カタール・ワールドカップ(W杯)グループE第2節でコスタリカ代表に0-1で敗れた日本代表。コスタリカが自分たちの土俵に持ち込んで勝ち点3を手繰り寄せた一方、日本にとっては痛恨の結果となった。【取材・文=林遼平】
■国内でバッシングを受けたコスタリカ
(C)Getty imagesやはりW杯は簡単ではなかった。
初戦のドイツ戦に勝利してもなお、選手たちは「気を引き締め直す必要がある」と切り替えていたし、素晴らしい勝利に一喜一憂することなく「次の試合に敗れれば意味がなくなってしまう」と長友佑都も次を見据えていた。コスタリカ戦では勝ち点3を奪いに行くことが重要であると、誰もが理解しているはずだった。
しかし、蓋を開けてみるとどうだろう。序盤から5バックで固める相手を崩せず、攻撃しようにも単純なミスが続く。セカンドボールの拾い合いでもなかなか相手を出し抜くことができず、前半はポゼッション率でも下回る結果となった。後半は3バックで相手を押し込んだが、一本のミスから失点。逆に日本は最後までゴールネットを揺らすことができず、痛恨の敗戦を喫し、W杯の難しさを痛感させられた。
試合を通して予想外だったのは、コスタリカがあまり前に出て来なかったことだ。スペイン戦の大敗に加え、国内からのバッシングも強かったことを考えると、攻撃的な思考をもって日本に挑んでくると思われた。だが、コスタリカが選んだのは自分たちの戦いを貫くこと。勝つために何ができるかを考えた結果、スペイン戦とは違い、普段から取り組んできた堅守速攻をベースとした戦いに立ち返ることで勝利を目指してきたのだ。
コスタリカの姿勢はわかりやすかった。できるだけ相手の攻撃を抑え、一つのチャンスをつかみ取る。ボール保持ができないことを理解した上で、チャンスを手繰り寄せるために、ゴール前では誰もが体を張り、中盤の球際の争いにも絶対に負けないという強い思いをピッチで示した。
■日本全体に漂った危うい空気感
(C)Kenichi Araiそんなチャレンジャー精神を存分に発揮したコスタリカに対し、日本はどこかチームとしてまとまりがなかった。「想像以上にインテンシティが高かったと思う」とは板倉滉の言葉だが、崖っぷちの状況に立たされたコスタリカがハードに戦ってくることは予想できたこと。そこへの警戒という面では、監督を含めチーム全体で驕りがあったように思えてならない。
「球際のところなど人に対して強くいった時に、どうしても少し下がってしまったり、あと1メートル寄せ切れなかったり。攻撃のところでもボールが縦に蹴られなかったりと、細かいところは前半からもう少しできたと思う」(守田英正)
システム変更によりズレが生じたことや、大きなミスが続いたことによる痛恨の失点などもあったが、注視するべきはそこではなく、チーム全体でこの一戦に臨むメンタリティのところが欠けていたのではないだろうか。ドイツに勝ったことで、チームだけでなく、日本全体に危うい空気感が漂っているのを察知できなかったことがこの敗戦につながってしまった。
ただ、まだすべてが終わったわけではない。もう一度、切り替える時間があるのは、初戦でドイツを相手に勝利を手にすることができたからである。
「何も勝ち取っていないし、何も失っていない。次に向けてやるだけです。たくさんの批判が起こることは理解していますけど、それをマネージできなければここには立てない。前回大会の川島選手も、そういう(批判される中で切り替えてプレーしている)姿を見せている。やはりもう一回立ち上がらないといけないし、自信と勇気を持ってスペイン戦に臨まないといけない。ここですべて投げ出すにはまだ早すぎると思っています」
吉田麻也はそう言った。ここで崩れているようでは、グループステージを突破するレベルのチームではなかったということ。苦しくなったのは間違いないが、再びドイツ戦のようなアップセットを起こせば決勝トーナメントも見えてくる。チーム全体でスペインに挑むメンタリティを構築していくことで、次なる景色を切り開いていきたい。
