サイン
憶測と不透明性は過去数カ月にわたって続いていた。しかし今、我々は自信を持ってこう言うことができる。ピエール＝エメリク・オーバメヤンは、アーセナルに残留すると。
アーセナルのトップスコアラーで、キャプテンで、チームの顔である彼は、もうどこにも行かない。ノースロンドンのクラブと新たに3年契約を結んだのだ。
これはクラブ、そして何よりもサポーターにとって素晴らしい瞬間だ。過去20年間、何度も、何度も、何度もアイドルがライバルクラブへ引き抜かれる様をなす術なく見守ってきた彼らにとって。
オーバメヤンがアーセナルを愛しているにもかかわらず、退団の噂は絶えなかった。特に昨季、直近25年で最悪の順位となるプレミアリーグ8位で終えた後、その報道は過熱した。実際に、バルセロナやインテルが接触していたことも明らかとなっている。
恐らく、ウナイ・エメリ前体制のままでは彼は去っていただろう。当時のアーセナルは舵のない船であり、結果は出ず、チーム内の分裂も激しかった。過去に例がないほど最悪の状態であった。これがシーズン終了まで続いていたら、オーバメヤンはセスク・ファブレガスやサミル・ナスリ、ロビン・ファン・ペルシーを含む壊滅的な退団リストに名を刻んでいたはずだ。
そんな彼の気持ちを、そしてクラブを変えたのは他でもない。昨年12月に就任した青年指揮官、ミケル・アルテタだ。流れていた空気を一変させ、チームに自信を与えた。そして最多記録更新となるFAカップ14度目の優勝が、その自信を確信に変えた。31歳となったキャプテンは今、将来を見据えている。
「この特別なクラブとのサインは、決して疑う余地はなかった。ファン、チームメイト、家族、そしてクラブ全員のおかげで、ここが僕のホームだと感じている。僕はアーセナルを信じているんだ。僕らは一緒に大きなことを成し遂げられる。最高の瞬間が来ると信じている」
レジェンド
(C)Getty Images2018年1月の加入から2年半余りだが、彼はすでにクラブ史に名を刻んでいる。6月のノリッジ・シティ戦での得点でプレミアリーグ50ゴールを達成。ティエリ・アンリを抜き、アーセナル史上最速記録を打ち立てた。たった、79試合で。
それだけではない。彼は加入から公式戦111試合に出場し、72ゴールを奪っている。プレミアリーグの選手としては、同期間最多記録だ。この間アーセナルの総得点数は「253」だが、全体の28%を彼1人で奪っている。驚異的なペースだ。そして今なお進化を見せており、衰える気配などみじんも感じさせない。
アーセナルに将来を託したオーバメヤン。夢は錚々たるレジェンドに肩を並べることだという。
「もちろん、加入前からアーセナルのことは知っていたよ。このクラブが特別であることを知らない人はいない」
「信じられないような選手、情熱的な選手、インビンシブルな選手を見てきた。僕は彼らの一員になりたい。最高の選手として。ファンの心に永遠に残るような選手になることを夢見ているんだ」
「アンリやライトリー（イアン・ライト）、（トニ―）アダムス、デンス・ベルカンプ……数えきれないほどのレジェンドたちのようになりたい。この特別なクラブのキャプテンになるということは、僕にとって大きな意味がある」
レガシー
Getty Images100ゴール到達まではあと28得点が必要だが、2シーズン連続で30ゴール近くを奪う彼であれば、容易に達成してしまうだろう。何せ、あと3年もある。
アーセナル史上20番目の3桁得点選手になるのは、時間の問題だ。アンリやライト、クリフ・バスティン、ジョン・ラドフォード、テッド・ドレイクと同じく、レジェンドリストに名を連ねるのは、時間の問題なのだ。
ファン・ペルシーのように、クラブを離れることは簡単だったはずだ。年齢を考えれば、アルテタの下で再建中のアーセナルではなく、すでにタイトルに手が届きそうなクラブへ行くことも可能だった。
だが、彼は最も必要とするときに残留を決意した。愛するチームのために。アルテタと共に最高のアーセナルを取り戻すために。ファンにもう一度夢を見てもらうために――。
「レガシーを残したい。僕の居場所に」
そう言葉を添えて。
文＝チャールズ・ワッツ（Charles Watts）／『Goal』アーセナル番記者
編集・翻訳＝河又シュート（Goal編集部）
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