20210718_Japan_Spain2(C)Kenichi Arai

勝利逸も有意義だったスペイン戦。U-24日本代表は見付けたかった課題を手にして金メダルへと向かう

■これまで得難かった展開を経験

 もちろん勝利が欲しかった。だが、本大会前、最後の強化試合として迎えたスペイン戦は、金メダルを目指す日本にとって非常に有意義な試合となった。

 スペインはEURO2020で大会最優秀若手選手賞を獲得したぺドリら欧州で活躍する選手たちが軒並みメンバー入り。東京五輪において優勝候補の一角と見なされるチームで、金メダルを目標に掲げる日本としては、スペイン戦は本大会に向けて試金石となる試合と考えられていた。

 実際に強敵と相対した90分間は得るものが多かった。6月シリーズから日本は基本的にボールを保持できる試合が続いていたが、今回の相手は技術的にも高いレベルにあるスペインだ。

 立ち上がりから押し込まれる時間が続き、非保持の時にどう戦うかが要求された。これは本大会のU-24フランス代表戦やU-24メキシコ代表戦で同様の展開になる可能性があるため、そういった試合に向けても良いシミュレーションとなった。

 前半は収穫が多かった。序盤こそ相手の巧みなボール運びに対してプレスがハマらない時間もあったが、最後は中央のところを封鎖。冨安健洋と吉田麻也が後方を落ち着かせれば、給水タイムを機にそれぞれの立ち位置も修正され、徐々に巻き返す時間を作っていた。

 前半の終わり間際には久保建英の突破から堂安律が先制点を奪取。相手のコンディションの悪さは頭に入れないといけないが、押し込まれた状況の中で柔軟に戦いながらリードを奪って後半へと折り返せたことはポジティブな要素と言っていい。

■「ああいう相手にでもボールを保持したい」

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 一方で、大幅にメンバーを入れ替えた後半戦は試行錯誤する時間が続いた。相手が攻勢をかけてきた中で全体的にラインが下がり、それを試合中に修正することができず。結果的に同点弾を献上し、試合は1-1のドロー決着。先発組とサブ組の力量差があることを見せてしまったことはマイナスポイントだ。

 それでも、“総力戦”が求められる東京五輪に向けて全選手のコンディションをチェックできたことは大きい。怪我で出遅れていた上田綺世もピッチに立って復帰をアピール。本大会へ弾みをつける試合になったことは間違いない。

 あとはスペイン戦で見つかった課題をどう昇華していくか。

「話さなければいけないのは苦しい時の戦い方。相手の戦い方にリアクションだけだといつかやられてしまう。もう少し先手を取るような守備をしないと苦しい。奪った後の質も、もう少し上げないと苦しいなと感じている」とは吉田の言葉。

 ボールを持たせる守備ができていたとはいえ、攻め込まれる時間が長くなることはできるだけ避けたいところ。「ああいう相手にでもボールを保持したいというのは、試合が終わった後のミーティングで選手たちから出た」と堂安が話すように、苦しい中でどうやって自分たちの時間を作るかがメダル獲得に向けた課題となる。

 残りの4日間でどれだけ修正を図り、そして大会中にいかに成長していくか。スペイン戦で得た課題と収穫をしっかりと本大会につなげることができれば、メダル獲得の可能性もさらに高まってくるはずだ。

取材・文=林遼平

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