超攻撃的サッカーでCL出場権獲得が目前のアタランタ。必見のセリエA最多得点クラブ、その戦術と躍進の理由

(C)Getty Images

アタランタの躍進は、セリエA今シーズン最大のサプライズだった。残り2試合となった現時点で勝ち点65を挙げてユヴェントス、ナポリ、インテルに続く4位と、ミラン、ローマを圏外に追いやって来季のチャンピオンズリーグ出場権(4位以内)に手をかけている。さらにコッパ・イタリアでもユヴェントス、フィオレンティーナを下して決勝に勝ち残っているのだ。

文=片野道郎(イタリア在住ジャーナリスト)

■プロヴィンチャーレの鑑

CLがスタートした92-93シーズン以来27年間で、5大都市(ミラノ、トリノ、ローマ、ナポリ、フィレンツェ)以外からCL本選進出を果たしたのは、カルロ・アンチェロッティ率いるパルマ(97-98)、ルチャーノ・スパレッティ率いるウディネーゼ(05-06)の2クラブのみ。もしこのまま4位を守り切れば、それに続く史上三度目の快挙となる。

ミラノから50kmほど北に位置する人口12万人強の小都市ベルガモを本拠地とし、「アタランタ‏・ベルガマスカ・カルチョ」という正式名称を持つこのクラブは、「プロヴィンチャーレ」(イタリア語で地方都市の中小クラブを指す。ちなみに日本でよく使われている「プロヴィンチャ」は誤用)の鑑のような存在である。

セリエA累計在籍年数58はリーグ11位で、プロヴィンチャーレの中では最多、ジェノア、ヴェローナ、カリアリというスクデット獲得経験のある名門クラブをも上回る。イタリア屈指の育成クラブとしても知られており、古くはガエターノ・シレーア、ロベルト・ドナドーニ、アレッシオ・タッキナルディから、近年のリッカルド・モントリーヴォ、ロベルト・ガリアルディーニ、ダヴィデ・ザッパコスタまで、イタリア代表で活躍するプレーヤーを数多く輩出してきた。現在セリエA、Bでプレーするアタランタ育ちの選手は30人以上、欧州5大リーグに限っても15人に上っている。これはインテル、ローマに次いでイタリア3位、ヨーロッパ全体でも25位にあたる数字だ。

クラブ経営も模範的で、オーナーシップは常に地元実業界の手に握られてきた。現会長アントニオ・ペルカッシは、1970年代にDFとしてアタランタでプレーした後、実業家に転身。グッチ、ナイキ、ベネトン、キコ、スターバックスなどのフランチャイズストアやアウトレットパークをイタリア各地に展開する大手流通グループを一代で築き上げた遣り手経営者だ。

ペルカッシは2010年に会長になると、それまでの10年間で3度のB降格を経験していたクラブをセリエAに定着させ、2017年にはスタジアムを市から買い取って大規模な改築に着手する(現在も進行中)など、ピッチ上、ピッチ外の双方で長期的な視点に立ったクラブの基盤整備を進めている。

■転機はガスペリーニの就任

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ピッチ上での躍進が本格化したのは3年前に、ジャン・ピエロ・ガスペリーニが監督に就任してから。それ以前はセリエA残留・定着を唯一最大の目標に、結果重視の手堅い戦術を打ち出す監督(ステーファノ・コラントゥオーノ、エディ・レーヤ)の下、若手よりは経験値の高いベテラン優先の陣容で戦うという、他のプロヴィンチャーレと変わらないアプローチを取ってきた。

ガスペリーニ体制1年目の16-17シーズンも、当初はその路線を継承するベテラン中心のメンバー構成だった。ところが開幕からの5試合で4敗という最悪のスタート。次のクロトーネ戦を落とせば解任という瀬戸際に追い込まれた指揮官は、その決戦のスタメンに、開幕からレギュラーだったケシエ、スピナッツォーラに加え、カルダーラ、コンティ、ガリアルディーニと、生え抜きの若手をさらに抜擢して中軸に据えるという賭けに出る。この試合を3-1で制したのが、快進撃のスタートだった。そこからの32試合を20勝9分4敗で駆け抜け、誰も予想だにしなかったセリエA4位という快挙を果たしたのだ。

残念ながらこの年まではイタリアのCL出場枠が3チームに限られていたため、翌17-18シーズン、アタランタはヨーロッパリーグ(EL)を戦うことになる。前年の活躍でガリアルディーニ、ケシエ、コンティ、スピナッツォーラと主力を担った若手がビッグクラブに引き抜かれたのに加え、慣れない週2試合のハードスケジュールもあり、前半戦はとりこぼしが目立って2桁順位に低迷した。しかし、EL敗退(ベスト32)後のシーズン後半に盛り返して7位に入り、続く今シーズンのEL予選3回戦の出場権を確保する。

