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アジアカップ制覇のU-17日本代表でキラリと輝いた4選手。鮮烈FKのテクニシャン、鉄壁の主将ら

 2023年のAFC U-17アジアカップはU-17日本代表の大会連覇という形で幕を閉じた。準々決勝ではU-17オーストラリア代表、準決勝でU-17イラン代表、そして決勝でU-17韓国代表とアジアの列強を相手にいずれも3つのゴールを記録して快勝。チームとしての地力の高さと個人の技量の双方を見せた上での優勝となった。

 今回は大会を通じて特に目立つパフォーマンスを示した選手たち4名をピックアップ。紹介してみたい。【取材・文=川端暁彦】

■決勝で爆発した技巧派FW

 まずは何と言っても大会MVPかつ得点王にも輝いたFW名和田我空(神村学園高等部)だろう。神村のエースナンバーであり、ヨハン・クライフ由来の14番を背負った技巧派FWは、単なるテクニシャンとは違う、ゴールへ直結する道筋を知る男として輝きを見せた。

 ただ、大会全体でみれば、順風満帆どころか逆風のスタートだった。「初めて海外遠征でお腹を壊してしまった」と本人が悔しがったように、第1戦終了後に体調不良でダウン。練習からも外れ、第2戦では出場を見送られることに。ただ、悔しさをバネにできるメンタリティも名和田の特長の一つ。インドとの第3戦で復活の2ゴールを刻むと、「ここから点を取り続けて得点王を持っていきます」と笑顔で宣言してみせた。

 世界大会出場の懸かる大一番だった準々決勝のオーストラリア戦ではロングスローから流れてきたボールを押し込む“点取り屋”のゴールも記録。「うまく予測できた」と本人が言うように、DFに当たってこぼれたボールの行き先を察知した鋭い動きから、抜け目ないゴール。ボールを持ったときだけ輝くような選手とは異なる、よりゴールへの実効性を持った選手であることを示してみせた。

 そして最後は韓国とのファイナルでも爆発。準決勝ではジャンケンに敗れたFKを佐藤龍之介(FC東京U-18)に決められてしまい、「本当に悔しかった。自分も絶対に決められたということを証明したかった」と前半アディショナルタイムに力強いキック。「完全にイメージ通りだった」という見事な弾道を描いたFKは、日本の優勝を大きく近づける一発となった。

 そしてもう一発、鋭いパス交換からの中央突破での崩しは日本のチームとしての真骨頂。そこに「冷静にGKもみて決められた」という名和田の落ち着いたフィニッシュが光る見事なゴールで試合をほぼ決めることとなった。本人は「ハットトリックもできたのに、外し過ぎた」と全く満足していない様子で、「世界大会でも点を取りたい」と早くも視線を次のステージへ向けていた。

■貪欲な長身ストライカー

 その名和田と得点王を争いつつ、チームのエース、ターゲットマンとして機能し続けたFW道脇豊(熊本)も確かな存在感を示した大会だった。1戦目、2戦目と貴重な先制弾を頭で叩き出すと、オーストラリアとの準々決勝でも決勝点を突き刺してみせた。

「シュートは自分の武器だと思っている」と語るとおり、186cmの高さを生かすヘディングはもちろん、左右両足からの強烈な一発もあり、さらに「豊は動き出しが本当にうまい」(佐藤)とチームメイトも舌を巻く、ボールを引き出すセンスも備える。

 それだけに相手の厳重なマークに遭うことの多い大会となったが、「オーストラリアとかを相手にしても高さとかボールを収める仕事はできたと思う」と本人が語るように、タフな守備を見せる相手に対してもボールをキープ、あるいは空中戦で渡り合い、ターゲットマンとしても十分に機能してみせた。また韓国戦では厳重マークを逆手に取る形で相手DFを退場に追い込むなど全体に貢献度は高かった。

 ただ、本人は「決めなきゃ決めなきゃと思い過ぎてしまうのが自分の弱点。メンタルが課題だと思っている。Jリーグで点を取れていないのもそれが原因なので改善したい」と課題も意識する。こうした成長へのどん欲さも、道脇の持つ大きな魅力だろう。

■中盤のオールラウンダー

 中盤では佐藤龍之介(FC東京U-18)が「ちょっと替えが利かないものがある」と森山監督からも評される活躍を見せた。元より巧みな足技や戦術的なセンスには定評のある選手だが、「もっと決定的な仕事をしないといけない」と意識高く取り組み、今大会は要所でスペシャルなアシスト、ゴールを記録。無類の存在感を見せた。

「どこでもできるのが自分の良さなので」と語るように、トップ下から飛び出しても良し、アウトサイドでドリブルで仕掛けても良し、あるいは決勝で見せたようにボランチとして全体をコントロールするような仕事もこなせる現代的なオールラウンドプレーヤー。「2点しか取れなかったし、まだ満足できない」と意気込む、その先に期待したい。

■世界に目を向ける主将

 そして最後、やはりキャプテンのDF小杉啓太(湘南ベルマーレU-18)の名前は外せないだろう。大会を視察していた他国の関係者からも「あの3番の守備は凄いな! 」と驚かれたほどの守備の予測力と対応力、そしてタフネスは傑出しており、一対一の守備で破られたシーンは数えるほど。逆に阻止し、あるいは奪い取るシーンは数え切れないほどだった。

「本当に頼れるキャプテンで、ピッチ外のことは任せておけば大丈夫だった」と森山監督が語るように、リーダーシップの部分でも大きく優勝に貢献。陰のMVPはこのキャプテンだったかもしれない。

 もっとも、本人は「ビルドアップでのミスが多すぎた。世界大会までに絶対改善しておきたい」と自分の足りない部分に目を向ける。ここで満足しては終わりだということを、誰よりもわかっている様子だった。

「ここで終わりじゃない」というのは森山佳郎監督も強調した一つのキーフレーズ。チームとしての本当の戦いは11月に行われるU-17ワールドカップ(W杯)であり、個人としてはさらにその先の成長へ繋げられなくては意味がない。

 このチームの強さの秘密は、全員がそのことをわかっていることだったかもしれない。

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