「普通なら引き分けです」
スコアレスドローの90分を経てのPK戦。両者それぞれ10人がボールを蹴った。結果、川崎Fが9-8で勝利してアウェイで勝ち点2を積み上げた。
接戦の末につかんだ白星だったが、手ごたえがあまりない。試合終了後のミックスゾーンに現れた選手たちからは、歯切れの悪いコメントが目立った。
「90分を通して自分たちのゲームにし切れなかった。この内容で勝ち点2を取れて良かったです。普通なら引き分けですし」と主将のMF脇坂泰斗が首をかしげたように、ホームの千葉に苦しめられた。前後半を通じてシュート15本を放ったが、決定的なシーンはほとんど作れず。ピッチをワイドに使う千葉に苦戦し、ヒヤリとさせられる場面のほうが多かった。
「一人ひとりがプレスに行く距離が長くなったぶん、ハマらなくなってしまったことが原因かなと思います。千葉さんもすごくスピーディーな選手が多かったので、そこにアジャストするのも遅かった」
ボランチで先発出場し、90分間走り続けたMF河原創にも笑顔はない。ピッチのあらゆる場所に顔を出し、攻守にチームを支えた背番号19が記録した走行距離は、両軍通じて最長の12.388キロメートル。
だが、走り切ったというよりも、走らされた試合だった。河原が振り返る。
「ボランチのところはすごく広いなと思っていました。選手同士の間隔が広くて、縦にも横にも広げられていた。その影響もあって、攻撃の部分ではシュートを打つところまで行けてはいるけど、(得点が入る)可能性の部分を含めて合っていなかった」
前節は、昨季J1リーグを2位でフィニッシュした柏レイソルに5-3で勝利。開幕戦からのスタートダッシュを予感させていた。同試合でハットトリックを記録したFWエリソンも、この日は千葉DFに抑えられて不発に終わるなど、思わぬ展開となった。
PK戦では10人目までもつれ込んだ末に、GKスベンド・ブローダーセンのストップで、なんとか勝ち点2を拾った。肉薄の戦いを制したイレブンは冷や汗をかいていた。
長谷部茂利監督はクリーンシートについて評価しつつも「うまくいった場面が少なかった」ことを認め、「(前節と)同じチームなのか? という印象を持っています」と総括した。
まさに紙一重の戦いだったといっていい。
「攻守にわたってもう少し連動できれば、もう少し質が高く、強度高くいけたと思いますが、少しズレているのかなと。相手のタイミングになってしまっていることが多くて、それがうまくいかない理由の一つだと思います。いまは積み上げ中ですが、本来ならば、もう本番は始まっていますから」(長谷部監督)
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アジアの舞台に戻るために
昨季、川崎FはAFCチャンピオンズリーグ(ACLE)の決勝まで進むも、アル・アハリに0-2で敗れた。アジア王者まであと一歩のところで辛酸をなめたチームは「アジアの舞台に戻りたい」と、クラブ創設30周年の特別なシーズンを戦っている。
優勝チームにACLEへの出場権が与えられる百年構想リーグ。半年間という短いレギュレーションのなかで、一つでも多くの勝ち点を積み上げたい川崎Fにとっては、この日の“勝ち点2”も満足できるものではなかった。
「優勝を目指すチームなんだったら、まだまだ物足りない」と脇坂は険しい表情を浮かべる。勝ち点3を持ち帰れなかったことはもちろん、内容面での課題を指摘する。
「今日は勝ち点2を取れましたけど、PK戦までに決着をつけることを目指さないといけないと思います。そこはチーム全員で、意思統一していきたい部分」
「相手がどうであれ、自分たちがやろうとしていることを出す時間が少なかった。練習してきたことを出し切れなかったのは、選手の責任だと思います。自分がチームを引っ張っていく立場として、もっとやらないといけない」
第2節終了時点での順位は首位・東京ヴェルディに次ぐ2位。決して悪くない出だしではあるが、「これでいいという考えはない」と断言する。川崎Fの目指す場所はもっと上なのだから。
取材・文=浅野凜太郎


