今季から活躍の舞台をラ・リーガへと移したトーマス・ディレイニー。これまではブレーメンやドルトムントなど、ブンデスリーガで長く活躍してきたが、なぜスペイン挑戦を決めたのだろうか。
ここまでのセビージャでのパフォーマンスや適応の度合い、今季の目標などについて『GOAL』の独占インタビューで語ってもらった。
■セビージャの雰囲気は?
(C)Getty Images――セビージャ加入当初の1か月をどのように評価していますか?
いい感じだね。温かく迎え入れてくれた。ここにいていい気持ちだ。クラブのことがとても好きだよ。もちろんいくつか問題はあったけれど、とてもいい感じだ。
――ドルトムントからセビージャへの移籍を決意したのはなぜですか?
セビージャとの交渉を終える何週間か前だったと思う。どんどん話が進んでいくと、サッカーでは物事を進めるため、選手として少し無理をしなければいけないことがあるんだ。僕にとってこれが正しいステップだと思ったし、いい時期だと思った。だがその前にクラブ間での交渉があって、数週間かかった。その間僕は準備できていたよ。
――セビージャのこの交渉において、モンチ(セビージャのスポーツダイレクター)はどれほど重要だったのでしょうか?
モンチが重要だったかはわからないけれど、僕にとっては高いレベルでプレーできることは重要だ。セビージャが近年ラ・リーガや欧州で成績を残しているし、チャンピオンズリーグではないけれど欧州のトロフィーを獲得したことは大きなことだと思う。僕にとってはビッグクラブであることが重要だった。
――これまでプレーしたチームと比べ、ロッカールームの雰囲気はどうですか?
全体的にはこれまでのチームに似ているね。とてもいい関係や友情がある。皆の会話が全部わかるわけではないし、スペイン語をもっと上達しないといけないけれど、競争し合う環境になっていると感じるよ。選手たちはみな友達だけれど、スターティングメンバーの座をかけて4つのポジションを争っている。友達とライバルの間のいいラインをいつも築けていると思う。
――セビージャでプレーするようになってから、あなたが驚いた選手を教えて下さい。
いい質問だね。もちろん加入前から選手をたくさん知っていたよ。最初驚いたのは(ヘスス)ナバスのスピードだ。けれど、セビージャと割と最近対戦したこと(※2020-21シーズン・チャンピオンズリーグ)があった。当時試合のためにしっかり準備してきたし、そういう意味ではあまり多くの驚きはなかったかな。
――イヴァン・ラキティッチやフェルナンドといった中盤の選手とプレーしていますね。チームメイトであり競争相手でもある彼らとの関係はどうですか?
全員万全であれば、チームには中盤でプレーする選手がたくさんいる。プレーできないと落ち込む選手もいるだろう。けれど、僕たちはセントラルMFだし、お互いによい関係を作ってサポートしあっていると思うよ。誰かが怒っているとか、そう感じたことはこれまでないね。確かにロッカールームでそうなることはあるけれど、チーム全体で温かいサポートができているし、同時に競争し合う感じもあると思う。
■マドリーとの優勝争いで求められること
(C)Getty Images――ベティスとのダービー(コパ・デル・レイラウンド16)など重要な試合がある中、ケガに見舞われたことはストレスだったでしょうか?
もちろんそうだね。休暇から戻ってきてそのままケガをしてしまった。そして戦列に復帰しようとしているときにコロナウイルスにかかってしまった。コロナの後また筋肉の問題で後退してしまった。だから、とてもフラストレーションがたまったよ。
――前半戦では、セビージャダービーをすでに経験しました。どのような感想を持ちましたか?
そうだね、まずこれまでのキャリアの中で大きなダービーを経験していたことはラッキーだった。他のヨーロッパのダービーとは比較にならないけれど、コペンハーゲンのダービーも大規模だったし、もちろんシャルケvsドルトムントもね。そして今はセビージャダービーだ。期待通りのものだった。ホテルから外にでると何時間も手厚い後押しがあったことにとても感銘を受けたよ。試合前にちょっと眠りたいと思ったとしても、それは無理だ。サポーターがずっと外で歌っているからね。それがとても印象的だったんだ。あれを経験したことがないなら、ぜひ経験してみてほしいと思うよ。それから僕が緑と赤を区別しにくいということ(※ディレイニーは色覚異常を持つ)については、ベティス戦については問題なかった。だから次のダービーでもプレーできるよ。
――ラ・リーガでは2位ですが、首位レアル・マドリーとは6ポイント差となっています。昨シーズンタイトルを争ったあなたの経験をどう活かしますか?
