EA_FIFA19_Kaneko&Tese_01©J.LEAGUE

鄭大世「金子翔太はスーパーコンピューター」清水エスパルスの2人が語るそれぞれのプレーとキャリア

2015年の夏に韓国・Kリーグの水原三星ブルーウィングスから清水エスパルスに加入した鄭大世。同時期に金子翔太はJ2の栃木SCへ期限付き移籍し、2人が本格的に共にプレーするようになったのは2016年に入ってからだった。当時のことを2人はこう振り返る。

金子:テセ(鄭大世)さんは海外で偉大なキャリアを築かれたので「鄭大世来たか!」という感じでした。ワールドカップも出ていますし、すごいキャリアの持ち主なので、テセさんにすぐ話を聞きに行きました。バスでも食事会場でも、近くの席に座ってワールドカップの話とか、海外での話とか。テセさんもしゃべるのが大好きなので、聞けば聞くほど…、3倍くらいで返ってきましたね。

鄭:俺は最初にカネ(金子翔太)を見たときに「通じねぇだろう」と思っていました。「この体で大丈夫か?」と思っていて、でもちょこちょこ上手い。けど、「J1に行ったら潰されるだろうな」って思っていて…。
でも結局、今となってみれば常に(チームの)戦術の中心にいるのはカネだよね。このチームに何が必要なのか、まずそれを理解するためにはチームの状況を把握しなきゃいけない。戦術にしてもそうだし、監督が何を求めているのかっていうのも大体の選手は分からない。それは自分にエゴがあるから。

カネがそうやって、俺がエスパルスに来たときに、(話を聞きに)くる姿を見て、コミュニケーション能力がめちゃくちゃ高いと思った。それってなかなか普通はできない、みんな遠慮してしゃべりかけないし。それができるっていうことはやっぱり情報収集能力の高さだよね、スーパーコンピューター 金子翔太の。

現在、23歳の金子翔太。その金子と同じ年齢だった頃、鄭大世は何を考えてプレーしていたのか。

鄭:俺のプロ1年目と同じ年でしょ? ここからだね、ここから登っていくね。高卒と大卒って考えたときにいつも俺は本当に羨ましいなと思う、高卒の(選手たちの)ことを。(俺は)高卒でプロに入れなかったから大学に行ったけど、高卒で入ってプロの4年間を経験しているって本当に羨ましいよ。
当時はスタメン(での出場)が1回もなかった、カネの年齢のころ。1回もなくて(ゴールは)1点しか取ってないし、1年目なんて本当に何もなかった。テンパって途中出場で試合に入ったら、1回ミスして全部ミスになって…。今もあんまり変わってないけど。

そういう時期だよね、右も左も分からない時期だった。公式戦の緊張感っていうのにめちゃくちゃもうビビっていた時期。でもカネはもう慣れているでしょ? 今さら2万人の観客の前でも緊張しないでしょ? すごいよ。

先述した韓国・Kリーグやドイツでのプレー、そして2010年の南アフリカ・ワールドカップなど、海外での経験が豊富な鄭大世に対して金子翔太からこんな質問が。

金子:日本とドイツの差って、いろいろなところで聞かれていると思うんですけど、より細かいところで何かありますか?

鄭:めちゃくちゃ俺、練習中うるさいじゃん。

金子:はい…、はいって言うとあれか(笑)

鄭:俺が口うるさく言うのは、元々の性格ももちろんあるけど、ドイツに行って練習のあの激しさを見たら、試合よりも練習の方がもっと激しいだよね。その割にはすね当てをみんなしないっていう…。

それで日本に帰ってきたら、信じられない光景がすごくいっぱい起こっていた。「何でそれそうなの?」みたいな、「それ行けば取れるのに、何で下がっちゃうの?」みたいな。行かないから結局、自分が無力化される、みたいなことがいっぱい起きたて。

俺が海外で成功したわけじゃないから何とも言えないし、偉そうなことは言えないけど、やっぱり「球際だ!」とか、「足出せ!」とか口酸っぱく言って(チームに)かなり浸透してきているけど、(日本と海外の)違いはみんな同じことを思っていると思う。
航也(北川航也)と話しをしていて、やっぱりその話はする。日本代表の練習に参加してみて「全然違う」って言うね。

