昨夏に完全移籍加入したハダースフィールド(チャンピオンシップ=イングランド2部相当)での初年度を終えたDF中山雄太。リーグ戦第19節のサンダーランド戦で負傷の憂き目に遭ってからシーズンの残りをリハビリに充てることとなり、正式に招集されていたカタール・ワールドカップ(W杯)の日本代表参加も見送ることとなったが、26歳のユーティリティプレーヤーは決して下を向いていない。【取材日:6月5日/聞き手=上村迪助(GOAL編集部)/取材協力=アシックス】
■対人で実感した英国の特色
――昨夏にイングランドへ移りましたが、ピッチで感じたことはありますか。
ものすごくインテンシティの高いリーグだと思いましたし、僕自身そこにアジャストするのが最初は苦労するなというイメージで入り、その通りでした。その通りだったからこそ入りやすかった部分でもあります。イングランド2部ですが、本当にレベルの高いリーグで、自分が求めたレベルだったので、すごくやりがいのあるリーグだなと思いました。
――オランダ、Jリーグとの違いを特に感じた部分をお教えください。
繰り返しになりますけど、インテンシティはすごく高い。1試合通しての疲労度はオランダ、あるいはJリーグにいた頃よりもだいぶ高いです。あとは対人の部分ですごく良い選手が多いですし、ポジション柄相手チームの一番のストロングの選手と戦う機会がやっぱり増えたので、そこが一番僕の中では大きい部分かな、と思います。
――試合によってCBやSBを務めましたが『相手のエースを止めろ』という期待を受けていたのでしょうか。
そこの意図は直接的には言われないですけど、どのポジションでもやれると思っています。どのポジションで任されたとしても、マッチアップする相手選手には負けてはいけないですし。僕の特長を理解してもらったうえで、自分も任されたポジションで100%やるっていう形が表れたのかなと思います。
――色々な変化を感じる中で“イングランド仕様”に変えていった部分はありますか。
対人のスキルです。特にVARもありませんし、皆さんがよく言われるイングランドの笛っていうのもやっぱりあるので。ファウルの基準がすごく……取るところを結構流すこともあるというのは、すごく感じました。本当にそこはより対人、戦うという部分では大きく自分がこれまでいたリーグとは変わってきたのかなと思います。(チャンピオンシップは)そういうところを求めた先だったので、本当にすごくやりがいのあるリーグだなと感じています
――以前のリーグではファウルになるような場面でも、行かなければやられてしまうということもあるのでしょうか。
そうですね。特にボックス内は迫力というか、最初は押してもビクともしない選手がいたので。やはりそこは自分がいたオランダ、Jリーグとは違う部分かなと感じました。そこで自分自身の伸びしろを感じる機会は多かったと思います。
――これまでとの違いというところで、ピッチ外に関してはいかがでしょうか。
サッカーは世界的にやっぱり人気スポーツで、(これまでのリーグでも)ファンの方も熱いですけど。イングランドはよりサッカーに対して熱い気持ちを持っていて、本当に生活の一部だなと感じます。その中でサッカーをできていることは喜びですし、本当に楽しさを感じながら毎日できていると思います。
■カタールW杯逸も次回大会で「歴史を作る」
――昨年11月に負傷してしまいましたが、現在の状態はいかがでしょうか。
今はすべてが順調にきていて、もう少しでピッチのチームトレーニングに入っていけるかなという状態です。
――リハビリの中で変化した考えや改めて見つめ直したことはありますか。
特に大きくはないですけど、考える量はやっぱり増えました。一番はケガからの復帰が大事で、逃したW杯の直後から目指すものは次回大会で、いかにそこで活躍できるかというのを常日頃考えて取り組む、ということの連続でした。今もその過程の一部ですし、もうケガがあったということよりも、これからどうしていくかということにずっと意識がいっています。
――カタール・ワールドカップ(W杯)本大会のメンバー選出直後の長期離脱発表となりましたが、差し支えなければ当時の心境をお聞かせください。
落ち込むこともなく、もう出られないことは決まっていたので。悔しがることでケガが治るわけでもなかったですし、本当にケガした瞬間から、次回大会に向けてどうなっていくかというところに意識が変わっていました。W杯に出られなかったことは残念ですし、応援してくださった皆さんの期待に応えられなかったのはすごく悔しかったですけど、だからこそ次回のW杯ではその思いを背負った上で、しっかりと活躍したいと思います。
――溜め込みすぎずにすぐに矢印が前に向いたと。
そもそもケガをしたことに対して落ち込むこともなかったですし、むしろ今はケガして良かったと思えるようになってきています。あとは結果がついてくればそれを根拠のある事実に変えられるので。今はもうあのケガがあったからこそ今があると、それが今後より強い気持ちになるように、良い未来を築けるような日々を送れれば、と思います。
――日本はカタールW杯で快進撃を繰り広げましたが、どのようにご覧になられましたか。
