シュトゥットガルトのニック・ヴォルテマーデを巡って、バイエルン・ミュンヘンのウリ・ヘーネス名誉会長と、同クラブOBで元ドイツ代表のレジェンド、ローター・マテウス氏との間に舌戦が繰り広げられている。
198cmの長身ながら足元の技術に定評のあるヴォルテマーデは、ドイツが準優勝したU-21欧州選手権で6ゴール3アシストと大活躍。昨夏にシュトゥットガルトに加入して以降、特に今年に入ってからは公式戦で10ゴールを記録するなど一気に脚光を浴び、すでにA代表デビューも果たしている。
そんなヴォルテマーデについて、『スカイ』や『ビルト』は先日、バイエルンと個人合意に至ったとの報道。2028年までの現行契約を結んでいるシュトゥットガルトに対し、バイエルンは5000万ユーロ(約84億5000万円)の移籍金を提示したものの、シュトゥットガルトは1億ユーロ(168億9000万円)を要求しているとも伝えられている。
一方、報道を受けたマテウス氏は『ビルト』で、「私は以前からずっと言っているが、ヴォルテマーデはバイエルンに合った選手だ」とコメント。「だから、バイエルンが彼の獲得に動くのは正しい判断だと思う。ただし、移籍金6000万ユーロでは安すぎるだろう。8000万から1億ユーロと言われていても、驚かなかったね」と語った。
これに対し、ヘーネス氏は『キッカー』を通じて「ローター・マテウスは頭がおかしい」と激怒。マテウス氏は何の責任も負っていないにもかかわらず、リヴァプール行きを選び、バイエルン移籍を断ったフロリアン・ヴィルツのケースと同様、法外な金額を振りかざしているとし、不満を爆発させた。またこうした発言は、特にシュトゥットガルトにプレッシャーをかけることになり、もし最終的に移籍金が下がれば、クラブは「敗者」として見なされてしまうとも主張した。
マテウス氏はそうした“口撃”に黙っておらず、再び『ビルト』で反論。「私は国内外の移籍市場をよく知っている」と強調し、「そして、自分の見解はいまも正しいと考えている。代表経験もなく、さらに今季の出来もいまひとつだったギッテンスですら、約6000万ユーロと言われている」と述べ、チェルシー移籍に迫っているボルシア・ドルトムントのジェイミー・ギッテンスを例に挙げると、こう続けた。
「私はフロリアン・ヴィルツについても、何カ月も前に総額2億5000万ユーロの取引になると予測していたが、実際にその通りになった。こうした金額は、今の時代にはごく普通のものだ」
「バイエルンでは、物事が一方的にしか見られていない。ジャマル・ムシアラのケースを考えてみてほしい。彼に対しては、バイエルンはヴィルツの移籍金よりもさらに高額を要求するはずだ。1億8000万ユーロはくだらないだろう。だったら、なぜヴィルツが1億5000万、ヴォルテマーデが8000万~1億ユーロではいけないんだ?」
「ヴォルテマーデのような選手には、それ相応の価格がある。彼はシュトゥットガルトとあと3年契約が残っていて、DFBポカールの優勝者であり、ドイツ代表にも選出されている。U-21欧州選手権の得点王という実績もある。さらに国外クラブからも注目されており、シュトゥットガルトも、彼(ウリ・ヘーネス)の甥であるセバスティアン(ヘーネス監督)も売却を望んでいない。しかも、いまのシュトゥットガルトは財政的に安定しており、彼のような選手を売る必要がない状態だ」
「ウリ・ヘーネスは、自分の世界に生きている。移籍市場に関しては、もう時代に取り残されているのかもしれない。いまバイエルンが欲しがっているのは、まさにそうした価格帯の選手だ。思い出してほしい。バイエルンは2019年にリュカ・エルナンデスの獲得に8000万ユーロを費やしたことを」
「ヘーネスはクラブ内で問い直すべきだ。なぜバイエルンのスカウト陣は、もっと早くヴォルテマーデを発見できなかったのか? なぜ今になってようやく注目するようになったのか? シュトゥットガルトの責任者たちは、ヴォルテマーデに関してははるかに良い仕事をしたよ」
なお、マテウス氏は、ヘーネス名誉会長による「頭がおかしい」との発言について、侮辱罪での告訴は見送る意向のようだ。「それは私にとっても、バイエルンにとっても得にならないし、余計な話題を生むだけだ」と語っている。




