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「チャレンジしていることは間違っていない」柏レイソル汰木康也、左WBでの試行錯誤

今季よりヴィッセル神戸から柏に完全移籍で加入したMF汰木康也は0-2で迎えた62分に左ウィングバック(WB)で途中出場した。柏でチャレンジしている新ポジションで加入後初出場を飾った30歳は、チームとともに成長しようとしている。

チームに足りなかった共通意識

「みんな若いし、おとなしい選手が多いから、声掛けもちょっと少ないなと思っていたんですよね」

ゲームを支配し、シュート数でも上回りながらも千葉に1-2で敗れ、開幕5戦4敗となった直後のミックスゾーン。今季より柏に加入した汰木は穏やかな表情で、バスに乗り込む仲間たちを見つめながらつぶやいた。

甘いマスクのせいで忘れてしまうが、今年で31歳を迎える。昨季まで在籍した神戸でJ1連覇などを成し遂げた背番号16は、浦和レッズ時代にも共闘したリカルド・ロドリゲス監督の率いる柏で、自身の経験を還元しようと努めていた。

「レイソルも個がすごいですが、神戸にはスーパーな個にプラスしてチームとしての共通意識がすごくありました。ピッチ内でもコミュニケーションを取れていて、それで戦術が成り立っていたんです。神戸はその意識があったから強かったと勉強させてもらいました。だから共通意識を持ってプレーすることが一番大切だと、自分も積極的に伝えていきたい」

フィジカルを重要視し、ロングボール主体でシンプルに前進していた神戸に対して、後方からのビルドアップで丁寧にゴールへ向かう柏では、戦術面での違いがある。持ち味のドリブルや、パスセンスで局面を打開していくタイプの汰木にとって、自身のテクニックをより生かせると思えたことが、柏への移籍を後押しする要因にもなった。

スタイルが対照的にも見える両チームだが、ピッチ内における意思疎通の重要性は変わらない。指揮官の求めるサッカーを十分に表現できている今だからこそ、次のステージに進むためには、選手たちがより自発的にプレーする必要があるのかもしれない。汰木は振り返る。

「柏はボールを大事にして前進していくスタイルだけど、例えば時間帯によってはシンプルにクロスを上げてほしいFWがいたり、サイドでボールをつなぎたい選手がいたりと、思い描いている絵が少し違うようなシーンが結構あった」

「そこはもっとコミュニケーションを取って、『こういうときは割り切るのもありじゃない?』とか、『こういうときは恐れずに後ろからボールを握って前進していこう』と、前と後ろの選手が同じ絵を描くことが大事だと思います」

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チームと同じく殻を破っていく

この試合でリカルド・ロドリゲス監督は「ゴールに直結するプレーのところで、彼の素晴らしい攻撃のクオリティでチームに貢献してほしい」と、62分に左WBのMF小見洋太に代えて、汰木を投入した。シーズン開幕前のキャンプで負傷し、この日が柏でのデビュー戦でもあった。

しかし、この日は攻守において十分なインパクトを残せたわけではなかった。クロスボールなどでチャンスメイクを試みたが、ゴールにはつながらず。むしろ、守備に費やす時間が長くなり、得意の攻撃参加にパワーを発揮できないと感じる場面もあった。

背番号16自身もチームと同じく、殻を破ろうと奮闘している真っ最中だ。

リカルド・ロドリゲス監督は、汰木に対してシャドーに加え、左WBという新境地での起用も想定しているようで、実際この日も交代投入した。本人はトレーニングマッチなどを重ねるなかで、徐々に感触をつかみ始めているという。ただ、指揮官が「ウィングバックに求める守備能力に関しては、まだまだ課題がありますが、本人もしっかりと取り組んでくれています」と語るように、発展途上であることも確かだ。

汰木自身も新ポジションの難しさを口にする。

「今チャレンジしているウィングバックは、守備の要素も強くて、走力も求められる。ケガも長かったですし、一つのポジショニングから探り探りでやっている途中です」

同ポジションは、昨シーズンリーグ戦37試合に出場していたMF小屋松知哉(名古屋グランパス)が主に任されていた。先発出場した小見が、今季の柏を「占うポジション」と責任感を抱くように、柏にとっては攻守において重要な役割を果たしている。

「守備に力を使う部分と、攻撃で自分の良さを出さなきゃいけない部分のバランスはすごく迷ってやっていた」と試行錯誤を重ねている汰木が、時にはライバルの小見とも話し合いながら、柏の新たな左WB像を作り上げようとしていた。

「小見ちゃんはめちゃくちゃ真面目で、監督が『戻れ』と言ったらディフェンスラインまで頑張って戻るんです。でも彼のような選手は攻撃で力を使えないと意味がないと思うし、それは僕も同じ。そこは自分が後ろの選手と話をして、ウィングバックの選手がもう少し高い位置で守備をするための声掛けを、どんどんしていったほうがいいと話をしました」

指揮官のサッカーを熟知している汰木だからこそできる提案だった。

とはいえ、汰木自身も守備に否定的ではない。むしろ「そこまでちゃんと戻ることは、自分にとっても今までやってきていないので、成長できると思ってポジティブにトライしています」と胸を高鳴らせた。

柏の目指すスタイルで、もっと上を目指せると信じている。

「自分たちでボールを握って前進していくサッカーにみんなで挑戦しています。失点が増えるのはある程度は仕方がないと割り切らないといけない。もちろんゼロで抑えようとしますが、神戸とは違って1失点もしないというチームではなくて、失点してもそれ以上の点を取っていく攻撃的なスタイルだと思う。チャレンジしていることは間違っていないと思うので、結果に左右されずにブレることなくやり続けたいです」

道のりは平坦ではないかもしれない。それでも優勝の味を知る男は力強かった。

取材・文=浅野凜太郎

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