japan germany 1(C)Taisei Iwamoto

日本代表が世界への「憧れをやめた」歴史的な勝利:強豪と対等に戦いながらW杯優勝を目指す新たなフェーズへ

■衝撃の快勝

japan germany 2(C)Taisei Iwamoto

日本サッカー界におけるターニングポイントになったかもしれない。ドイツの地で、そう言っていいほどの衝撃が走った。

カタール・ワールドカップでドイツ代表に逆転勝利を収めてから約10カ月、日本代表は直々に対戦を申し込まれ、再びドイツとの試合を迎えていた。ホームでリベンジを期すドイツに対し、日本は「我々の今の立ち位置を測る最高の対戦にしていきたい」という森保一監督の言葉が物語るように、ここまでの積み上げや自分たちの力を測る上でも重要な一戦に臨んだ。

試合が始まってみると、ゲームを通して日本の見事なパフォーマンスが目につくことになる。カタールW杯での反省を生かし、立ち上がりから高いライン設定とコンパクトな守備陣形を構築。前からプレッシングを敢行し、奪っては素早くボールをつなぎ、縦に速いサッカーでゴールを目指した。また、ゴールキックなどで後ろからボールを動かす際にはGKを含めてしっかりビルドアップ。第2次森保ジャパンが結成されてから、遠征をこなす毎に成長を遂げてきた部分がしっかりとピッチで表現されていた。

すると、前半11分の伊東純也のゴールを皮切りに、前半だけで2得点を奪取。後半は相手のサイド攻撃の対応が難しいと見るや素早く3バックのシステムに変更し、前半とは違ったブロックを自陣に引くような戦い方で試合を進める選択をした。これが功を奏し、スムーズな戦術変更から相手の攻撃をシャットアウト。ゲーム終盤には足が止まる相手から2つの得点を加え、4得点を奪って快勝を手にした。

■日本代表、新たなフェーズへ

japan moriyasu(C)Taisei Iwamoto

敵地でドイツに4-1の快勝。この結果を誰が想像したことだろう。

上田綺世が前線で屈強なDFを相手に見事なポストプレーを見せ、中盤では遠藤航がデュエルキングらしい球際の強さを披露。最終ラインでは、第2次森保ジャパン初合流となった冨安健洋が抜群の安定感でドイツの攻撃を封じた。もちろん、個だけで相手を上回ったのではなく、チームとしても前線からの連動したプレスやゲームプランに合わせたディフェンスで対応。相手のクオリティーの高さをわかった上で、そこにナーバスにならずに応戦できるほどのメンタリティーも備わっていた。

この勝利がもたらす価値は大きい。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の決勝戦・アメリカ戦前、ロッカールーム内の円陣で主将・大谷翔平がチーム全員へ向かって「憧れるのをやめましょう」と述べた話はあまりに有名だ。そして日本サッカー界も、この勝利によって強豪国を過度にリスペクトすることはなくなるだろう。本気のドイツに勝利できたならば、どの相手にも自分たちの力が通用する。過信は禁物だが、これまでのメンタリティーとは明らかに異なる段階に進んだのだ。

次なる未来へ向け、主将の遠藤航はさらに強くなるためのビジョンを明かした。

「(今後、一人ひとりの)個の能力が上がれば、当たり前だけどチーム力は上がる。チームのためにやるというのは日本人の一番良いところだと思うけど、これからは『個で勝れないからチームとして戦う』のではなく、『個で勝りながらチームでも戦う』というふうにすれば、日本代表チームはさらに強くなっていくと思う」

昨年の11月、カタールW杯でドイツに逆転勝利を収めた際、その衝撃から「歴史的な勝利」と言われた。そんな「歴史的な勝利」を一瞬にして更新させた今回の圧勝劇。もはやW杯優勝は夢のまた夢ではない。「世界の強豪と対等に戦いながら優勝を目指す」。新たなフェーズに日本が突入したことを予感させる勝利となった。

取材・文=林遼平

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