日本代表は27日、カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の7戦目で中国代表をホームに迎える。
■予測不能な新生・中国代表
(C)Getty imagesW杯最終予選のグループBで、4勝2敗の2位につけている日本(勝ち点12)。昨年9月、10月シリーズではそれぞれ初戦で敗北したが、11月には5戦目のベトナム代表戦、6戦目のオマーン代表戦に連勝して順位を上げている。
W杯本大会にストレートインできる2位以上に位置している日本だが、3位のオーストラリア代表とは勝ち点差1、首位のサウジアラビアとは勝ち点差4とまったく油断できない状況だ。2月1日にはサウジアラビア代表との直接対決も控えているが、まずは目の前の中国戦で少なくともこのままの差を維持できるようにしなければならない。
一方、中国は勝ち点5の5位と崖っぷちだ。2位日本との勝ち点差は残り4試合時点で「7」に開いており、この直接対決に敗北した瞬間に2位以上に浮上する可能性は消滅。オーストラリアも7戦目でベトナムに勝利した場合、3位でプレーオフに進む可能性も風前の灯火となる。
昨年12月にリー・ティエ前監督が中国指揮官を退任したのも今シリーズで浮上を目指すためだろう。新任のリー・シャオペン監督は1月12日より52名を招集して合宿を行ってきた。招集が危ぶまれた帰化選手についても、MFアロイージオ、MFアラン、DFティアス・ブラウニングの3名が参加している。
アロイージオは累積警告により出場停止、エウケソンは新型コロナウイルスの影響で不参加、フェルナンジーニョも家族の問題で辞退となった。しかし、反対に日本という格上の相手に対し、最終予選6試合で4得点を決めているウー・レイやアランなど自チームのキーマンを絞った戦いは勝ち点を獲得する確率を高めることもある。
日本にとって不穏な要素はいくつかあるが、その中でも最大のものの一つがリー・シャオペン監督の戦術がまったく分からないことだ。森保一監督も前日会見で「どうチームを作っているかということはまったく分かりません」と口にしており、基軸となるシステムの部分から蓋を開けてみなければ不明となっている。
リー・シャオペン監督は現役時代には2002年の日韓W杯に中国代表MFとして出場。指導者としては中国代表を率いる前は武漢FCを指揮していたが、目立った成績を残していない。また、前日会見でも多くを語らないなど冷静な印象を見せたうえ、現役キャリアではレッドカードを貰ったことがないという情報もあり、マネジメント能力に優れた部分もあるようだ。
■森保監督の真価が試される舞台
(C)GOAL謎に包まれた新生・中国を相手に日本はどう戦うべきか。中盤で攻守の鍵を握るMF遠藤航は試合前日にこう語っていた。
「入りのところでシステムがどうか、ピッチで見るつもりではいますけど、まずは自分たちがアグレッシブに入るのが大事。その後の相手の対応は見ながらやれればいいと思いますが、まずは自分たちが主導権を握ることにフォーカスしたいです」
戦術眼に秀でた遠藤をもってしても、“出たとこ勝負”になる感はぬぐえない。海外組の合流から少ない準備期間であらゆる状況を想定した対策を練ることは不可能であり、まずは自分たちの戦いに焦点を当てるというのも妥当な判断だろう。
一方で相手を見た戦いは中国戦に限った話ではなく、遠藤はこれまでも同様の趣旨の発言を残している。中国戦に向けても「今のサッカーはそもそもシステムが必要なのかなと思っちゃったりもします」とこぼしており、「90分の中で勝手に選手が判断しながらやれる、それを監督も許容しているというオプションのあるチームが強い」と経験から来る実感を口にしている。
これはまさに森保監督が就任当初から要求していたことだ。指揮官は「戦術変更や選択肢をこれまでもキーになる何人かの選手に伝えてきました」としつつ、選手個人の対応力に任せる余地も多く残してチームを作ってきた。
今回はディフェンスラインの中心選手である冨安健洋、そしてチームをけん引してきた吉田麻也がケガにより不参加。特に試合状況を見極め、監督との話し合いを率先して行ってきた吉田の不在が及ぼす影響は小さくないだろう。
しかし、森保監督は代表選手の層を厚くする作業も同時に行ってきた。新型コロナウイルス禍ということもあり、不測の事態や選手が欠ける状況は想定済み。数名の選手を変更しただけで機能不全が起こるチーム作りは避けてきており、選手たちもそれを理解しているため過度に心配している様子はない。
吉田に代わりキャプテンマークを託されている遠藤も、年齢としては中堅だが経験は豊富。今までの試合でも頻繁に周囲とコミュニケーションをとり、中盤のバランスを整えてきた“チームの心臓”だ。
さまざまな不安要素はあるが、決してイレギュラーではなく想定されていた範囲の内。ともすれば特定のメンバーだけを対象とした攻撃のシステム化を犠牲にしてきた部分があるかもしれないが、それもこの時のためだ。試合中の90分間だけではない、就任から準備してきた森保監督の指揮官としての取り組みを発揮するための舞台は、これ以上になく整っている。
まずは勝利、そのうえで選手たちの対応力や吉田や冨安の代わりとして出る選手たちの適応力など、チームとしての深みが試される一戦。中国とのアジア最終予選は、27日の19:00に埼玉スタジアム2002でキックオフ予定だ。
取材・文=上村迪助(Goal編集部)
