マンチェスター・シティはここ数年、クラブのレジェンドたちに感傷的な別れを告げることに慣れなければならなくなっている。
ジョー・ハート、パブロ・サバレタ、ヤヤ・トゥーレ、ヴァンサン・コンパニ、ダビド・シルバ。皆、クラブ史上最も成功した時代に中心的な役割を果たし、全員がエティハド・スタジアムに別れを告げてきた。
しかし、今回チームを去ることになった選手との別れは特に心を苦しめる。29日、セルヒオ・アグエロがシーズン終了とともにクラブを去ることが発表されたのだ。マンチェスター・Cが44年ぶりにプレミアリーグ優勝を果たした2011-12シーズンのチームの最後のひとりを失うというのは、いつまでも記憶に残る別れとなるだろう。
■なぜチームを去るのか?

あのシーズンの最終節、あのQPR戦で、アグエロにトレードマークである冷静さがなかったとしたら、フィナーレはどれほど違っていたことだろうか。
時計は93分20秒を指していた。ポジションを落としてきたアグエロはマリオ・バロテッリとのワンツーでボックス内へと進入。落ち着いたキックフェイントで最後のDFもいなすと、右足でニアサイドを射抜いたのだった。
クラブ史上最高の瞬間であり、チームの優勝を決めたゴールでもあった。おそらく、プレミアリーグの長い歴史の中でも語り継がれていく得点だろう。
その後の9年間でもエースとしての重責を果たしたアグエロは通算384試合257ゴールを記録。クラブの歴代最多得点選手となった。すでにプレミアリーグで最もゴールを挙げた外国籍選手であるが、今シーズン終了までにさらに8得点すれば、全選手の中でも3位に躍進することになる。

だからこそ、アグエロの契約が更新されないというニュースは衝撃的だった。ここ14か月、プレミアリーグで1得点しか奪えていないのは確かだが、深刻な膝のケガや新型コロナウイルスなど困難に満ちた1年だった。
アグエロ個人ではそうしたいくつものエクスキューズがあったが、マンチェスター・Cはこのストライカーなしでも生き延びていくことを地道に学んでいった。その結果、アグエロがコンディションを取り戻しても先発には食い込めず、夏以降もチームに残る価値があることを証明する希望がむしばまれていったのである。
実際、4月に入ってもなお、マンチェスター・Cは4つのトロフィーを争っており、ペップ・グアルディオラ監督のチームは、かつて勝利をもたらしてきた名選手なしでも生き残れるどころか、ますます成功できることを証明している。
■「シーズン残りも全力を尽くす」
Getty/Goal6月に33歳になるアグエロがどのような決断を下すのかは彼次第であった。マンチェスター・Cも契約を更新するかどうかの決定はシーズン終了まで待つと言っていた。だが最終的に、次の移籍先を選ぶ時間をより多く与えるべく、前倒しで決定が下ったのである。
こうして月曜の練習後、グアルディオラ監督と自身の状況を話し合うべくアグエロは呼び出され、シーズン終了後にチームを去るという同意に至ったのであった。
それからすぐにアグエロの携帯電話には、会長の名前が映った。会長は電話でクラブに対する多大な貢献に感謝し、コンパニやシルバへの敬意を示すために計画されているものと同じく、アグエロの銅像を作る計画があると明かした。
アグエロが次にどこへ行くのか、早くも憶測が出回っており、バルセロナやパリ・サンジェルマン、ユヴェントスなどがその候補に挙がる。
だが、アグエロが見据えるのは今だ。マンチェスター・Cを離れる前にピッチでもう一度印象に残るプレーを見せることを誓っている。
「シーズンの残りも全力を尽くし、もっとタイトルを獲得してファンを喜ばせるつもりだ。その後は新しいステージで新しい挑戦が始まる。これまで最高のレベルで戦い続けてきた情熱とプロ意識があれば、新しい挑戦もうまくいくはずさ」
■後釜はハーランドが最有力
Getty/Goalアグエロの退団がなかなか正式に決まらなかったのは代わりを見つけるのが難しいためだ。実際、それがどれほど大変かはこの夏にはっきりするだろう。
マンチェスター・Cは移籍市場で新しいストライカーを探そうとしてきた。だが、最高のストライカーを手に入れるにはとんでもない金額がかかるのが常だ。ドルトムントのアーリング・ハーランドが一番のターゲットであり、このノルウェー代表FWは世界中から引く手あまたの選手のひとりとなっている。
20歳のハーランドが安い買い物であるはずがなく、プレミアリーグのライバルであるチェルシーやマンチェスター・ユナイテッドも、ヨーロッパのクラブの多くとともに興味を示している。
それでも、シティは心情的にハーランドを獲得できそうな要素がある。父親のアルフは選手としてマンチェスター・Cに3年間在籍したことがあり、親子ともどもファンとして2014年のリーグカップ優勝に立ち会っている。その時アーリングはまだ10代の少年だった。
グアルディオラは憶測に触れることはなかったが、ハーランドのポテンシャルについては高く評価している。
「数字を見て明らかなように、彼はあの年齢で世界一の選手のひとりだ。試合はあまり見ていないが、ハイライト映像は見ているし、あの数字は驚異的だ。彼の才能は知っているし、みんなもそうだろう」
インテルのロメル・ルカク、トッテナムのハリー・ケイン、アトレティコ・マドリーのジョアン・フェリックスもまた、エティハド・スタジアムにやってくる可能性がある。いずれにせよマンチェスター・Cはコンパニが去った後、代わりとなる選手との契約に18か月もかかったのと同じ間違いをすることはないだろう。
そして、もうひとつ確かなことがある。
アグエロがクラブに残していくレガシーと同じことができる選手と契約することは、簡単ではないということだ。
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