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20220521_Leipzig_Trophy(C)Getty Images

ライプツィヒがクラブ史上初のトロフィーを獲得も…この世界のいかなるタイトルもレッドブルを目的に導けない理由

RBライプツィヒは初タイトルを獲得したが、“フットボール祭り”の正しい祝い方を見せたのは決勝の相手クラブだった。レッドブル社はサッカーへの進出を考え直すべきかもしれない。

文=セバスティアン・ミッターク/GOAL

ライプツィヒファンが立ったサイドスタンドから大声援が聞こえたのはSCフライブルクのエルメディン・デモロヴィッチのPKをクロスバーに直撃したときだった。これによりライプツィヒがDFBポカールを制し、クラブ史上初のタイトルを手にしている。

しかし、それと同時にベルリンのオリンピア・シュターディオンの向かい側サイドスタンドから轟然たる声援が鳴り響いた。フライブルクのファンは、敗れた自分たちのチームを、まるでポカールを制したかのように称えたのだ。そして彼らは数十年前からクラブに在籍し、10年前からトップチームを率いる監督も称えた。「クリスティアン・シュトライヒ、君は最高な男だ」との声援に広いスタジアムが包まれ、ライプツィヒ側の歓声が消されていた。

中立の観客としては自然と視線をフライブルク側のスタンドに向け、ライプツィヒの喜びに目が引かれることはなかった。この夜の物語はスタジアムのフライブルク側で描かれていたからだ。この瞬間、複数の大きなスクリーンにシュトライヒが映っていた。ファンの前に立ち、感極まっている様子の彼が。

一見矛盾しているかのようだが、ライプツィヒが歴史上最高の成功を掴んだ決勝の夜、この“コンストルクト”(構造物の意味、ドイツサッカーでは企業主導型クラブに用いられる言葉)の最大の問題点がこれまでないほど明確に浮き彫りとなった。オーストリアの飲料メーカーであるレッドブルのマーケティングプロジェクトであるクラブは本当のサッカークラブのように愛されることはないことが明らかとなったのだ。

フットボールはあなたのようであるべき

例えばSCフライブルクのように。このクラブのファンたちが試合前に広げたコレオには「唯一無二のクラブ。フットボールはあなたのようであるべき」と記されており、要点が上手く掴まれている。「あなたのようであるべき」とはつまり、RBライプツィヒのようなクラブに対する反感を暗示する言葉だろう。

もちろん、ライプツィヒのチームを非難することはない。ヌクンクやライマー、ショボスライやそのほかの多くのメンバーも素晴らしいフットボーラーであり、彼らのプレーを見てて楽しい。ただ、RBライプツィヒはクラブを唯一無二にさせる要素に欠けている。そもそも法律上、(会員制の)クラブですらない。さらにライプツィヒに足りないのは雰囲気、本物のエモーション、長年にわたって養われたクラブへの愛。ベルリンでの決勝前後の数日間、そういったところが非常に目立っていた。

ポカ―ル決勝はファン人生のクライマックス

フライブルクのユニフォームはすでに決勝前日から首都のあらゆる場所で目に入った。地下鉄の駅、バスの中、広場の上、ケバブ屋の前。子連れの父たち、三世代の家族、グループで訪れた友達同士。彼らと話す度、彼らにとってベルリンへの旅はこれまでのファン人生のクライマックスであることが伝わってくる。ここに来るためにあらゆる手段を取り、試合前の特別なムードもそれを物語っていた。

ブライトシャイト広場から後にはテオドール・ホイス広場のファン祭に移動し、無数のファンたちがベルリンの中心部を通るオリンピア・シュターディオンへのマーチに参加した。すべてが自然に見え、陽気な雰囲気に包まれ、まるでフライブルクの街全体がパーティーのために首都に赴いたように。そしてスタジアムでは熱狂的なフライブルクのサポーターが終始スタンドでの主導権を握っていた。

ライプツィヒのファンはベルリンの中心部に姿見せず

その一方で、ベルリンの路上では試合を数時間後に控える中でもRBライプツィヒのユニフォームを着たファンはまったくと言っていいほど見当たらず。どうやらファン全員は見本市の敷地内のクラブ主催ファン祭にしか行っていなかったようだ。そこには飲み物の屋台やレッドブルのエクストリームスキーの映像が流れる大きなLEDスクリーン、フリースタイルサッカーのマルセル・グルクによる催し物やバウンスハウスなど。そして、どこを見てもレッドブル・ロゴ。

オリンピア・シュターディオンでは割り当てられた2万7000シートは確かにライプツィヒのファンで埋まり、ギャラリーとしては決勝にふさわしかった。しかし、試合前日にもまだチケットを購入でき、フライブルク側ではまったく考えられないほど売れ行きが遅かったようだ。それでも、数百人しか応援に駆けつけなかった敵地でのヨーロッパリーグ準決勝の試合とは比べ物とはならないほど動員し、安堵しただろう。

しかし、これらはレッドブル社の視点から見ると大惨事に違いない。サッカーへの投資の目的は、飲料ブランドの好感度を上げ、最終的にはより多くの飲料を販売すること。競技での成功によりポジティブな感情を呼び起こし、それをブランドイメージ向上につなげることで、購買決定に好影響を与えるのがビジネススキームだろう。

レッドブルはRBライプツィヒでは目的を達成できない

通常のスポンサーなら、どこもそう狙うはず。しかしながら、ベルリンのポカール決勝から受けるは、この世界のいかなるタイトルもレッドブルを目的に導けないという印象だ。ライプツィヒが来年チャンピオンズリーグ決勝に勝ち上がったとしても、ドイツ・サッカーファンの大半は彼らの成功を祈らないように思える。ポジティブな感情に欠けているから、この“コンストルクト“を築くにあたって失策が多過ぎたから。ファンに何の権利も与えられていないから。オーストリアの本部が全権を握り、情熱が育てられていないから。まさにフライブルクのサポーターたちがベルリンで見せたクラブとの絆がライプツィヒの場合感じられないのだ。

F1やフリースタイルBMXではそれらのような要素はそれほど重要ではないだろう。だが、フットボールでは必要不可欠である。

文=セバスティアン・ミッターク

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