フライブルクのスポーツ部門を統括するヨヘン・ザイアー氏は、ドイツ誌『キッカー』のロングインタビューで、堂安律のフランクフルト移籍などについて振り返った。
現在27歳の堂安は8月、3シーズンを過ごしたフライブルクを離れ、5年契約でフランクフルトへ移籍。今夏のブンデスリーガ内での移籍としては、2100万ユーロ+ボーナスという、マインツから同じくフランクフルトに加入したドイツ代表FWヨナタン・ブルカルトと並ぶ最大規模級の取引となった。
フライブルクは今夏、フランクフルトから22歳のクロアチア代表FWイゴール・マタノヴィッチを7月前半に獲得したが、堂安の移籍が正式に決まったのはその1カ月後。フランクフルトとの合意が長引いた理由について、ザイアー氏はすでに昨夏から話し合いを進めていたマタノヴィッチとの違いを指摘した。
「堂安のうちでの立ち位置はまったく別物だった。彼は我々にとって“違いを生み出す選手”であり、ここ数年で最高レベルの総合力を持つ選手の一人だった。それに彼自身も自らの将来を探っていたというところもあった」
「2024年夏には、さらに成長して特別なシーズンを送れると確信して、彼の移籍を認めなかった。そして実際にリーグ戦で10ゴール8アシストを記録してくれた。だからこそ今夏は“条件が合えば送り出す”という約束を守ることが我々の筋だった」
今夏にはMFフロリアン・ヴィルツ(レヴァークーゼン→リヴァプール)、ウーゴ・エキティケ(フランクフルト→リヴァプール)、ニック・ヴォルテマーデ(シュトゥットガルト→ニューカッスル)らが、それぞれのクラブに巨額の移籍金を残してプレミアリーグへ移籍。さらにフライブルクは、マーケット最終日に23歳の元U-21ドイツ代表MFメアリン・レールのエヴァートンへのレンタルを、2500万ユーロの買取義務付きで認めた。
その上で、「堂安は、2100万ユーロ以上の移籍金が見込めたイングランド移籍がなぜ実現しなかったのか?」と問われたザイアー氏は、こう語った。
「リツはケガをせず、今後4、5年にわたり安定したクオリティを保証できる特別なプレーヤーだ。しかし、プレミアリーグが求める選手像を考えると、リツのような選手にとってはやや厳しい現実がある。27歳という年齢は若くなく、1年後に9000万ユーロで転売できるといった“ファンタジー”を抱かせるタイプではない」
「さらに、彼にとって最優先だったのはチャンピオンズリーグだ。ヨーロッパに渡ったのもその舞台に立つためであり、フランクフルトで今その夢をかなえることができる」
また、ザイアー氏はフランクフルトでスポーツ部門を率いるマルクス・クレシェ氏との交渉についても明かした。
「(スポーツディレクターの)クレメンス・ハルテンバッハと私でマルクスと会い、双方の考えを擦り合わせた。こちらには明確な価格の目安があり、堂安が3年間にわたって示してきた素晴らしいパフォーマンスからして十分に正当な額だと考えた」
「あとは相手側がそれを実現できるかどうか。交渉の最後の10%はいつも綱引きのようなものだ。資金が潤沢ではなく、内容の論理で進む交渉では、双方が譲歩点を探り合い、最終的に受け入れる。一方だけが歓喜するのではなく、そうしたバランスの取れたディールこそが良い取引なのだ」




