日本代表は6月、強化試合としてキリンチャレンジカップ2022、キリンカップ2022の計4試合を戦った。また同時期、スペイン代表はUEFAネーションズリーグを戦っており、両チームではカタール・ワールドカップ(W杯)に向けたさまざまな確認が行われている。
本大会のグループEで同居する日本とスペインは日本時間12月2日の第3節で激突する予定だが、ベスト8以上を目標に掲げる日本にとってグループ最終節は勝たなければいけない状況となっている可能性も小さくない。6月の両国の試合だけでなく、これまでの活動も追い続けてきたスペイン紙『as』で試合分析を担当するハビ・シジェス氏に、日本vsスペインをシミュレートしてもらった。
■チュニジア、ブラジル戦で悪癖露呈
(C)Getty imagesW杯まで、あと5カ月。まだ余裕があるって? そんなことはまったくなく、本大会までの準備試合は一戦をこなす毎に、さらなる重要性を獲得している。この6月の日本がどういう状態にあったかというと……これまでと同じだ。言葉通りチームとしてはまとまっていて、長所も短所もある。日本の戦術はしっかりと設計されており、クオリティーのある選手たちも豊富だ。
だが、過去のミスがその競争心を削いでしまう悪癖も一向に変わらない。チュニジア戦で味わった屈辱やブラジル戦の煮え切らない敗北は、日本がカタールで本当に輝くために、もう一歩を踏み出さなければいけないことを明確にしていた。
W杯でドイツ、そして私の国スペインと同組になった日本は、自分たちのベストを引き出さなければグループ突破のどんな可能性も手にできない。そのベストはパラグアイおよびガーナ戦(ブラジル戦でもほんの少し)で目にすることができた。森保一はそれらの試合でも出場メンバーをいじっていたが、大切な瞬間(ブラジル戦とチュニジア戦終盤)にはここ数カ月間、信頼していた選手たちをピッチに立たせていた(守田英正や冨安健洋らコンディション不良の選手たち、酒井宏樹、大迫勇也を除いて)。
日本はその瞬間、集団としても個人としても良いシグナルを出している。吉田麻也の相手DFラインの裏を狙うロングボール、とりわけ堂安律が際立っていたサイドチェンジ、原口元気、田中碧、鎌田大地の相手SB&CBの間を突く動きは、日本のポゼッションにダイナミズムを与えていた。これらは日本の武器になり得るものだ。
■スペインはDFラインへの圧力を苦手とする
(C)Getty images例えば、本大会のスペイン戦を想定してみようか。ルイス・エンリケのチームはボールを奪われたらすぐ奪い返すハイプレスを絶対に放棄しない。日本がそんなスペイン相手に成功をつかみたいなら、その分だけ前に上がる彼らのDFラインを揺さぶらなければならない。現にスペインは6月のネーションズリーグ4試合すべてで、センターバックとサイドバック全員がそうした状況に手を焼いていた。
また日本のもう一つの長所として挙げられるのが、相手の守りが手薄となったサイドで見せる継続的な攻撃だ。伊藤純也や三笘薫はインサイドハーフがボックス内に侵入したり、逆サイドのウイングがフィニッシュを担ったりすることで決定機を導く。日本は、そうした動きはすでに物にしている。0-3で敗れたあのチュニジア戦でさえも、伊東の個人技をゴールに昇華する可能性があったのだから。またブラジル戦でも森保は、ヴィニシウスのお粗末な守備を狙いどころとして伊東を何とか生かそうとしたものの、その試合はチーム全体の攻撃がてんでダメだった。
サイド、やや中央に寄って形成されるトライアングルも日本にとって有用だ。ガーナ戦、山根視来が前に上がって、久保建英&堂安との連係から3人でゴールを陥れたことは、頭に入れておくべき事実だろう。日本に技術的クオリティがあることは明白であり、限られたスペースでプレーし、どんなライバルをも打ち破ることができるはず。スペインのように相手陣地で守備を展開しようとするチーム相手であれば、なおさらだ。そしてスペインを自陣まで後退させたときには、少ないボールタッチでサイドから切り崩さなければならない。