金子:言ってますね。

鄭:「海外組と国内組では全然寄せのスピードも、足の出し方も違う。本気でボールを取りに来るから、それが見えていないと何もできない」って航也が言ったときにすごく共感した。
俺が昔そういう風に言っていたことを、航也にも「すごく納得できました」って言ってもらえたから、めちゃくちゃ嬉しかった。航也が認めてくれたようで嬉しかった(笑)

鄭大世も語るように清水エスパルスの中心選手に成長した金子翔太。これまでのキャリアについて振り返ってもらうと、やはり大きな影響を与えていたのは鄭大世だった。

金子:僕自身のキャリアの成長にはテセさんもすごく影響していて…。やっぱりJ2の時(2016年)に、大前元紀(現・大宮アルディージャ)くんとポジションを争って、元紀くんが怪我をして僕がテセさんの相方として出場して、翌年のJ1でもずっと試合に出て、でも4点しかとれなくて…。
守備は割りと頑張っていたけど、攻撃の方ではなかなかチャンスメイクも数が少なくて、ずっとテセさんに言われていたのは「攻撃面でのチャンスメイク」ってところ。

2018年のこのシーズンはやっぱり攻撃のところはすごく自分の中で意識している部分で、前線の選手である以上、ゴールする、アシストするっていうのは考えてきた。
もちろんポジションがサイドハーフに変わって、自分の特徴が生かしやすくなったっていうのもあるけど、今年は9ゴール・6アシスト(最終的に10ゴール・7アシスト)で、テセさんに口うるさく言われていた「前に!前に!」っていうところが、ずっとそばで言ってもらっていたからこそ、今年こういう数字を出せていると思う。
2年間、テセさんの横でFWとしてプレーしたのが今すごく生きているかなって思います。

そして、共にプレーをする中で鄭大世が感じた金子翔太の長所とは?

鄭:吸収力が高いかな。カネは自分からアドバイスを求めてきて、それを上手く体現する。インプットしてアウトプットできるっていうのは、それもまた能力だと思う。素直に聞き入れてトライしようとするっていうことを、簡単そうに見えて難しいことを、カネはやっているからね。

だから(カネに)常に言っている「点を取るためには、点を取るポジションにいなきゃダメだ」っていうことを、しっかりトライしているからこぼれ球(からのゴール)がすごく今季は多かったと思う。ゴールなんて10点のうち7、8点は絶対にゴールエリアの付近だから。ペナルティエリアの中であり。
(今季はゴールを)2桁取って欲しいな。俺がずっと考えているのは途中から俺が入ってPKを取って、カネの2桁のためにPKを譲るっていうのを思い描いているけど、なかなかできない。

金子:自分で取りたいですね、長崎戦(明治安田J1・第34節の長崎戦で1ゴール・1アシストを記録した金子翔太は、キャリア初の2桁得点を達成。同試合では鄭大世もゴールを記録した)。

最後に金子翔太の今後のキャリアにおけるアドバイスを鄭大世に尋ねると。

鄭:放っておいても上に行くと思う。若いときの可能性っていうのは、北川航也を見てから本当に「分かんねぇもんだな」っていうのはすごく思う。未来を想像したときに、自分の想像力では追いつかない可能性を若手は秘めているからね。

特に高卒でプロに入る選手は才能を認められて(プロに)入るわけで、今できていることで「じゃあ、もっと上に行くためには何が必要か?」って考えた時に、今できてないんだからこれより上はいけないよって想像を超えてきちゃうからね。

だから俺は上から偉そうなことを言うことはできないし、自分の可能性を信じて、限界を決めないでやればいくらでも上に行けるから、アドバイスすることは何もないと思う。

金子:と言いつつも、こう見えて(テセさんは)さみしがり屋さんな部分もあるし、後輩の面倒見もすごく良いし、僕自身もご飯に連れて行ってもらったり、いろいろとお世話になってるので、ピッチ内外どちらでも刺激になっていますね。

対談した2人が欧州のビッグクラブを操って『FIFA19』で対戦した模様は こちら から。

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