敵地アリアンツ・アレーナでバイエルンに突きつけられた、スコア以上の実力差。最終的に2-3まで追い縋ったが、フランクフルトとしては「点差以上に差を感じた」試合となった。
今季、堂安はかつてないほどの激流の中にいる。シーズン途中の監督交代、そして矢継ぎ早に命じられる役割の変更。この日、彼に与えられたタスクは右インサイドハーフでのプレーだった。
「今まであそこのポジションでプレーしてないので、理想像もなければ、そのポジションでの調子の良かった時のプレー感覚というのもない。比較するものがないからこそ、より難しさがある」
これまでのキャリアで右サイドからのカットインを最大の武器としてきた男にとって、ピッチの中央で360度のプレッシャーを受ける今の役割は、今までと明らかな違いがある。本人が「頭がパンクする」と吐露するように、ピッチ上では自分のプレーと新戦術という規律の間で激しく火花が散っているのだ。
しかし、その言葉の裏にあるのは絶望ではない。今の堂安を突き動かしているのは、半年後のワールドカップ、そしてその先を見据えた生存戦略だ。
「わがままを言ってウイングにこだわって、試合に出られなくなるのはよくない。今の経験を、これからの強みにできるかもしれない。オープンマインドにして、新しく吸収できるようにしている」
歯痒さを飲み込み、まずは新監督の規律を徹底する。今の堂安は自らの「個」を輝かせること以上に、苦境にあるチームの中でどう機能し、自分を適応させるかという、より高次元な戦いに挑んでいると言っていいだろう。
怪我人が続出し、本来のポジションすら定まらない過酷なシーズン。だが、あらゆるシステムで起用され続けている事実は、裏を返せば、どの指揮官にとっても堂安が”計算できる外せない駒”である証左でもある。
パンクしそうな脳内を整理し、新しいポジションの景色が自分の感覚へと変わったとき。もがき続けたこの時間は、堂安律というフットボーラーの器を一回り大きく広げることになるはずだ。


