日本代表は17日、カナダ代表との国際親善試合に臨む。カタール・ワールドカップ(W杯)開幕を目前にして、コンディション調整に重きを置いた一戦と目されている。【取材・文=林遼平】
■4選手の欠場が確定
(C)Getty images野戦病院とまではいかないが、初戦まで1週間を切った段階でチーム状況は決して万全とは言えない状況にある。
脳震とうの復帰プロトコルの最中である遠藤航と左足ふくらはぎに違和感を抱える守田英正はドバイ入りせず、ケガからの復帰を目指す冨安健洋は帯同メンバーにこそ入っているが、指揮官が起用しないことを明言した。これに体調不良で合流が遅れている三笘薫を含め、カナダ戦では4選手が欠場することが決まっている。
こういった現状を踏まえると、カナダ戦はこれまでとは違ったことをトライするよりも選手個々のコンディションを見極める試合になる可能性が高い。もちろん起用できる選手が限られるからこそ、システム変更や戦い方に変化を加える手もあるが、大会まで残り時間が少ない中、あっと驚くような采配は今までの道のりを振り返っても極めて考えにくい。時間限定で選手を起用しつつ、コンディションを上げていくことがチームの最優先事項となる。
■本大会で板倉、浅野が担う重要な役割
(C)GOALこの試合でチェック対象となるポジションはいくつがあるが、とりわけ注視したいのは主力不在のダブルボランチに入ることが予想される田中碧、柴崎岳のペアと、ケガからの復帰が不安視されていた中でメンバー入りを果たした板倉と浅野の二人だ。
前者に関しては、9月遠征でダブルボランチを組んでおり、そこからの改善が一つのポイントとなる。エクアドル戦では二人のバランスが悪く、最後までボランチがしっかりと機能する場面が少なかった。そこは互いに感じているところで、田中は「ボランチの関係性はチームにとってすごく大きなものになると思うので、声をかけながら調整していきたい」と口にし、カナダ戦でのプレーを見据えている。欠場が決まっている遠藤と守田が現在、絶対的な存在として重宝されているだけに、彼らの座を脅かすようなプレーを期待したい。
また、ボランチコンビ以上に注目すべきは板倉滉と浅野拓磨のパフォーマンスだ。板倉は負傷からの復帰を目指す冨安の穴を埋めたり、ボランチでの起用が可能だったりと、総力戦を戦う上でも重要な役割を担う可能性が高い。
それもあってカナダ戦は、「ゲーム感のところや体のコンディションのところを確認する」ことが今後に向けて大きな意味を持つ。ここで板倉に問題がないことがわかれば、ドイツ戦で冨安をぶっつけ本番で起用するリスクも無くなる。代表内で評価を上げてきた男のパフォーマンスに要注目だ。
板倉同様、浅野もカナダ戦でのプレーが本大会に向けて大きな指標となる。前線だけでなくサイドのハードワーカーとしても戦える献身性は、ドイツやスペインといったボールを保持するようなチームとの対戦において非常に重要だ。
「特に不安も心配もないですけど、本当に自分がいま100%の状況かというのはピッチでやってみないとわからない。ケガだけは絶対にしないようにして、その中でやれるだけのことをやりたい」と語るように、現段階でどれだけ走れるかをチェックすることがチームにプラスの影響を与えるはずだ。
あくまでテストマッチである。もちろん勝利すれば勢いに乗ることができるだろうが、すべてをさらけ出す必要もなければ、負傷するリスクを背負ってまでプレーを続ける必要はない。
「ワールドカップを総力戦で戦うためにチーム全体のコンディションを上げるところと、状態が不確定な選手のコンディションをしっかり見極めていきたい」とは森保一監督の言葉。チームとしてのコンセプトを確認した上で、誰も負傷者を出すことなく、一人ひとりのコンディションを上げていく。サムライブルーがカナダとの価値ある一戦に挑む。
