神村学園FW福田師王は第101回全国高校サッカー選手権大会の2回戦、山梨学院戦で1ゴールをマーク。3-2での勝利に大きく貢献したが、欧州挑戦が決まっている大器は歴史に名を刻む活躍に飢えている。【取材・文=川端暁彦】
■スーパーゴールも「悔しい試合」
(C)Atsushi Tokumaru来年1月からドイツの名門ボルシアMGへ挑戦する神村学園FW福田師王が、初戦となった12月31日の選手権2回戦で強烈な“一発”を叩き込んだ。
「日本で結果を残してから海外に行きたい」
大会前、そんな言葉を残していたストライカーは有言実行とも言えるゴールを叩き込んだ。1-1で迎えた前半39分、ハーフウェイライン付近で縦パスを受けると「良いターンができた」という反転から一気に加速。「スペースがあったのでとりあえず前に」という高速ドリブルから、詰めてきた相手DFを察知して最後のタッチを左に流しつつの左足シュート。GKのニアを鋭く破る逆足の一撃で、等々力競技場をどよめかせた。
もっとも、試合後の取材で開口一番にもらした言葉は、反省の弁である。
「個人としての得点力が全然足りなくて悔しい試合になりました」
シュート7本を記録して1得点という数字に本人は「60点か70点の出来」と悔しさをにじませる。このあたりもいつもの福田。有村圭一郎監督が「高校生だと『これができた』で満足する選手が多い中で、福田はどの試合でも必ず『これができなかった』を自分で見付けてくる。だからあれだけ伸びたんだと思う」と評するとおりである。
生まれ持った運動能力の高さ、得点感覚を備えている選手だが、努力によってその資質を磨いてきた。1年生のときにU-16日本代表へ抜擢されたが、「そこで何もできなかった」とショックを受けつつ、自分自身の改造を開始。「ケツを鍛える」ことで体のバランスを変えながら、プレーの改善にも繋げてきた。代表で教わったチューブトレーニングは、「疲れているとき以外は毎練習後に必ず」取り組んで成果を出した。
「ケツを鍛えることで足は速くなりましたね。1年生のときは50メートル7秒0くらいだったのが、6秒3とか2になりました。体重も54kgから70kgに増えています」(福田)
体を分厚くして体重を大幅に増やしつつ、スピードも増強。鋭いターンからスペースへのドリブルで相手DFを置き去りにして生まれたこの日のゴールは、そうして積み上げてきたものの成果でもあった。
■吉田麻也らにも相談して触発
(C)Atsushi Tokumaruもう一つの大きな特長であるゴール前での動き出しの鋭さも、後天的に磨いてきたもの。憧れのロベルト・レヴァンドフスキの映像も観ながら、より点を取れる選手になるための修練を重ねてきた。
まだ底を見せていないストライカーが今大会で狙うのは単なる得点王ではなく、「大迫(勇也)さんの得点記録(1大会歴代最多10得点)を超えること」。同郷のスーパースターを超える数字を積み上げることを目指す中で、まずは最初の1ゴールを叩き込むこととなった。
映像を通じて目の当たりにしたカタールW杯では、ドイツを訪れた際に会食をしながら相談もしていた吉田麻也や板倉滉といった選手たちの活躍に触発された。「本当に刺激になったし、絶対にあそこに立ちたいと思った」と決意を新たにもした。
「毎試合結果を残して早く(代表に)呼ばれたいし、日本を勝たせる選手になりたい」
今季は負傷に泣いて不本意なシーズンとなっていた福田だが、最後の最後に大きな爆発を見せての旅立ちとなるだろうか。
