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【コラム】今季すでに4敗…川崎フロンターレでは何が起きている? ケガ人や主力の流出だけではない不調の要因

 川崎フロンターレは明治安田生命J1リーグ第8節で名古屋グランパスと対戦し、1-2で敗戦。近年、毎年のように優勝候補と見なされてきたチームは今季、これまでになく苦しい戦いを強いられている。【取材・文=林遼平】

■「弱気な部分が出てしまった」

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 2勝2分4敗の13位…。王座奪還に向けて新シーズンに入った川崎Fだが、完全にスタートダッシュに失敗したと言っていい。若返りを図りながら新たな戦術的思考を導入したものの、なかなか結果もついてこず。上位争いに絡むことなく、ここまで成績が落ち込んでいることは、近年の川崎Fを見ていた人からすれば、物足りなさを感じるのも無理はないだろう。

 15日に開催された名古屋との一戦も、後半に追い縋ったが敗戦に終わった。全体を通しても後方からボールを動かしていくものの、攻撃の迫力不足は否めず。名古屋の守備の強度の高さはもちろんだが、単純な技術ミスからボールを奪われてはカウンターを浴びた。

「最初の失点から少しずつ弱気な部分が出てしまった」と鬼木達監督が振り返り、「先制点を与えてプランを崩された」と脇坂泰斗はうまくいかなかった要因を語ったが、今年はこういった状況が続いている。点を取りにいかないといけないという状況や退場者が出て追い込まれた状況に陥ると攻撃に迫力が生まれ、通常時には逆に攻めあぐねてしまう。そんな展開が多くなっている。

 これは今季ビルドアップに変化を加えたことが少なからず影響を与えている。これまではあまり約束事を作らない方だったが、多少なりとも約束事を作ったことで、“相手を見て”サッカーをする比重が薄まった。

 それが選手たちの個人戦術の部分にも影響を与え、いつものポジション取りが変化を意識するあまり取れなくなったり、状況判断に多少のズレが生まれたりと、川崎Fで言う“目が揃わなく”なってきているのだ。もちろんケガ人が多かったり、主力選手が移籍してしまったことも要因の一つだが、ここはより擦り合わせていく必要がある。

■呼吸の合わない攻撃

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 名古屋戦にしても攻撃のビジョンが揃わない場面が散見していた。各駅停車のパスが増え、ボール回しにもテンポが生まれない。ゴールまでのビジョンを描いて攻撃を繰り出そうにも、周りとの呼吸が合わずにシュートまでいけない、といった場面が本当に多かった。縦にボールをつけたり、相手を背負っていてもボールを出す勇気はもちろん必要だが、それ以上にどうやって攻撃を完結するのかといったビジョンを合わせ、再現性のある形を繰り返していかないといけない。

 そこを解決していくためにも、やはりトレーニングでいかに詰めていくかが今後への鍵となる。試合後、鬼木監督はこう語った。

「一つは走ること。整う前に攻めること。トレーニングの中では走ったり、背後に行ったりと、良いシーンがいっぱいある。だけどゲームになるとボールを大事に捉えすぎてしまうところがある。走る回数をもっと増やさないと相手は崩れないですし、止めてパスだけではなくてワンタッチで入っていく、ワンタッチで背後を突くことも必要。それをやれば随分と変わってくると思うので、その繰り返しだと思います。あとはやはりメンタルのところ。強気でやり続けられるかどうか。カウンターがあってもそれを食い止め続ければいいですし、相手は何が嫌なのかを理解できれば、もっと怖い攻撃ができるのかなと思います」

 “強気”という言葉がポイントになるが、これは「ミスを承知でパスを出していけ」ということではなく、「自分たちの戦いに自信をもってやっていけるか」を示している。なかなかゴールが生まれなかったり、勝ち星に恵まれていなかったりすると、より慎重になってしまうもの。そうではなく、自分たちらしくボールを動かしてゴールに向かっていけば得点が取れるという思考を持っていきたい。

「トレーニングでやってきたことは嘘をつかない」と証明してきたのが、ここ数年の川崎Fである。普段の麻生グラウンドから多くのコミュニケーションを取り、自分たちのやるべきことを明確にしてピッチに立つことで、勝利に突き進んでいく姿を見せてほしい。

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