いよいよ始まる2022シーズンの明治安田生命J1リーグ。開幕戦は2月18日の“金J”多摩川クラシコだ。連覇を果たした川崎フロンターレが新生・FC東京をホーム・等々力に迎える一戦となる。
昨季の川崎フロンターレは、J1無敗記録をはじめ様々な記録を塗り替えながら圧倒的な強さで連覇を果たした。多くのチームが「打倒・フロンターレ」を掲げて向かってくるであろう今季、チームは何を継続し何を変えようとしているのか。今回は「DAZN Jリーグ推進委員会の開幕特集として、“川崎の心臓”である中盤のキーマン大島僚太と脇坂泰斗に話を聞いた。（聞き手＝林遼平）
■まずはやるべきことを明確に
――1月21日に始動し、宮崎での1・2次キャンプを終え、いよいよシーズンが始まります。今の仕上がりは？
大島「チームとしては、ベースの中で新たなチャレンジをしながら練習試合を重ねてきました。今までもそうですが、完成した状態でシーズンに入るというよりは、やるべきことを明確にして1年を通して積み上げていき、個人個人が成長しながらチームも成長していくイメージです。反省点もありますが、積み上げられているところはありますし、僕個人はちゃんとキャンプでプレーできたのが久しぶりなので、そういった意味で充実感はあります」
脇坂「新加入選手も含めてゲームを重ねてきて、攻撃のところは多少分かってきた感じがあります。個人としては、強度の部分にもよりこだわっていきたいです。加えて攻撃の質を上げていくのもそうです。いろいろなことに取り組んでいければと思っています」
――昨季からの変化はありますか？
脇坂「鬼さん（鬼木監督）が掲げているのは“スピードアップ”ですね。切り替えのスピードや準備のところ、純粋にパススピードなどを求められていて、トレーニングでも取り組んでいるところです」
大島「もちろん監督も最初から『明日からパススピードが速くなる、足が速くなる』ことを求めているわけではなく、1年を通してやっていこうと最初から言ってくれています。そういう意味では無理難題ではないと思います。『各々がしっかり意識して取り組んでいくことで、いろいろなプレーが活きつつ結果、速さが生まれる』という言い方をされています。そういう意味でも選手たちは取り組みやすいですね」
Kenichi Arai――新加入組では、やはりチャナティップに注目が集まります。
脇坂「チャナティップ選手はキャラクターがすごくいいんです。見ていた通りと言いますか、かわいらしい。先輩なんですけど（脇坂26歳、チャナティップ28歳）、すごく人懐っこくて、人柄の良さを感じています。逆に、ピッチに立てばプレーの鋭さというか、普段の温厚な感じとは違うような鋭さがあるのでそのギャップは感じました」
大島「プレーがやはりすごく速い。スピードがあってキレがある印象です。身長が低いからといって競り合いの弱さも感じません。あと、思っていた以上にプライベートでははしゃぐんだなと思いました（笑）」
――個人にフォーカスすると、脇坂選手は今季から中村憲剛氏の背番号「14」を継承しました。
脇坂「一言では言えないのですが、最初にその話をいただいたときは、すごく身の引き締まる思いでした。ただ、それと同時に楽しみな気持ちもありました。やはりサッカー人生は短いので、特別な経験をしたいというのも常々思っているんです。前向きにやっていこうとあらためて感じました。あと、一番大事なのは『自分は自分だ』ということです。そこは一番大事にしないといけないところで、その部分を1年通して見てほしいと思っています」
――大島選手は脇坂選手が14番をつけることについてどう思いましたか？
大島「誰がつけるのかと考えたときに、漠然と泰斗かなという感じはしていました。だから驚きはなかったですね。新しく入って来た選手がつけられるかと言えば、そういうクラブでもないですし、そういうものでもないです。泰斗の成長、その姿を見てきたから僕は『泰斗だろうな』と思っていました。（アドバイスは）憲剛さんに聞いたほうがいいかもしれないですけど（笑）、泰斗も先ほど言っていたように。自分は自分だと思います。
僕も10番をつけるとき、今まで外国籍選手しかつけていなかった番号なんですが、単純に『つけたい』と思いました。そこで不安になったり、考え過ぎたりせず、自分は自分という考え方で取り組んできています。そこはアドバイスというより、泰斗の言葉自体が一番大事になってくるのだと思いますね」
■大島いわく「脇坂はスムーズ」
Kenichi Arai――二人は4-3-3のインサイドハーフという特に攻撃面での重要なポジションを努めています。あらためて大島選手から見る脇坂選手像を教えてください。
