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「もう行くところがなかった。引退するしかなかった」。大久保嘉人が中村憲剛に明かした胸の内【特別対談】

 スポーツ配信チャンネルDAZN(ダゾーン)の番組『Jリーグプレビューショー』では現在、4月2日(金)19時キックオフの「金J」セレッソ大阪vsサガン鳥栖戦に向けた特別コンテンツとして、中村憲剛と大久保嘉人の対談を配信中だ。

 今季、古巣・セレッソ大阪に15年ぶりに復帰した大久保嘉人。38歳になった今、開幕戦から7試合出場5得点の活躍を見せている。そんな大久保が親友・中村憲剛に胸の内を明かした。ここでは大久保の父と息子の大阪生活、そしてどん底に落ちた昨季からの復活についてお届けする。

■お風呂に入らせて、洗濯機回して、寝かせて

 大久保といえば、今そのSNSが話題となっている。3男・橙利君と二人での大阪暮らし。なぜ父と息子二人の生活が始まったのか?

以下に続く

大久保 :最初、セレッソへの移籍が決まったことを妻に伝えたら「橙利をついていかせようかな」という話になって。でも橙利が何と言うか分からないとなって。

中村 :まずは夫婦間で話した。

大久保 :そうそう。それで子供たちに1月に入ってから、「オレ、セレッソ行くわ」って言ったら、橙利が「オレも行く」って言い出して。

中村 :お母さんから言われた訳ではなく?

大久保 :自分から。この前(橙利君が)ちょっと横浜に帰ったんだけど、大阪に向かうとき「うわ、やっと帰れるわ」って言っていたらしい(笑)。

中村 :もう大阪のほうが自宅なんだ(笑)。二人暮らしはどう?

大久保 :マジ、大変ですよ。

中村 :朝ごはんのメニューをホワイトボードに書いていたけど、あんなにきれいに書ける人を見たことない。相変わらずの達筆。

大久保 :まだ2回しか朝ごはんを作ってないんだけど、もうネタがない。

中村 :最初にハードルを上げ過ぎたんだって(笑)。練習がある日は、嘉人がトレーニング、橙利君は学校なんだよね? 出発時間は一緒くらい?

大久保 :いや、橙利のほうが早い。

中村 :じゃあ、見送れる。

大久保 :学校まで一緒に歩いていって、帰ってきてから準備して練習に行ってるね。

中村 :学校終わりは迎えに行ったりするの?

大久保 :行きますね。で、一緒に帰る。でもこの間は初めて一人で行かせて、一人で帰って来た。めちゃくちゃいい経験ができていると思う。

中村 :こんな経験、なかなかできない。嘉人にとってもいい経験だと思う。

大久保 :間違いない。オレ、家で何もしないじゃないですか(笑)。でも、今はお風呂に入らせて、洗濯機を回して干して、寝る準備させて、寝かせて。なんかすごいなって自分でも思います。

中村 :大久保嘉人、この年齢にして成長してる。でも、世のお母さんたちのやらなきゃいけないことの数の多さはすごいよね?

大久保 :本当にすごい。これをずっとやっていくって考えたら、頭がおかしくなりそう。

中村 :奥様や世の中のお母さん、ママたちに改めて感謝だね。そういう生活のメリハリはサッカーに結びついたりする?

大久保 :特にないかな。でも、家が散らかっていると気持ち悪いから、毎日掃除機をかけたり、換気したり。だから、常にスッキリした気持ちで臨めるようになりました。

中村 :それ、結びついてるじゃないか(笑)。生活が充実している感じだね。これはもう好調の秘訣が聞けたかもしれません。

■引退を思いとどまらせた憲剛の言葉

  再びJ1の舞台に戻り、輝きを放っている大久保だが、昨季は東京ヴェルディでプロ20年目にして初めての「ノーゴール」。キャリアの帰路に立っていた。

中村 :昨季限りで東京Vを退団、その後にセレッソからのオファーが来た流れなのかな?

大久保 :自分では「最後はセレッソで」ってずっと言い続けていたんです。そうしたら梶野さん(梶野智チーム統括部長)や森島さん(森島寛晃セレッソ大阪社長)が声をかけてくださって。自分では言ってきたけど、まさか本当にオファーをもらえるとは思っていなかった。

中村 :即決?

