日本代表は28日、キリンチャレンジカップ2023のコロンビア代表戦に1-2で敗戦。最良の結果を得ることはできなかったが、試合では開始早々の3分にブライトンMF三笘薫が先制点を奪取していた。【取材・文=林遼平】
■欧州での成長を表す一撃
(C)Kenichi Araiどんなスポーツでも周囲の大きな期待に応えるのは簡単ではない。
日々どれだけのパフォーマンスを見せていても、日の丸を背負って戦う時はいつも以上のプレッシャーを感じるため、“大舞台で力を発揮できない”なんてことはよくある話だ。
ただ、そういった状況においても結果を残せるのが“スター”である。大きな歓声を受けつつ、それに応じた結果を見せる。そんな選手こそ、日本を代表するプレイヤーにふさわしい。
今回のキリンチャレンジカップで誰よりも注目を集めていたのは、世界最高峰のリーグと言われるプレミアリーグで飛ぶ鳥を落とす勢いで評価を上げている三笘薫だった。ボールを持てば多くの視線が注がれ、対面の選手を一人かわそうものならば大きな歓声が沸く。人一倍、日本のサポーターから期待されていることを三笘もひしひしと感じていた。
「欧州にいる時にはわからないサポーターの熱、報道の数を感じている。責任を持ってやらないとなと自覚していますし、周りがそういう目を向けてくれるのは選手として嬉しいこと。あとは、その注目の数に自分の実力が追いつけて行けばいい話なので、そういうふうにポジティブに捉えてやっています」
新生・森保ジャパンの初陣となったウルグアイ代表戦は、そんな期待に応えることができなかった。ロングドリブルやスルーパスでチャンスメイクする場面こそあったが、ゴールやアシストといった目に見える結果はゼロ。決定的なシュートを放つこともなかった。改めて、期待されながら結果を残すことの難しさを感じていた。
「(自身の結果よりも)注目される方が上回っているのが事実なので、それをより早く、もっと自分が強くなって追いつきたいという気持ちでいます」
コロンビア戦の前日、そう言って決意を新たにした三笘は、さっそくピッチで違いを示す。前半3分、右サイドを駆け上がった守田英正のクロスにファーサイドで反応。迫力ある飛び込みから打点の高いヘディングでゴール左に押し込んだ。欧州に渡りフィジカル能力を上げたことでパワフルなプレーが可能になった中、ドリブルだけではない三笘の凄みを表すゴールとなった。
■目指すは勝利に導ける存在
(C)Kenichi Arai川崎フロンターレ時代から“結果しか残さない男”と称されてきたが、ここまで期待値が上がってもしっかりと結果を残すことができるのは、プレーのクオリティはもちろんのこと心臓の強さを評価しなければならない。簡単ではないことを簡単にやってのけるのが三笘なのだ。
それでも、本人は何よりもチームを勝利に導けなかったことに悔しさを募らせた。ゴールこそ奪ったが、チームの新たな戦術の中で埋もれてしまうところもあり、まだまだこれではダメだと自身に矢印を向けている。
「やはり個人的な結果を残しつつ、チームの勝利に貢献していかないといけない。今日はチームの勝利に貢献できなかったので、得点後のいろいろなプレーを含めて、もう1回反省しながらチームとして落とし込めればなと思っています。今日の試合で言えば、もっとシュートチャンスに絡むところや、自分がそういうところまで持っていくことで流れを変えるプレー、1人剥がしてクロスを上げ切るなど、チャンスを作ることが必要だと思う。自分が求められているプレーとチームでやらないといけないプレーをうまく考えながら、勝利に貢献できるようなプレーをしていきたいなと思います」
世界を見渡しても突出した個を持った選手はたくさんいる。そういった選手がスーパースターになる条件は、やはり結果を残した上でチームを勝利に導ける存在になること。カタールW杯からの成長をしっかりと見せることができたからこそ、あとはここから登っていくだけだ。再びプレミアの舞台に戻り、どんな成長を遂げていくのか。三笘の進化が楽しみでならない。