大島「“スムーズ”ですね。右足も左足もそうだし、プレーをする上で偏りがない。今、インサイドハーフでプレーしていてあらためて思います。僕がボランチをやっていたときは右のほうがやりやすい、左のほうがやりやすいなど、自分が立っている位置でいろいろ感じるところがありました。ただ、それって多分（自分に）器用さがないことにつながっていて。どちらかに反転しやすい、あるいはしにくいというのがあるんです。
でも、泰斗は練習中からもそうですし、試合で見ていても反転するスムーズさや、右足で止めて左足で蹴る、左足で止めて右足で蹴る、そういうことができている。そんなプレーを見ていてすごくスムーズだなと感じています。それは憲剛さんに似ているというか。憲剛さんも結構、左足で止めて右足でパスを出すことが多かった。そういうのを含めて被る要素があるし、似ている印象です。
脇坂「めちゃくちゃ嬉しいですね。というのも、自分はスムーズさを追い求めるにあたって僚太くんをずっと見ていたところがあったので。僚太くんの力を入れていないプレーを、本当に（自分が）大学生の時から見ていてすごいと感じていました。ですので、そういった褒められ方をすることがとても嬉しいです」
――逆に脇坂選手から見る大島選手とは？
脇坂「一緒にプレーしたら分かるんですけど、本当に楽なんです。僚太くんがいることによってチームが落ち着きます。ボールが落ち着くのは足元の巧さももちろんなんですが、『相手を扱うのがうまい』とすごく感じています。ポジショニングもそうですし、持ち方一つで相手を動かせるのは、味方にとってすごく楽。相手を動かしてくれるので自分たちが動く必要がなくなるというか。相手を扱うのがとてつもなくうまいんです。
大島「こうやってあらためて聞くと、やはり見てくれてるんだと感じます。嬉しいですね（笑）」
■FC東京は一枚岩になったら怖い
――18 日の金Jでいよいよ開幕戦を迎えます。いきなりの多摩川クラシコとなりますが、FC東京の印象を教えてください。
脇坂「前線の外国籍選手が強力という印象がとても強いです。昨季までは堅守速攻といったチームでしたが、今季は監督が代わったことでボールを繋ぐことにチャレンジしていると聞いています。でも、ストロングの部分は変わらないと思います。自分たちが攻撃する時間を長くして、相手の特長を出させないようにしたいですね」
大島「僕も前線の破壊力がすごく印象として残っています。また、一人ひとりを見ても能力の高い選手が多い。そこが一枚岩になったら怖いと思います。前線の選手からしっかり頑張って守備をしてきたり、はっきりした戦いをされたりすると、やはり個々の能力が高いので。そのあたりを90分通していかに分断させられか。僕たちは、あまりネガティブに考え過ぎず、流動的に強気なプレーにチャレンジしていくことが大事かなと思います」
――では、キーマンになる選手は？
脇坂「両ストライカーだと思います。開幕戦のフライデーナイトJリーグで僕たちの試合しかありません。得点を奪えば今季Jファーストゴールになるし、その試合に勝てば勢いに乗れると思います。そういった意味では（レアンドロ・）ダミアンと、相手で言えばディエゴ・オリヴェイラ選手かなと思います」
大島「（悩みに悩んで）僕らは（谷口）彰悟くんかな。昨シーズンのフロンターレは大事な試合でセットプレーから得点を取れた試合が多かったんです。アウェイの鹿島アントラーズ戦で泰斗が蹴ってヤマくん（山村和也）が決めたゴールもそうですが、厳しい試合でセットプレーから得点を取ってくれそうなので。それに僕らが前から強く守備に行く上でも、後ろからラインを上げてもらうことがキーになると思います。
FC東京側はレアンドロ選手ですね。彼はゼロからゴールを生み出す印象があって、個人技でボーンと決める、セットプレーでも嫌なイメージがあります。あまり気持ち良くプレーさせたくないですね」
――最後に開幕を楽しみにしているサポーターへ一言お願いします。
脇坂「今年もまた、見ていて楽しいサッカーが展開できるように、一人ひとりの強度もそうですし、技術のところも高いレベルが出せるように頑張っていきたいと思います」
大島「監督が掲げているスピードの部分で、スピーディーなサッカーができるように1年間を通して頑張っていきたいと思います。また、今シーズン（コロナの影響で）どういう応援の仕方になるかは分かりませんが、厳しい戦いが続くときに、拍手などで僕らを後押ししていただけたらなと思います。1年間、一緒に戦ってください」
【試合情報】
2022明治安田生命J1リーグ開幕戦
川崎フロンターレ vs FC東京（等々力陸上競技場）
2022年2月18日（金）19時キックオフ／DAZNにて独占ライブ配信