インテルのイタリア代表DFフランチェスコ・アチェルビは、チャンピオンズリーグ(CL)決勝について語っている。
今季のCLで盤石の強さを見せてきたインテル。しかし、準決勝のバルセロナ戦は激戦に。ファーストレグを3-3で終えた後、ホームでのセカンドレグでは87分に逆転弾を許して敗退危機に陥った。それでも後半アディショナルタイム、アチェルビが劇的な同点弾を叩き込むと、延長戦で勝ち越しに成功。2試合合計7-6で、決勝進出を果たした。そして31日、パリ・サンジェルマン(PSG)とのファイナルへ挑む。
そんなインテルの最終ライン中央でチームを支え、決勝に導く劇的なゴールも奪ったアチェルビ。しかし、ここまでのキャリアは決して簡単なものではなかった。
『BBC』によると、キエーヴォでセリエAデビューを果たしたアチェルビだが、当時は敬愛する父親との関係が悪く、サイコセラピストを介して和解の道を探っていたという。しかし2012年夏、ミランへの移籍が決まった直後に父親が逝去。アチェルビはうつ状態に陥り、本人は当時を「前夜の疲れが回復していない状態で、酔っ払って練習に参加することもよくあった。父親を亡くしたことで、どん底に落ちたよ。やる気もなく、プレーもできなくなった。体調が悪くなり、何だって飲んでいた」と回想。アルコール依存症にも陥ったことを告白している。
ミラン加入から6ヶ月後にはキエーヴォへレンタルされ、シーズン終了後にはサッスオーロへと放出されたアチェルビ。すると2013年7月には、精巣がんと診断されることに。腫瘍をすぐに摘出して練習にも復帰、同シーズンは13試合に出場したが、2013年12月にはがんの再発が判明。再び闘病生活を強いられたが、本人は後に「逆説的だけど、がんは僕に二度目のチャンスを与えてくれたんだ。自分が何者で、本当に望んでいるものは何なのかを気づかせてくれた」と振り返っている。
家族の助けもあってがんを克服したアチェルビは、サッスオーロでの5シーズンで評価を高め、2018年にラツィオへと加入。同クラブで公式戦173試合に出場、2019年のコッパ・イタリア制覇に大きく貢献すると、2022年9月に強豪インテルへと移籍した。イタリア屈指のビッグクラブでもここまで公式戦119試合出場、セリエA制覇やCL決勝進出の立役者となっている。
■37歳で迎える大舞台
度重なる困難を乗り越え、31日にキャリア初のビッグイヤー獲得を目指してファイナルを戦うアチェルビ。37歳で迎える大舞台へ向けて、『BBC』で以下のように語った。
「僕のモットーは『決して諦めず、常に立ち向かう』ことなんだ。転ぶことがあっても、必ず立ち上がらないといけないんだ。正しい姿勢で物事に立ち向かうことで、人は成長するものだよ」
「自分自身で助けを必要としていることを自覚することも大切なんだ。外からのサポートを受けるのは強さが必要だし、本当に自分を愛してくれる人に囲まれるには運も必要だ。でも、ずべては自分から始まるんだよ」
「個人的には、そしてスポーツ的な観点から見れば、ミュンヘンでの勝利がサイクルを閉じるものかはわからないよ。でも、僕はCL決勝で立ち止まるような人間じゃないさ」
うつ病、アルコール依存症、2度のがんを乗り越え、37歳にして自身2度目の欧州最高の舞台に立つアチェルビ。天国で見守る父にビッグイヤーを届けることができるのだろうか。