ラ・リーガで、マドリーとバルセロナ以外のクラブがタイトルを獲るためにはラッキーでないといけないし、彼らが上手く行っていないシーズンを狙わないといけない。そういう意味では、今シーズンのマドリーは知っての通り上手く行っている。これまでほどのトップレベルではないかもしれないが、難しい試合を1-0で勝ってきている。だから難しいんだ。だから今集中しなければいけないのは調子を取り戻すことだね。最近の試合で6ポイントを落としてしまった。だからこそ、目の前の相手に集中すべきなんだ。
――シーズン序盤にチャンピオンズリーグから敗退してしまったことは残念でしたか?
ああ、そう思う。正直に言えば、僕らのパフォーマンスと結果の両方について残念な結果になったと言えるね。自分たちがいい状況にあったことも考えれば余計にね。組合わせもよかったし、対応しなければならないつまづきの一つだったね。
(C)Getty Images――リール戦でのPKのことはかなり考え込みましたか? それともすぐに忘れられるほうですか?
僕らはチームだ。1対1で戦っているわけではないが、結果として1-2で負けてしまった。あのグループで取れるポイントはたくさんあったと思う。だから、ノー、ノーだ。
――今後はヨーロッパリーグで戦うことになります。クラブやファンにとっては特別なタイトルでしょう。
ああ、もちろん。スタジアムを歩いてミュージアムを見ればトロフィーがたくさんある。特に今年もセビージャでそれが再現される。もちろんそれも特別なことだから、決勝に行ってセビージャの国際大会でのストーリーを祝おうじゃないか。チャンピオンズリーグで敗退したことを引きずるのは好きじゃないし、そうできたら嬉しいね。残念な結果になってしまったけれど、僕たちの前にはとても大きな道が開けていると信じているよ。
――決勝がホームのサンチェス・ピスファンで行われるというのも特別嬉しいことではないでしょうか?
いや、それ自体が特別嬉しいわけではないね。ケーキの上に乗ったいちごのようなものだと思う。その条件があってもなくても、決勝でプレーしたいという気持ちに変わりはないしね。開催地がイスタンブールでもミュンヘンやロンドンでも、決勝に進みたいということについては変わらない。場所は違っても、それまでの道のりは同じだよ。
――これまでの決勝戦をテレビで見たりして、覚えていることはありますか?
デンマークでプレーしていたときに見たのは特に覚えているよ。たしかクリスティアン・ポウルセンがプレーしていたよね。何かの試合から家に帰る途中のバスで見たのを覚えているよ。あれが僕にとって一番記憶に残るヨーロッパリーグ決勝戦だね。
■今季の目標は「トロフィー」
Getty Images――ドルトムントでは怪物と言われるアーリング・ハーランドとともにプレーしていましたね。
アーリングはファンタスティックだし、フットボールの面ではプレーの誤差が狭いんだ。将来彼について知られていくのは、彼のうまくなりたいという熱意だと思う。ヘディングがもっと上手い選手や、彼より上手いフィニッシャー、タッチやドリブルが上手い選手はいるかもしれないけれど、彼ほどハングリーな選手は見たことがないし、それこそが彼を良い方向に導くんじゃないかな。
――彼とはラ・リーガで対戦したいですか? それとも互いに離れたままのほうがいいですか?
いや、もう一度彼と対戦したいね。彼は驚くべき能力のあるストライカーだから、確実に手痛い目に遭うだろうけれど、アーリングがトップリーグにいるのを見たいね。でも、正直に言えば僕はドルトムントでのプレーが好きなんだよね。彼が中心的な役割を担っているから、将来的にどうなろうと、彼はトップでなければならないと思うよ。もちろん彼がラ・リーガに行こうというなら僕らにとって少し厳しいことになるかもしれないけれど、それでも彼との対戦は楽しみだね。
――最後に、今季はあなたにとってセビージャでの1年目ですが、どのような結末を迎えていたいですか?
どうなってもトロフィーがほしいね。それが僕がここにいる理由だからね。僕たちの順位や、マドリーと争わないといけないということを考えると難しいことだ。マドリーはマドリーだからね。でも、踏ん張ってシーズンが終わるまで彼らにプレッシャーをかけないといけないね。ヨーロッパリーグでは、正直に言えば僕たちは優勝候補の一角だと思うし、いい結果を出したい。トロフィーは僕らが良い結果を出し続ければ手にすることができると思う。僕たちは謙虚であり続けて、実力以上のパフォーマンスを出すために挑戦するよ。


