日本代表は日本時間12月1日28:00キックオフのカタール・ワールドカップ(W杯)グループE第3節でスペイン代表と対戦予定。優勝候補との一戦へ、日本の選手たちはわずかな可能性を見つめている。【取材・文=林遼平】
■判断の躊躇は命取り
(C)Getty images最高のシチュエーションが巡ってきた。
それぞれ歓喜に酔いしれ、失望に満ちた2試合を経て、日本は第3戦でスペインと対戦する。コスタリカ代表戦だけでなく、森保ジャパンが発足してから積み上げてきた4年間はもう変えられない。今までやってきたことを信じ、これからの未来を変えていく。新たな景色を見るために、グループステージ突破を懸けた大一番に臨む。
泣いても笑ってもグループは残り1試合だ。日本が決勝トーナメントに進出するために必要なのは、勝ち点3を奪うこと。引き分けでもわずかに可能性が残るが、周りの結果に左右することなく決めるならば、勝利しかない。
一方、対峙するスペインはドイツ代表との一戦をハイレベルな激闘の末に引き分けたことが大きく、勝ち点1を積み上げれば突破が決まる状況だ。そのためケガやコンディションに問題を抱える選手、累積警告に不安が残る選手は、決勝Tのことを踏まえて無理をしてでも起用してくることは考えづらい。逆にここまで出場機会の少なかったフレッシュな選手たちが、野心を持ってこの一戦に挑んでくることだろう。
スペインは強敵だ。前からプレスをかけるにしても、ミドルブロックで待ち受けるにしても、相手はパスワークで崩すことに世界一優れたチームである。その上、相手にボールを奪われた瞬間の即時奪回を狙うプレッシングも実に速い。
だからこそ、今は行くところなのか、行かないところなのか、ピッチに立つ選手たちの意識を共有し、即座に判断を変えていく必要がある。少しでも迷いが生じたり、判断を躊躇したりすれば、それは相手の思う壺。一瞬にしてブロックを瓦解させられてしまうことになるだろう。「大事なのはやると決めたことに対して100%コミットしないといけない」とは吉田麻也の言葉。ここ数日で多くの話し合いの末に決めてきた自分たちの戦いに自信を持ち、それをピッチで表現していくことが勝利への近道となる。
■冨安がケガから復活
(C)GOALスペイン戦はアップセットを起こしたドイツ戦と同様に、考え方としては無失点の時間をいかに長くできるかがポイントになる。そこで大きな鍵を握るのが、この大事な局面でケガから戻ってきた冨安健洋だ。
冨安の復帰はチームにとって朗報だ。最終ラインならどこでもこなせるユーティリティ性に加え、3バックでも4バックでも対応が可能なため、スペインが形を可変しながら攻めてこようが、彼がいるだけでピッチ内の修正を施せるのは大きい。ここまでなかなかピッチに立てず、悔しさを感じていた男からすれば、これ以上ないタイミングで迎えるスペイン戦に思いの強さをぶつけることになるだろう。
そして、冨安と言えば、昨夏の東京五輪・準決勝でスペインと対峙した時、出場停止でピッチに立つことができなかった苦い記憶もある。
「もちろん中でやっていても悔しい敗戦だと思いますけど、外から見ている方が悔しい部分もあった。僕だけではなくオリンピック世代の選手は、スペインに対しての気持ちをより一層持っている選手が多いですし、そういう意味ではあの時のリベンジをしっかりと果たすことができればいいかなと思ってます」
決して簡単な試合にはならないことはわかっている。それでもこの試合に懸ける選手たちの思いを聞くと、わずかなチャンスを掴み取ってくれるような気がしてならない。
「勝ち点3にフォーカスできない選手は明日の試合に出るべきではないと思いますし、それがすべてだと思います」(久保建英)
強い信念を胸に挑むスペイン戦。日本中を再び歓喜の渦に巻き込む勝利を期待している。
