■日本ならではの「珍しい」大会
4万人以上を呑み込んだ新国立競技場で100回目の高校サッカー王者が決定した。3年ぶり3度目、青森山田高校の戴冠だった。
47都道府県の「高校」に参加資格があり、4000校近くが参加。その代表校48校が頂点を決める全国大会に臨む。日本では至って普通というか常識的な大会方式だが、世界的には珍しいものだ。
「部活」というもの自体が珍しいというのもあるが、そもそもレベルやチームの格を問わずにエントリーでき、なおかつ上位層のチームも参加する大会というのがそう多くないのだ。3年前の大会で、海外から取材に来た方が「アニメで見ていた世界が現実だと分かって驚いた」と語っていたことがあったが、素直な感覚だろう。日本ならではの風景がここにはあるのだ。
そもそも100年を超える大規模なユース年代の大会という時点で珍しく、日本におけるサッカーがマイナースポーツだった時代から、その競技人口と観戦人口のベースをずっと下支えしてきた経緯もある。今日に至っても、サッカー観戦自体に不慣れと思われる方々をスタジアムで見かけたし、「学校」や「地域」といった縁から現地観戦だけでなくテレビやネットで試合に触れるという層も多い。こうした「入り口」がここにある意味は意外に大きいとも毎年のように感じさせられる。
■「気づき」をもたらす青森山田
Kenichi Araiそんな大会を今年制した青森山田高校も、不可思議なチームに見えるかもしれない。かつて「勝てない」と言われ続けていた雪国に位置するこのチームは、Jリーグのユースチームも参加する高円宮杯プレミアリーグに、10年前の大会発足時から参加。学年ごとにチームが入れ替わる高校年代にもかかわらず、近年は優勝争いを演じ続けており、今年もEAST優勝。Jのユースでもここまで安定して上位をキープしているチームはいないだけに、特異な存在となっている。「Jのユースが『青森山田戦は燃える』とかコメントしているのを読んで『あれ?』となった」と正木昌宣コーチは苦笑いを浮かべるほどである。
実際、対戦する各チームにとって、青森山田との試合は、そのプレスをいかに回避してボールを運ぶか、いかにCKやロングスローを与えずに守る、あるいは空中戦の技術を磨いて対抗するかといった実戦的な要素が詰まっている。「本当に毎回気付きがあって選手たちを成長させられるので、貴重な機会でありがたい」(清水エスパルスユース・岩下潤監督)と言われるほどである。
リーグ戦と違って負けたら終わりのノックアウト方式のカップ戦は「ありがたい」と言っていられないシビアさが当然あるのだが、しかし真剣に勝ちに行っているからこそ、より重く捉えて持ち帰れる財産もある。
旋風を巻き起こし、準決勝で青森山田に敗れた高川学園の江本孝監督は「青森山田さんとは日常が違う。日常から激しく厳しくしのぎを削るようなトレーニングを積み重ねないといけないと感じた」と語っていたが、こうした刺激を次代に繋げるチームはまた強くなれることだろう。県リーグにいた高川学園が、トップリーグにいる青森山田と真剣勝負をして得るものがあること自体、この大会の価値というものだ。
■本気で勝ちに行く。その循環と成長
別に青森山田も最初から強豪だったわけではない。かつて黒田剛監督も、小嶺忠敏監督に率いられた黄金時代の国見高校を見て、「これほど強いチームがあるのか」と驚愕しつつ、その背中を追う方法を探し続けて現在がある。敗戦の悔しさが努力に繋がり、成長へと繋がり、そうした強くなったチームがまたどこかのチームに刺激を与えて成長を促す。本気で努力して勝ちに行っているからこそ得られる財産と、その循環こそが高校サッカーを強く逞しく育ててきた要素でもある。
今年の青森山田は本当に強かった。そしてきっと、この衝撃がまた別のチームを強くする。100回繰り返された歴史は、またこうして積み重なっていく。
