■連戦による疲労は相手も同様
結果はもう変えられない。突きつけられた敗北に、精魂尽き果てた選手たちは下を向くしかなかった。
「今日に関しては完敗です。負けるべくして負けたと思うし、メキシコが勝ちに値する戦いをしたと思います」(吉田麻也)
力負けだった。中2日の連戦による疲労で身体はボロボロ。スペイン戦のショッキングな敗戦から奮い立たせようとしたが精神的にも難しかったのは間違いない。
ただ、それは相手も同様。そういった状況下でどう戦っていくかが求められていたが、日本は入りからうまく試合を進められなかった。球際のバトルに勝てず、失点を献上してからは距離感もちぐはぐ。中を締められたことで外から攻撃を目指したが、単騎での仕掛けが多く、多彩なコンビネーションも見せられなかった。
そして、セットプレーによって失点を重ねて敗戦。個、組織、気持ち。様々な要素があったとはいえ、この試合ではあらゆる面で相手を上回ることができず、勝利を手にすることができなかった。
(C)Getty images「やはりスペインにせよ、メキシコにせよ、こういう相手に対してボールを保持しないと、自分たちがやりたいことをやれないと力尽きてしまう。相手は強かったです」(堂安律)
「どことやっても、今日みたいにボールには触っているけど仕掛けて点を取れないでは一緒。結果にこだわって、難しい試合でも1点、2点先に取れるように、どんな形でもいいから点を取らないといけないと思います」(久保建英)
「世界を相手にした時、自分たちのサッカーが選べない、同じステージで戦えない歯がゆさというのを、メキシコ戦も、スペイン戦でも感じた。ここ4、5年、個人個人が成長する重要性を言われ、結果個人は凄く強くなったと思う。だけど、やはり1対1では勝てるかもしれないけど、11対11で勝てるかと言われたら、この2試合を含めて完敗だったと思う」(田中碧)
彼らの言葉を聞いても両者の間には明らかな差があったことがわかる。注視したいのは、強いチームと対峙したときに戦い方の選択肢が限られてしまうということだ。
■最終的にメダルには届かなかった
(C)Getty imagesもちろん対戦相手に対してやり方を変えていくのは当たり前のことだが、スペイン戦のように守備に追われる時間が長くなればなかなか好機は訪れないし、メキシコ戦のように先に失点を重ねたらプランも何もなくなってしまう。今大会に関しては、どう守っていくかのプランは見えたが、どうやって得点を取るのかがぼやけていた。
世界と肩を並べて戦うならば、個としても組織としても、さらに成長しなければならない。まだまだ世界が遠いことを改めて突きつけられた。
「今まで以上の成長スピードで力を付けていかないと、彼らと同じステージでは戦えない」とは田中の言葉。日本が成長する間に他の国も成長を遂げている状況を考えれば、これまで通りでは何も変わらない。例えば、いろいろな選手が欧州に出ていくことも一つであるし、これまでとは違った意識を持ってJリーグの舞台で戦っていくことも必要になるだろう。
「世界で勝っていくために、選手たちがチャレンジしようと表現しようとしてくれたことは、今後の成長につながると考えている」(森保一監督)
東京五輪はゴールではなく、次のワールドカップ(W杯)、そしてさらにその先の大会を見据えた通過点にしなければならない。17年12月の始動からチームとしてさまざまな経験をしながら積み上げてきたが、最終的にここではメダルに届かなかった。その事実を胸に刻み、未来への糧とすることで、誰もが認める“強いチーム”を作り上げていく必要がある。
取材・文=林遼平


