森保一監督がカタール・ワールドカップ(W杯)後も続投となった日本代表は、24日のキリンチャレンジカップ2023でウルグアイ代表と対戦。1-1の引き分けで終える結果となったが、そこには確かにアップデートの兆しが見えていた。【取材・文=林遼平】
■「これまで通り」を許さない指揮官
(C)Kenichi Arai満員の国立競技場。対戦相手は南米の強豪・ウルグアイ。大雨に打たれたこと以外は、第二次森保ジャパンの船出にとって最高の舞台が整っていた。
振り返れば4カ月前、日本はカタールW杯でドイツ代表とスペイン代表を破りグループステージを突破。クロアチア代表に敗れてベスト16の壁を越えることはできなかったが、世界の強豪を相手にカウンターなどのボール非保持の戦い方を追求することで活路を見出し、確かな結果を手にするに至った。
ただ、一方で課題として噴出したのがボールを保持した時の戦い方だった。自分たちで主導権を握りながら相手の守備を攻略するという点において、チームとしての構築不足は明らかで、ボールを握っている時にいかに相手を崩していくかは今後の課題として残った。
果たして、迎えた新生・森保ジャパンの新たなスタートは、カタールW杯から前に進もうとする意志の見えた試合となった。
前日の会見で森保監督は「これまで通りという言葉でなんとなく戦うことは、これからのチーム作りのなかで新しいものを作っていくにあたって難しいことになる。同じことをやるにしても新しいものを作ることを忘れてはいけない」と語っていたが、日本はカタールW杯とは違いボールを保持しながら前進していくビルドアップを積極的にトライ。サイドバックが中に入ったり、ボランチが後ろに落ちて3枚回しでボールを動かしたりと、チームとしてのやり方を明確に用意することで相手を崩そうと試みた。
■課題を真摯に捉えての一歩
(C)Kenichi Arai結果としては、多くの時間で機能していたとは言い切れない内容となった。後方の選手がリスクを考えてなかなか縦にボールを入れられなかったことや、サイドバックとボランチの位置がファジーになり、中央で渋滞が起きてしまってボールを引き出せない時間があるなど、相手との兼ね合いも含めて最善策を見つけ出すことができなかった。それは中盤で先発出場した守田英正の言葉を聞いても明らかだ。
「トライはできたんですけど、やはりポジションが被ってしまったり、人数を増やしてビルドアップをしているにもかかわらず、ちょっと後ろ向きにボールを持つ時間が多く、GKを経由したり、結局蹴ってしまうシーンが多かった」
右サイドに入った堂安律も「サイドにはボールが入るけど、そこから少し孤立してしまってバックパスしかないという状態があった。そこは課題」と振り返るように、チーム全体で機能不全が起こっていたことは次に向けて修正していく必要がある。
それでも、この試合がポジティブに映るのは、多くの選手が口にするように「トライをしたこと」だ。前述したカタールW杯で見えた課題を真摯に捉え、さらなる積み上げのための一歩としてビルドアップから変化を加える。最初の4年間を経て、継続して森保監督が指揮を取ることになった中で、次なるステップを踏もうとする動きが見えたことは大きな進歩と言える。
今回の形が3年半後のW杯で使われているかはわからない。ただ、チャレンジしない限り、新しいものは生まれない。トライ&エラーを続けながら自分たちの形を確立していくことに意味があるのだ。
もちろん、あとはそこに結果が付いてこないといけない。28日に行われるコロンビア代表戦で今回の施策を継続することになるのか。それともまた違った試みをするのか。トライすることだけに執着するのではなく、やはり勝ちながら修正できるようにしていくことが、日本の進むべき道となる。
