■世界大会で意図的にボールを奪えるか
GOALベスト8で失意の敗退となった東京オリンピックから約6カ月。なでしこジャパンは昨年10月に新しく池田太監督を迎え、21日に初戦を迎えるAFC女子アジアカップ・インド2022を戦う。
日本は上位5チームに与えられるFIFA女子ワールドカップオーストラリア・ニュージーランド2023への出場権確保(※)はもちろん、大会3連覇を懸けて再びアジアの頂点に挑む。(※上位5チームに開催国・オーストラリアが入った際は、6位のチームに出場権付与)。
新生なでしこジャパンは昨年10月の国内合宿に続き、11月にオランダ遠征を行った。12月にも国内合宿を行う予定だったが、オミクロン株流行の影響で中止に追い込まれ、池田監督は制限された約2カ月半の準備期間で、この大仕事に臨む。
近年の日本は、世界大会で意図的にボールを奪えず、FIFAランキング上位国に敗れてきた。その点で違いを見せられるかが今大会のポイントとなる。
■目指すのは、U-20で世界制覇をしたサッカー
Getty Images池田監督が標榜する「アグレッシブにボールを奪う」サッカー。これは2018年、自身がU-20女子W杯フランス大会で世界一に導いた際のU-20代表時代と同様だ。池田監督の下で世界一に貢献したFW植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)は「1人目のディフェンダーとして相手を追うハードワークがFWにも求められる」と話す。選手が今後代表に生き残っていくためには、これまで以上にボールを激しく追うスタミナと瞬発力が不可欠になるだろう。
また、時には手数をかけない速攻でゴールまで行き着く形も模索する。紅白戦ではサイドハーフの選手がゴール方向に走るFWにミドルレンジのパスを送り、それをワンタッチでシュートする形が見られた。WEリーグで最も持ち味を発揮している成宮唯(INAC神戸レオネッサ)から精度の高いボールが供給されており、新たなオプションとして期待できそうだ。
紅白戦ではあえて途中で1分間プレーを止め、選手同士で意見交換する時間を設ける工夫もあった。これは、コミュニケーションを重視する池田監督の丁寧なチーム作りを表していると言える。
■女子サッカーへ期待が持てる内容を
Kenichi Arai大会を展望すると、仮に日本がグループCの2位で通過した場合、グループBの1位・オーストラリアとの準々決勝が予想されるため、何としても1位通過を手にしたい。
21日に行われるグループステージ初戦の相手ミャンマーは、グループCで最も格下のFIFAランキング47位。日本が第3戦に韓国戦を控えることを考えると、ミャンマー戦では大量得点が理想的だ。女子W杯2019も東京オリンピックも、初戦は引き分けだった。WEリーグ得点ランキングトップの菅澤優衣香(三菱重工浦和レッズレディース)や、東京オリンピックで2得点の田中美南(I神戸)には、チームを勢い付ける得点に期待したい。
また、初戦ではインドの環境に慣れることも重要だ。南萌華(浦和)は「こちらのピッチは少し硬くて、ボールが弾む印象がある」と感想を述べている。無失点はもちろん、ボールの動かし方にも気を配ってノックアウトステージを見据えてほしい。
現地は気温30度超えの日もあるとのこと。コンディション調整もカギとなるが、菅澤は「日本(の暑い日)と比べたら湿度がそんなに高くない」と話しており、大会を追うごとに順応はできるだろう。加えて今回は、男子日本代表の専属シェフ・西芳照氏が帯同している。長谷川唯(ウェストハム・ユナイテッド)は「前回の女子アジアカップは食事で苦労した。その心配がないのは心強い」と笑顔も見せている。
そんな中、エースの岩渕真奈(アーセナル)に新型コロナウイルス陽性反応という一報が入った。幸いにも無症状ではあるが、初戦の欠場が決まっている。今後もどんな想定外が待ち受けているか分からない。変化に対応しながら、チーム全員で決勝の2月6日を迎えたい。
メダルに届かなかった昨年夏の東京オリンピック後、9月に国内初の女子プロサッカーリーグであるWEリーグが開幕した。しかし、観客数は伸び悩んでおり、現場で取材していても、リーグのインパクトが世間にまで広がっていないと感じる。今大会は、日本女子サッカーにあるそういった停滞感を払拭するような結果はもちろん、期待を抱かせる内容も求めたい。
