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【高校サッカー選手権コラム】前橋育英vs流通経大柏。7年前の再戦は似たもの同士? 決勝で描かれる新たな構図を展望する

「負けたヤツほど強くなる」

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 「関東を、全国を代表するチーム」

 流経大柏を率いる榎本雅久監督は、前橋育英についてそんな言葉を口にする。ただそれは、流経大柏にも当てはまるフレーズだろう。

 どちらも育成年代最高峰のリーグである高円宮杯プレミアリーグEASTに属し、切磋琢磨を重ねてきた間柄。単に同じリーグカテゴリーにいるというだけでなく、1年生のころから非公式戦含めて何度も戦ってきた経験を持つ。

 加えて今季はトップチーム同士がプレミアリーグで対戦していただけでなく、どちらもBチームがプリンスリーグ関東2部に在籍しており、こちらでも対戦を重ねてきた。今大会で大ブレイクした流経FW山野春太は、こちらの前橋育英戦でゴールを決めていたりもする。

 トップチーム同士が激突したプレミアリーグは1勝1敗。優劣付かずという結果だが、当時からどちらも大きくメンバーが入れ替わっており、控え選手やBチームからの突き上げがかなり進んだこともわかる。Bチームまで含めて分厚い選手層を持ち、ハイレベルな競争によって成長が促されてる点も、両チームの共通点だ。

 夏に屈辱を味わったという点も共通している。

 どちらも夏の全国高校総体(インターハイ)は県予選敗退。全国優勝を常に狙うチームとして、悔恨しか残らない結果となった。

 ただ、前橋育英・山田耕介監督の言葉を借りるなら、「人は失敗や負けから成長するもの」である。この敗戦がさらなる競争と変化を促し、最終的には集団としての一体感醸成にも大きな意味を持たせることとなった。

 「最低ではなく最低限を取れるようになった。負けないサッカーができるようになった」とは榎本監督の言葉だが、悪い内容になったときに踏ん張れていることもまた、両校に共通する部分である。

勝負の機微はどこにある?

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 元々はサッカーの方向性が少し異なる部分もあった両チームだが、近年はベクトルが交わってきているように見える。

 これは現代サッカーの特徴を反映したとも言えるのだが、例えば前橋育英は初優勝時に“5つの原則”(球際、切り替え、運動量、声、ハードワーク)を掲げていた。今回のチームもそれを踏襲しているが、元々はボールを大切にするテクニカル志向のチーム。そこにタフネスの要素をあえて強調することで、現代サッカーで求められる強度と精度を両立させるチームを目指してきた。

 流経大柏もテクニカルな選手は多かったものの、そもそもは強度志向のチーム。習志野高校時代に「技術ばかり言い過ぎた」(本田裕一郎監督・当時)反省を踏まえ、厳しい守備とタフさを選手たちに求めてきた。またハイプレスの戦術をいち早く極め、お家芸としてもきた。2020年に就任した榎本監督も「そこはこだわりたい」と良さとして残しつつ、戦術的な柔軟性を持ってボールも動かせるチームを目指してきた。

 結果的に個人の特長はもちろんそれぞれまるで違うのだが、どこか似た部分のあるチーム同士に仕上がっている。戦術的な強度を持ち、技術的素養に優れた個人がいて、同時にタフさを重んじる。そして選手層が分厚く、ベンチメンバーにも魅力的な選手を揃える。

 7年前の対戦は榎本監督が「考えさせられた」と振り返るように、流経大柏にとっては一つのベンチマークとなったゲーム。一方、前橋育英にとっては、まさに目指してきたチームである。

 勝敗の行方はもちろんわからないのだが、タフな攻防が連続しつつ、戦術的な駆け引きと個々の技術の冴えが見られる試合になることは、間違いないだろう。

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