメントは秀逸だった。試合終盤に田中碧が相手選手のアフターチャージを受けた際には、誰よりも早く前に出て猛抗議の姿勢を示して見せたが、その理由にも経験値の高さを感じさせる。
「僕は長谷部さんみたいに優等生ではないので、かわいい選手たちが削られたら、そこは(抗議に)いかなきゃいけない。テレビで見てる人はもしかしたら『オーバーエイジなのに大人げない』と思うかもしれないけど、これもゲームマネジメントの一つ。あの後、実際にラフプレーがほぼなくなったと思う。そういうところはみんなにも見て感じてほしいと思います」
試合中に吉田にピッチで声をかけられていた上田綺世は「僕のプレーを一つとっても、何か思ったら言ってくれる。そこですごく刺激を与えてもらっている」と語っていたが、こういったやり取りによって若い選手たちは新たな気付きを手にしている。
このチームはまだまだ強くなる。OAの3人が加わったことによるチームの成熟に期待感を募らせる90分間だった。
取材・文=林遼平