大久保 :即決。そうじゃなかったらもう行くところがなかった。引退するしかなかった。本当にうれしかったです。

中村 :昨シーズンはプロとして初めて得点がゼロ。そこにケガも重なった。僕自身の引退を伝えたときに、「実は俺もちょっと考えている」って言っていたよね。

大久保 :今までほとんどケガをしなかったのに、あれだけ続くと「やっぱりダメなのかな」と。途中出場で試合に出ても点が取れない。夏くらいに家族に「オレ、もう辞めるわ」って言ってたんですよ。でも子供たちに「絶対にダメ」って止められて。そう言われてもやってるのはこっちだから「もういいやろ」って話をしていたんです。憲剛さんから電話をもらったときは「引退しよう」と思っていたタイミングだったんです。でもそのときに「嘉人はまだやれるよ」って言ってもらった。

中村 :ずっと嘉人の動向は気にしていて。ケガが治らなかったり、すぐに再発したりも聞いていたからね。自分が引退を決めていたから「もしかしたら同じタイミングで引退するのかな」と思っていたこともあった。でも、コンディションさえ戻ればやれるとは思っていたから、その電話で「まだやったほうがいい」って言ったんだよね。現役を続けていて良かったね。

大久保 :あそこで憲剛さんが「じゃあ、一緒に引退するか」って言ってたら、たぶん辞めちゃってたと思う。

中村 :そうなんだよ。電話のテンションで「ここで俺が同調したら嘉人も辞めるな」と思った。本当に良かった。こっちがうれしいよ。

2021-04-02-cerezo-okubo©J.LEAGUE/Getty Images

■立ち位置は一番下、でも仕方ない

中村 :クルピ監督の指導を受けるのは初めて?

大久保 :そうです。「前線は自分たちで考えながら常にゴールに向かって行け」といったサッカーだからめちゃくちゃ楽しくて、合っていますね。

中村 :クルピ監督がセレッソに来て嘉人が入るって聞いたとき、両者とも攻撃が好きなので合うと思っていました。ただ、その一方でクルピ監督は若手を抜擢する傾向のある監督でもある。どう思いながらプレシーズンを過ごしていた?

大久保 :レギュラー組に一回も入ったことがなくて。

中村 :キャンプ中ずっと?

大久保 :そうなんです。トップが先に練習試合をしていて、その途中にサブ組の自分たちがバスで到着して、トップの試合をちょっと見てその後試合する。4本やっても4本目だけしか出られないとか。立ち位置は一番下。でも、それも仕方がないから「腐らずチャンスが来た時にやるしかない」って考えて。そうしたら、開幕戦の3日前くらいに初めてトップチームに入れたんです。

中村 :それまで監督と会話は頻繁にしていた?

大久保:会話はしてましたよ。でも、ブラジルの生活とか街とかサッカーとは全然関係ない話だった。初めてトップに入ったときも、まだスタメンかどうかは決めてなかったらしい。

中村 :じゃあ、Aチームの選手たちとの練習や実戦形式は…。

大久保 :やってなくて。ぶっつけ本番みたいな感じでした。

中村 :嘉人の動きを見て、クルピ監督の中で「これだ!」って思ったものがあったのかな。監督からはどんな指示を受けていますか?

大久保 :いや、特に(笑)。「点、取ってこい!」といった感じで。

中村 :逆にそっちのほうが良いのか。嘉人は(笑)。

■ゴールを決めないと次はない

中村 :周りの選手とのコミュニケーションは?

大久保 :全然取ってこなくて。キヨ(清武弘嗣)にしても(松田)陸にしても、プレースタイルやどういうボールを上げるは知っていたから。だから、そのボールに対して「何が何でも絶対に点を決めてやる」ってことだけでした。そうしないと次はないと思っていたので。結果を出すしかない、周りを気にしていてもしょうがない。それで後悔するくらいなら、自分が思ったようにやってやろうと思って。

中村 :開幕の柏戦で初ゴールを決めてここまで5得点。その原動力は危機感?

大久保 :たぶんそうだと思います。自分からパワーが出ている。不思議な感覚がありますね。

中村 :一度引退を覚悟したところから、オファーがあっての今で、結果を出さなきゃいけない。自分自身も引退まで残り1年と決めて、「覚悟」を決めてからパフォーマンスを上げていった印象が残ってる。

大久保 :やっぱりあるんですよね、そういうのがね。

中村 :嘉人も言っていたけど、ここでやらないで後悔するんだったら、まず全力でやる。まさにそれが今季の嘉人のゴールシーンに全部凝縮されているんじゃないかな。周りからしたらあれだけハッキリ動いてくれると(ボールを)出しやすいと思います。嘉人が「そこ」にいるから、みんなが「そこ」に合わせている。フロンターレのときのようなイメージ。同じところもあれば違うところもあるけれど、「最終地点を嘉人にする」っていう組み立ては似ていると思います。

大久保 :そこは思いますね。「なんかオレ、思い出してきたな」って。

◎後編「どん底を知って変化した自分」はこちら

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