今回の6月シリーズで点取り屋となったのは堂安と三笘。伊東は議論の余地などない絶対的な選手だが、彼らもスタメン候補に名を連ねている。技術が高く、粘り強く、次のプレーが予測できない。クロスのタイミングもゴール前での正確なプレーも素晴らしく、互いに向けたサイドチェンジも完全に分かり合えているようだった。久保が森保からの信頼を徐々に失いつつあり、なおかつ中央をプレーポジションとしている状況で、彼ら2人の存在により直接的な影響を受けるのは南野拓実か。
また堂安はパラグアイ、ガーナ戦でボール奪取力も見せてが、それもスペイン戦で有用だ。スペインのビルドアップは両センターバックが前進し、両サイドバックが彼らと連係するために低い位置を維持し、GKウナイ・シモンがフリーとなる。外から中、中から外へのパスが繰り返されることになり、日本はそこで彼らを圧迫しなければならない。L・エンリケは相手のハイプレスに脅かされても、自分たちのやり方が最後には効果を持つと信じ続けるだろう。だからこそ、日本はプレスをもっと改善する必要がある。
キリンチャレンジカップとキリンカップの4試合で、日本のプレスはお世辞にも洗練されていたとは言えなかった。チュニジア戦では遠藤航がムサクニに背後を取られ続けていたが、スペイン戦では絶対にやってはいけないことだ。スペインでは1トップのモラタが下がってボールを受け、攻撃にリズムをつける。もしセンターバックが彼のプレーするスペースを潰せなければ、それは敗戦と同義になる。日本はブラジル戦でも、遠藤の両脇で非常に危険なボールを出されていた。
■ポゼッションこそが日本の本質
(C)Getty images日本の不完全さは繰り返すミスにも見て取れた。ミスはコンセプト的なものもあれば、個人の不注意によるものもあった。ブラジル戦の彼らであれば、勇敢さや大胆さを欠いている。その守備はしっかり組織されていたが、その代償にチームとしてのアイデンティティーが失われていた。確かに、彼らはブラジルと競い合ったと言えるかもしれないが、現実は敗戦が約束された一戦だった。
ブラジルのトランジションを恐れて、あれだけ後方に引き、身動き取れずにプレーしていればそう言わざるを得ない。そうやって試合終了まで過ごそうとしても、最後にはいつもの不完全さが顔を覗かせてしまう。チュニジア戦は前半こそ日本が上回ったものの、吉田が後方に走らされるようになり自滅した。日本のセンターバックは後方ほか、サイドに出て守ることも苦手としている。スペインのように両ウイングが開き、中央にスペースを生み出そうとするチームを相手にするとき、一貫して中央にまとまって守ることが大切になるだろう。
その一方、日本はビルドアップでも重大なミスを犯してきた(パラグアイ戦の伊東、ガーナ戦の山根、ブラジル戦の不用意なボールの奪われ方……)。そうしたミスの責任は森保ではなく選手たち自身が背負うべきであり、フットボールのトップレベルでは何度もしていいミスではない。
そして日本は彼らのフットボールからポゼッションを失うわけにはいかない。それこそが日本の本質であり、そこに背くことは許されないのだ。今のままではスペイン、またドイツと、前に出て守備をする2チームの餌食にされてしまうだろう。日本の攻撃はセンターフォワード(大迫、浅野拓磨、古橋亨梧、上田綺世、前田大然)のポストプレーが重要になってくる。マークを外して深みを取る動き、手薄なサイドを攻めることも、また然りだ。
カタールは日本にとって一つの行程ではない。彼らは今大会でこそ、擁する選手たちの才能にふさわしいパフォーマンスを見せなくてはならない。しかしながら日本を見続けていると、どうしても停滞感も覚えてしまう。彼らは間違いなく成長を果たしており、競争力も備わってきている。が、すべてが完全な代表チームには、決してなれないという印象もあるのだ。不完全なままで妥協してはいけない。日本代表は、もっと先へ行けるチームのはずだ。
文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎
