14日に等々力陸上競技場で開催されたWEリーグカップ決勝は、PK戦の末サンフレッチェ広島レジーナが0-0(PK4-2)でアルビレックス新潟レディースに勝利を収め、チーム発足3年目で初のタイトルを獲得した。
■ベテラン二人が語る決勝進出
決勝の舞台に、新たな顔ぶれが並んだ。
国内の女子サッカーは、2004年にLリーグからなでしこリーグに名称変更されて以降、日テレ・東京ヴェルディベレーザ、三菱重工浦和レッズレディース、INAC神戸レオネッサの「3強」がほとんどのタイトルを獲得してきた。21年WEリーグ立ち上げからの2年間も同様、カップ戦、リーグ戦ともにこの「3強」が独占し、他チームに圧倒的な差をつけてきた。しかし今季のカップファイナルには、昨季リーグ戦5位のS広島Rと10位の新潟Lが進出、新たな風を吹き込んだ。
今回、ファイナリストとなった2チームには、2011年女子ワールドカップ・ドイツ大会の優勝メンバーであるベテラン選手、近賀ゆかり(S広島R)と川澄奈穂美(新潟L)が所属する。
S広島RはWEリーグ開幕と同時に土台作りからスタートしたチーム。キャプテンを務める近賀は、ベレーザ、I神戸、アーセナルL、オーストラリアWリーグなどでプレーし、21年、オルカ鴨川FCからチームに加入した。プロは結果が伴わなければならないことを強く意識してきており、チームメイトにどう伝えたらいいのかこれまで悩んできたという。しかしここにきて「ドローでは許されないチームになってきている。そこがここ2シーズンとは違うところ」と“結果”へのこだわりが優勝につながったと振り返った。
一方の新潟Lの川澄は、I神戸をはじめ、アメリカNWSLで長年プレーしてきた。今年7月に日本に復帰したばかりのベテランは、「カップ戦中にトライアンドエラーを繰り返して試合に挑めたこと」を決勝進出のポイントに挙げている。
特にグループステージ第2節・東京NB戦では、最後の最後で失点を許し、勝ち点を逃した。しかし第4節からは、決勝を含めて3試合連続無失点を達成。「相手の決定機のほうが多かった中でも失点しなかったのは、このカップ戦を通じて成長できたことを象徴している部分だと思っている」と、経験がチームの自信に繋がったと話す。
今回勝ち上がった2チーム以外にも、WEリーグに参入したばかりのセレッソ大阪ヤンマーレディースがAグループ2位と躍進。また大宮アルディージャVENTUSも得失点1の差でBグループ2位につけるなど、プロ化3年目となったリーグ全体のレベルが上がってきていることが感じられる結果となった。
■決勝を経て迎えるリーグ戦
©WE LEAGUE「カップ戦とリーグ戦はまた違った戦いになってくると思う」。決勝を戦い、新たな歴史を作った両チームの近賀、川澄ともに同じ言葉を口にした。
カップタイトルを手にしたものの「3強とウチでは、個人のクオリティーはそこまで追いついていない」と近賀は現状を冷静に見据える。その上で「チームで勝っていけるところがサッカーの良さ、女子サッカーの良さ。ウチはそういうところで今回優勝できたと思います。ここが本当にステップだということを、もう1回チームの中で意識してやっていきたい」と視線をリーグ戦に向けた。
新潟Lは今季、リーグ戦でのトップ3を本気で目指しているという。敗れた悔しさを噛みしめる川澄も「また新潟に帰って、しっかりとトレーニングを積んで。もっともっと自分たちの質を上げて『本当に強いチームになれるように』やっていきたい」と決意を込めた。
3強が意地を見せるのか。再び番狂わせは起きるのか。新風が吹いた3年目のWEリーグは11月11日に開幕する。
取材・文=伊藤千梅




