移籍市場では、勝者と敗者がはっきり分かれることが常だ。選手の移籍によってよい結果を得るチームがある一方で、その契約で損をするクラブがあることも確かだ。
だが、移籍によって双方が敗者になることはきわめて珍しい。しかし実際に、アクラフ・ハキミがレアル・マドリーからインテルへと移籍したときに、それは起こった。
このモロッコ代表は2018年夏に、トップチームでの出場機会を求め、ボルシア・ドルトムントへと期限付き移籍。すると、ドイツで覚醒し、サイドバックでもウィングでもプレーできるユーティリティ性を発揮。2年間で12ゴール17アシストの活躍を見せた。また、ハキミを筆頭にリュシアン・ファーヴルは若手中心の魅力的なチームを作り上げ、2019-20シーズンはクラブ記録を塗り替える84ゴールを記録している。
Gettyチーム内でも能力は高く評価され、ミヒャエル・ツォルクSD(スポーツディレクター)はハキミの残留を強く望んだ。
「ドルトムントとの契約は終わりに近づいている。しかし、レアルと話し合って、来シーズンもBVBでプレーできるような解決策を見つけたいと思う」
だが、コロナ禍がこの移籍に与えた影響は大きかった。ドルトムントは、マドリーが要求する4000万ユーロ(約48億円)という移籍金を支払うことを断念。ハキミの能力を考えれば全く高額ではないが、ドルトムントは応じることはなかった。
そうこうしているうちに、インテルが割って入ってハキミを獲得。ハキミは11月にネラッズーリから2点を奪い、ドルトムントを決勝トーナメント進出に導いた選手だ。インテルにとって彼は、CL脱落の仇敵ということになるが、その試合の印象は余程大きかったのかもしれない。
■インテルは長年追跡
Getty/Goalインテルはハキミを何年もの間調査し続けてきたようだ。
そう明かすのは元モロッコ代表で、2010-11シーズンはインテルに在籍したフシン・カルジャだ。2017年にスポーツダイレクターのピエロ・アウシリオがハキミのことについて聞きに来たと語っている。
「アウシリオはずっと彼のことを追い続けている。2年半前、まだ彼がレアル・マドリーにいたが出場機会がなかった時、ハキミのことを何回か僕に聞き始めたんだ。インテルはビッグクラブだし、コンテの戦術は彼にピッタリなんじゃないかな」
「彼はとても強いね。代表チームをずっと見ているが。彼のような選手はいなかった。それに頭もよいから、イタリアのフットボールにも適応できるはずだ。守備面で苦労するかもしれないが、おそらくそれも初めのうちだけだ。確実に問題なくなるだろう。それに、マイコンでさえ多少の困難があったが、それでも3冠を達成できた。ハキミには十分その素質があるし、これから成長していくだろう」
「サンシーロのようなスタジアムでプレーできるのは特別な刺激になるだろう。だが彼は何事にも動じないよ。彼はマドリーとドルトムントでプレーをしていたし、CLも獲った。彼の気持ちを奮い立たせることができるのはサンシーロだけだ」
ドイツで結果を残した甲斐もあって、「ハキミがイタリアで同様の活躍をできないのではないか」と疑う者はもういないだろう。この攻撃的サイドバックはポゼッションに恐れを感じさせず、テクニックにも優れており、サイド突破でも、カットインしても恐ろしい存在だ。
確かにカルジャが語ったように、ディフェンスには改善の余地がある。だが、ハキミはまだ21歳だ。自身の技術向上には十分な時間がある。コンテのような監督の下では特に成長の余地があるだろう。
ジネディーヌ・ジダンもハキミの才能を伸ばしてやれただろうが、指揮官とチームにはアカデミー出身選手の成長を見守ってやるだけの余裕はもはやない。
■マドリーを選ばなかった理由
Gettyハキミがサンティアゴ・ベルナベウを去るだけの根拠はもはや明確だ。そう、彼は毎週試合に出たいのだろう。一方で、マドリーがハキミを売却する理由はそこまではっきり見えてこない。
ドルトムントへの期限付き移籍は理想的な取引だった。ハキミの所属はレアルのままだったからだ。彼の望むだけの出場時間も確保できた。2020-21シーズンをラ・リーガで過ごしていたら、ダニ・カルバハルのバックアップとして過ごすことになっていただろう。だが、ハキミの成長ぶりを考えれば、右サイドバックの座をスペイン人SBから奪うことも十分に考えられる話だった。
それでも、ハキミは確実な出場機会の確保を選んだ。アレハンドロ・カマーノ代理人が今月初旬に明かしたところによると、ハキミは常にレアル・マドリーでプレーすることを望んでいながら、そのチャンスを得るためには他のチームで何年か過ごし、技術を向上させないといけないとわかっていた、ということだ。
インテルへの移籍が決定する前、カマーノはこう語っている。
「今シーズンは毎試合スタメンで出場できたが、そのぐらい試合でプレーしたいと思っている。急いでいるわけではない。彼の望みは、自分の成長のために試合に出ることなんだ」
「レアル・マドリーとはたくさんの対話をしてきたし、マドリーは常に彼を追い続けたいと思っている。我々とマドリーは距離を取りすぎることを望んでいないんだ」
「彼が残るかクラブを出るかについてこれから結論を出すことになるが、忘れてはならないのは、ハキミの目的は、いずれレアル・マドリーでプレーするということなんだ。それは彼にとって、レアル・マドリーが世界一のクラブだからだ」
「マドリーが彼に残留するようオファーをするなら時間はあまりかからないが、残留を要請しないなら時間がかかる。だが、目的はいつだって変わらない。世界最高のクラブで(プレーして)終えることだ」
結局、ハキミがレアル・マドリーのユニフォームを身にまとって技術を披露するまでには、長い時間が必要となった。ヨーロッパでマドリーのライバルになろうという強い意志を持った他のクラブに、世界で最も有望なサイドバックを渡してしまったのだ。このことは、当分疑問として残り続けるのだろう。
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