■今季も序盤は苦しむ、イリチッチが牽引

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そして迎えた今シーズンは、セリエA開幕より1ヶ月も早い7月末にスタートしたそのEL予選で、3回戦、4回戦と順調に勝ち上がりながら、8月末のプレーオフでコペンハーゲンにPK負けを喫して敗退するというショッキングなスタート。その落胆からかセリエAでも開幕からの8試合で1勝しかできず、降格ゾーンに沈むという最悪の展開になった。

その流れを変えたのは、故障で序盤戦を欠場していた攻撃の要ヨシップ・イリチッチ。シーズン初スタメンとなった第9節キエーヴォ戦(10月21日)でハットトリックを決め、開幕戦以来2ヶ月ぶりの勝利をもたらすと、その後も強力な左足を武器にチャンスメイクからアシスト、ゴールまで、最後の30mで決定的なプレーを連発して、一気にチームを上位にジャンプアップさせた。

ガスペリーニ監督のサッカーは、ゾーンディフェンス全盛の現在にあっては珍しい、1対1のデュエルに基本を置いたマンツーマン色の強い戦術が特徴だ。3バックの最終ライン、豊富な運動量でライン際を激しく上下動するウイングバックとそれに負けない縦のダイナミズムを備えた2人のセントラルMFが構成するフラットな中盤、そして日本で言うところの「1トップ2シャドー」で構成される前線。数字で表せば3-4-2-1と表記できるこの布陣を基本としながら、攻撃の最終局面では4人、5人をゴール前に送り込み、そこでボールを失えば間髪を入れずにゲーゲンプレッシングで即時奪回を狙う、アグレッシブかつダイナミックなスタイルである。

ひたすら縦へ、前へという攻撃的な姿勢を象徴するのが、1試合平均2.02(36節終了時点で73得点)と首位ユヴェントスをも上回ってリーグトップに君臨する得点の多さ。驚くべきは、その3割近くをDF陣が挙げているという事実である。とりわけ右ウイングバックのポジションを分けあうハテブールとカスターニェは合わせて9ゴール8アシスト、CBのマンチーニは1人で5ゴール2アシストと、下手な攻撃的MFも顔負けのオフェンス性能を誇る。

しかもその得点の大半は、セットプレーではなくオープンプレーからのもの。サイドの連携を効果的に使って素早くボールを敵陣に運び、トップ下のゴメス、イリチッチが絡んで一旦タメを作った後改めてサイドに展開、ライン際を深くえぐったウイングバックからのクロスを、その間にゴール前まで攻め上がってきた逆サイドのウイングバックがファーサイドで仕留めるという形は、アタランタの必殺パターンのひとつである。

しかしもちろん、攻撃の中核を担うのは前線のアタッカー陣だ。189cmの大型CFサパタが裏を狙う動きを繰り返して敵最終ラインを押し下げ、その手前にできた2ライン間のスペースを自由に動いてボールに絡むゴメス、イリチッチという2人のトップ下が、持ち前のテクニックとファンタジアを駆使して決定機を作り出す。「パプ」の愛称で知られ、165cmとセリエAで最も背の低い部類に入るゴメスは、時にイスコやコウチーニョを思わせるトリッキーでアイディア溢れるプレーと、自信に満ちたポジティブな姿勢でチームを引っ張るリーダーシップを兼ね備えた頼れるキャプテン。190cmのイリチッチとの凸凹コンビは必見だ。今シーズン新加入したCFサパタは、この2人の質の高い仕事にも助けられて大ブレイクし、キャリアハイの22得点を記録した。日本代表も参加するコパ・アメリカでは、コロンビア代表のエースとしてその雄姿を見せるはずである。

■「一年の計」を左右する5日間

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残りわずかとなった今シーズンだが、アタランタにとってはここからの5日間が「一年の計」を左右する正念場である。今日15日夜(日本時間16日早朝)にはラツィオとのコッパ・イタリア決勝、そして週末19日にはセリエA4位争いを決定的に左右するであろうアウェーのユヴェントス戦が控えているのだ。

アタランタがコッパ・イタリア決勝を戦うのは、初めてにして今のところ唯一の優勝を飾った1963年、準優勝に終わった87年、96年に次いでこれが史上4度目。対戦相手のラツィオとは10日前に同じローマのスタディオ・オリンピコで戦い、3-1で完勝している。一発勝負は「水もの」とはいえ、浮き沈みの激しいシーズンを送り、今も好調とは言えないラツィオと、コンディション、モティベーションとも高いアタランタを比べれば、後者の優位は動かない。唯一の不安材料は、メンバーの大部分が、ビッグタイトルを賭けた戦いの経験がないこと。ELプレーオフ敗退の記憶がネガティブな方向に働かなければいいのだが……。

決勝の4日後に行われるユヴェントス戦にも、いろいろな意味でこの試合の影響が及ぶことになるだろう。5位に並ぶローマ、ミランとの勝ち点差は2。もし敗れれば4位の座から転落する可能性は小さくないが、勝てばCL出場権獲得に大きな一歩を踏み出すことになる。ここからの5日間はアタランタから目が離せない。

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

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