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【コラム】川崎フロンターレ、J1王者と「勝ち点差2」の意味…主力の欧州移籍、チームの停滞、現状への慣れ

 2022シーズンの明治安田生命J1リーグは横浜F・マリノスの優勝で幕が降りた。川崎フロンターレはリーグ終盤に猛追したものの、勝ち点差2で及ばず2位でフィニッシュ。過去2年の圧倒ぶりが鳴りを潜めた今季、優勝を逃した要因とは?【取材・文=林遼平】

■ハイレベルな競争の喪失

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 最終結果を見れば、ほんの少し足りなかっただけかもしれない。ただ、2位という結果は「年間を通してのもの」(鬼木達監督)。川崎フロンターレが挑んだ3連覇への2度目の挑戦は、またしてもあと一歩のところで儚くも散った。

 昨シーズンの段階ですでにチームには綻びが生じていた。

 夏の移籍市場で田中碧と三笘薫が移籍。チームの主軸二人が抜けたことで、昨季終盤はこれまでのような相手を圧倒するサッカーではなく、我慢強い守備と勝者のメンタリティーによる勝負強さによって勝ち点を積み上げるに至っていた。

 結果的に連覇を達成することはできたが、その時点でかつてのように自分たちから主導権を握っていくサッカーが影を潜めていたのは周知の事実。なおかつ昨冬の移籍市場で旗手怜央が欧州へ。主力級の相次ぐ移籍により、3連覇や複数タイトルを目指す上で補強の必要があることは誰の目にも明らかだった。

 だからこそ、シーズン前の補強が重要だったのだが、そこで大きな変化を促すことができなかった。宇佐美貴史の獲得失敗から方向転換を求められたチームは、チャナティップや瀬古樹らを獲得するも、J1の超一線級と呼べる選手の加入はなし。若手を多く加えたが、チームに新たな刺激を与えるような選手の補強はなかった。

 開幕時からジェジエウがケガによって欠場することをわかっていた状況でCBの補充はなく、日本代表にコンスタントに呼ばれ始めた山根視来の代役も不在。その中で過密日程をこなしていけば、どこかでコンディション不良の選手やケガ人が出てきてしまうもの。その上、夏の移籍市場では選手の放出はあっても獲得はなし。近年、川崎Fを支えていたハイレベルな競争が少しずつ失われてしまった。

 その実態は最終節を見れば明白。スタメンから途中交代までピッチに立ったのはすべて昨年から在籍している選手たち。既存戦力の積み上げはできたかもしれないが、新戦力という点でチームにプラスがもたらされることはなかった。そういった点を踏まえても、補強の失敗がチームの停滞を生んだことは否めない。

■「どこまで一つの敗戦に強い想いを持てたか」

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 一方で、補強とは別の目線で考えるならば、選手たちの突き上げがなかったことも指摘する必要がある。前述した新戦力や若手が主力に食い込んでいくようなパフォーマンスを残すことができたか。そう聞かれれば、頷くことはできない。

 鬼木監督は就任当初からしっかりとした自身の基準の下、攻守にそのレベルに達しないものはピッチに立たせないタイプの指揮官だ。それは近年の選手起用を見ていても理解することができ、最終節の時点で新たな選手たちがメンバー入りできなかったことは基準になかなか達していないことを意味している。監督の考えを変えさせるような選手が現れなかったのだ。

 これは先ほどの話につながり、結果、選手の数はいるものの、レベルの高い競争が生まれず。スタメンの選手たちが脅かされるような状況を作り出すことができなかった。そうして少しずつ、現状に慣れていってしまったのだ。

「終盤戦に比べて(中盤戦くらいまでは)どこまで一つの敗戦に対して強い想いを持てたかなと。試合に敗れた時の温度が昨年と比べてどうだったんだろうと、正直、思うところはあります。試合後に話す内容もそう。勝つことを目標としているのか、勝った上で内容を突き詰めていくのかというところの差もあったと思う」(山根視来)

 終盤戦の戦いや最終節の勝利は感動的なものだった。だが、リーグ戦は1つの勝利によって結果が決まるわけではない。チーム全体のレベルアップができなかった時点で、川崎Fの優勝は現実的ではなかった。

 それでもリーグ戦が今年で終わるわけではない。今季の失敗の要因をしっかりと分析し、来年につなげること。それこそが次なる覇権奪回への糧となる。

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