自分はすごく面白い立場だったと思います。いちファンでありながら、メンバーにも入っていたので。そこでW杯を逃した身として何かこう、特別な立場で応援していたことも正直あります。日本の快進撃を通して嬉しい気持ちと、本当に元気というか、自分も頑張ろうという刺激はすごくもらいました。
――その中で代表への思いを再確認、あるいは変化した部分はありますか。
W杯の間は、本当に日本代表を楽しんでいた感じはありますけど、やはり日本代表の最後の結果(ラウンド16でPK戦の末、クロアチア代表に敗戦)を通して悔しい結果はありました。僕自身が今度はそれを次回大会で塗り替えて、しっかりと歴史を作る一人の選手になりたいと思っています。
■来季チームの目標はプレミア昇格
――過去の話をお聞かせください。サッカーを始めたきっかけは覚えているでしょうか。
サッカーを始めたきっかけは、姉と兄の影響で始めてそこからサッカーが好きになって、どんどんのめり込んでいった形です。まあ本当にサッカー一筋で来たな、と思います。
――サッカー少年だった頃、スパイク選びで重視していたことはありますか。
僕は『スパイクを中学校に入るまで履くな』と兄に言われていたので。そこは僕自身よりも家族だったり、兄だったりが気を遣ってくれていたと思います。なので、あまり何を履く、というよりももう何でもいいから履いてサッカーができればいい、と思っていました。今思うと小さい頃は靴をあまり重要視してなかったのかなと思います。
――そこからプロの世界に入り、どのようにこだわりを持つようになりましたか。
今はもう一転して、スパイクはすごく意識しています。一番意識しているところでは、フィット感や履きやすさを大事にしています。やはりサッカーは色々と考える競技で、そこで問題を抱えたりしながらやるということがすごくマイナスだと思っているので。本当に履きやすさとフィット感が一番僕の中ではプライオリティが高いかなというふうに思います。
――アシックスの『DS LIGHT X-FLY 5』を現在着用している理由もそこを重視した結果ということですね。
そうですね。本当に行きついた先がそこでしたし、フィット感についてはシリーズ毎にすごく満足しています。その進化を止めない、あるいは追い求める姿勢にもすごく刺激を受けています。本当に進化する度により良いものになっていくな、と思っています。僕はスパイクに足を通す最初の印象で(フィット感を)感じますが、毎回毎回良いものだなと思いながら、本当に進化したものを改めて履いた時に、『あ、また良くなったな』と感じます。
――どのようなプレースタイルの人に『DS LIGHT X-FLY 5』をお勧めできますか。
どのタイプでも合うと思います。(プレーの)特長というよりも、長く楽しくサッカーをしたいなら、アシックスさんのスパイクを求めた方がいいと思います。
――今後についての話題に移らせていただきます。ハダースフィールドの来季昇格に向けた期待感は感じますか。
来シーズンへの気持ちというのはすごくみんな強いです。昨シーズンで言えば、プレーオフまで行ってプレミアリーグの本当に手前まで行った惜しいシーズンでした。今季は逆に残留するために苦しいシーズンを送ったという、両局面を感じた選手たちが多いので。来シーズンは上位の方で、苦しいというよりも難しい戦いを上位の順位でできたらいいな、と思っています。僕自身もしっかり復帰し、その目標を果たす選手の一人になれればと思います。
――さらにその先の目標や目指すものをお聞かせください。
日本代表への気持ちはやはり強くなっているので、第一にそこに一日でも早く戻りたいという思いはあります。それはやはり自チームでの活躍があってこそだと思うので。来シーズンを終えた頃にはプレミアリーグにしっかりと昇格して、レベルの高い最高峰のリーグでやるという強い信念をもってしっかりと戦っていきたいと思います。
――最後にファン・サポーターの方々へのメッセージをお願いします。
いつもいつも、温かい言葉やサポートは頂いていますが、ケガをしたからというわけではないですけど、リハビリの期間に本当にパワーになる言葉であったり、エールであったりをすごく感じることが多かったです。皆さんのそのエールを力にし、今度は自分がしっかりとプレーを通して皆さんにパワーやエールを届けられるような活躍をしたいと思います。本当にありがとうございましたというところと、これからもしっかりと頑張っていきますというところをお伝えしたいと思います。
――ありがとうございました。
ありがとうございました。
【Profile】
DF 中山 雄太(なかやま・ゆうた)
1997年2月16日生まれ、26歳。茨城県出身。左利き。柏ユース-柏-ズヴォレ(オランダ)を経て2022年夏にハダースフィールド(イングランド)へ完全移籍。世代別日本代表で主軸を務め、2019年6月にフル代表デビュー。カタール・ワールドカップ(W杯)アジア3次予選では7試合に出場し、本大会進出に大きく貢献した。J1通算76試合6得点、エールディビジ通算79試合5得点、チャンピオンシップ通算14試合2得点。(6月30日時点)


