日本代表は23日のキリンチャレンジカップ2022でアメリカ代表と対戦。カタール・ワールドカップ(W杯)に向けた強化に注目が集まる中で2-0の勝利を飾っている。【文=林遼平】
■すでにW杯の対戦相手を分析
(C)Atsushi Tokumaru爽快感のある勝利だった。
カタールW杯前、最後の遠征をドイツで行っている日本代表は23日、キリンチャレンジカップ2022でアメリカ代表と対戦。前半から攻守に狙いを持った戦い方を貫き通した日本は、鎌田大地と三笘薫のゴールで2-0の勝利を飾った。チームの課題として上がっていた攻撃の共通認識という点でも回答を示す結果となり、W杯に向かう上で大きな意味を持つ快勝劇となった。
6月に行われた日本での代表活動。ブラジルやガーナ、チュニジアといったW杯出場国と対戦した中で、日本はなかなか狙いを持ったサッカーを披露することができなかった。実際、ブラジルとチュニジアには攻撃面で何もすることができずに敗戦。最後の試合を終えて三笘薫が、攻撃のディテールなどを含めて「チームとしてどうやって攻めていくか、決まりごとではないですが、いろいろなものを持たないといけないと思います」と語ったように、チーム全体で確かな型を作ることの是非が問われていた。
迎えた今回の合宿ではミーティングからすでにW杯の対戦国を分析。ドイツやスペインといった格上と戦っていく中で、チームとしてどういったサッカーをしていくかが打ち出された。そんなW杯仕様と言っていい戦い方がどんなものになるのか。アメリカ戦の焦点はそこに注がれていた。
■強烈なプレスから明確な攻撃の道筋
(C)Atsushi Tokumaru試合が始まって見えたのは、非ボール保持での戦い方の徹底だった。相手がボールを保持することを理解した上で、4-4-2のブロックを構えながら、ミドルサード付近から強烈かつ連動したプレッシングをかけていく。前線の前田大然と鎌田大地がスイッチとなり、そこに連なる形でプレスをかけ、ボールを奪うまでのメカニズムが構築されていた。
加えて、ボールを奪った後の攻撃もより明確になった。縦に早く行ける状況ならば素早くゴール方向へ。鎌田と久保建英はローテーションしながらボールを受け、伊東や前田は鋭い抜け出しを試みる。速攻と遅攻の使い分けもスムーズで、そういった狙いの中から1点目も生まれている。
また、相手が戦い方を変えてきた時の準備もしっかりハマっていた。相手が途中から3バックになってボールを動かす際にも「タイミングよく純也やタケが相手の3バックに対して行くところはチームとして持っていた」(遠藤航)。ピッチ内で修正を続け、柔軟に対応できたこともプラス材料だ。
■「なぜできたか」の整理が重要
(C)Atsushi Tokumaru実際、W杯で戦うドイツやスペインはアメリカ以上にボールを持ち、日本のプレスをかいくぐる術をいくつも持っていることだろう。ただ、そういった相手にどうやってボールを持つかではなく、どうやって守りながらゴールを奪いにいくかという思考のもとで回答を出したのは前に進んでいることを証明している。
「チームとしてどういう形でボールを奪いにいくのが良いのか。これまでのアジア予選や6月シリーズのW杯に出てくるチーム、W杯で優勝できるようなチームと対戦した中で、我々がより良い守備から良い攻撃にという部分で、理想は高い位置からハイプレス、ボールを失ったらボールを奪い返すということを考えつつも、いい距離感でコンパクトブロックを作って(奪いにいく方が)選手たちが持っているパワーがより狙いを持ってボールを奪うことにつながる。(また、そこで)攻撃にいけるように選手たちが奪いどころをよく判断してくれて、相手からボールを奪う機会も多かったと思っています。どこでボールを奪うかは、前線の選手と後ろと詰めていくことで、より選手たちの良さ、守備の良さ、攻撃の良さも発揮できるようになると思います」(森保一監督)
ただ、言えることはあくまでアメリカ相手にうまくいっただけのこと。「なぜできたかを明確にして、それを意図的に次のゲームも出していけるようにしっかり分析していきたい」という吉田麻也の言葉がすべてを物語っている。今日の試合をベースにして、ここからどれだけ詰めていけるか。中3日の27日に行われるエクアドル代表戦のパフォーマンスを楽しみに待ちたい。
