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「若手の経験」だけでは意味がない。森保ジャパン、コパ・アメリカ参戦の価値と収穫

エクアドルに勝てば史上初のべスト8進出、しかも対戦相手は“本気”のブラジル。だが、ドロー以下ではグループステージ敗退――。コパ・アメリカ2019グループC第3節でエクアドルと対戦した日本代表は1-1で試合を終え、ブラジルの地を去ることとなった。2分け1敗勝ち点2。大会前、選手選考などでさまざまな議論がされたこの若き日本代表は、試合ごとに若手とベテランが融合し、進化した姿を見せていった。ブラジルで現地取材を続けてきたスポーツライターの飯尾篤史氏が見る今大会の意義とは?

■苦渋の決断だったエクアドル戦の先発

 若い選手たちに経験を積ませて成長させる――。それが、22歳以下のメンバーを中心に戦うコパ・アメリカにおける重要なミッションだ。

 それゆえ、エクアドルとのグループステージ最終戦は、オーバーエイジの出場を控え、若いメンバーを中心にラインナップを組んでもおかしくなかった。

 実際、森保一監督は「できれば招集した選手すべてに経験を積ませて、今後の成長に繋げてもらいたい、という想いがあった」と明かしている。

 だが、結果としてエクアドル戦のスタメンは、ウルグアイ戦のメンバーから安部裕葵を久保建英に代えただけ。5人のオーバーエイジ全員がピッチに立った。

 そこには苦渋の決断があった、と指揮官が言う。

「経験なのか、勝負に徹するのか。もちろん、勝負に徹することは必要ですが、より経験のほうに比重を置いたほうがいいのかすごく考えました。でも、『なんとなく経験する』ということが彼らにとっていいことなのか、と」

 ただ、ピッチに立つだけでは意味がない。本気で勝利を掴み取る戦いを繰り広げてこそ、経験になる――。そんな結論に達した指揮官が自信をもって送り出したのが、ウルグアイ戦をベースにした11人だったのだ。

 試合後、オーバーエイジの岡崎慎司は「2試合も先発で出られるとは思っていなかった」と語った。レスターでノーゴールに終わった自身が今回招集されたのは、若い選手たちに経験を伝えることを期待されてのもの、だと考えていたからだ。

 だが、岡崎にとっても代表復帰の千載一遇のチャンス。この好機を岡崎は逃さなかった。練習中からアピールし、ウルグアイ戦で1トップとして健在ぶりを証明した。こうして岡崎は、自身の手で2度のスタメンの座を掴み取ったのだ。

 それは、同じくストラスブールで不遇のシーズンを送ったGK川島永嗣も、昨年9月以来の招集となった植田直通も同じ。森保監督が語る。

「岡崎や川島だけでなく、柴崎、植田、中島と、みんなスペシャルなものを見せてくれた。このチームでやっていくことを真摯に受け止め、練習中からトライする姿勢を見せてくれた。経験が豊富な選手たちが口先だけではなくプレーで示してくれた。ピッチ外の言動にしても、若い選手たちの指針となるような姿勢を見せてくれたと思います」

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■オーバーエイジが若者たちの躍動を支える

 コパ・アメリカにおけるラストマッチとなったエクアドル戦は、若者たちの成長を再確認できるゲームになった。

 トップ下に入った久保と右サイドハーフに入った三好康児は相手のアンカーの脇で何度もパスを受けて前を向き、ボランチに入った板倉滉はウルグアイ戦と打って変わって軽快にパスをさばいた。右サイドバックの岩田智輝も失点には絡んだものの、何度も攻撃参加し、くさびのパスを狙った。

 もっとも、彼らがハツラツとプレーするうえで、GK、DF、ボランチ、2列目、FWと各ポジションに散らばったオーバーエイジの存在も見逃せない。

 久保の代わりにプレスバックした岡崎は、裏を狙って相手ディフェンスラインを押し下げ、2列目にプレースペースを与えた。柴崎岳の攻守両面における奮闘は言うに及ばず、植田も岩田のカバーに奮闘した。

「彼らがこういった舞台でバチバチやれるようにコーディネートする役割があった」と柴崎が言えば、岡崎も「若い選手たちに好きなところでボールを受けさせてあげたかったので、何も言わずに守備をした面もある」と語った。

 それだけではない。岡崎や川島は代表の重みをプレーで示し、植田は代表定着への想いをプレーに乗せた。柴崎はキャプテンとしてピッチ内外でチームを引っ張った。

「川島選手や岡崎選手といった経験ある選手は、自分たちにはないものを持っているし、試合の入り方は、自分たちにはがむしゃらさがあるぶん、彼らには冷静さがあると思います。違う角度から物事を見れているなとも感じますし、苦しい時にも率先して声を掛けてくれたり。勝ちたいと思った時に自然と出てくるものなのかな、と感じました」

 そう語ったのは久保である。こうした経験者たちとともに戦い、ポジションを争い、その背中を見られたことは、若い選手たちにとって、本気の南米勢と真剣勝負を行えたことと同じくらいの価値はがあるはずだ。

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■A代表と五輪代表の融合の始まり

 前述したように今回、オーバーエイジの5人は各ポジションに散らばっているが、それは意図的に選んだものだと指揮官は言う。

「(東京五輪では)どのポジションにもオーバーエイジが入ってくる可能性があるということを感じてもらい、よりレベルアップしてほしかった」

 22歳以下のメンバーを中心に参加した今大会は、1年後に迫った東京五輪への強化の一環という位置付けだが、A代表と五輪代表の融合の始まりにもなった。森保監督は「今後A代表に絡んでいくポテンシャルを感じさせてくれた選手がいる」と、何人かのA代表昇格を匂わせた。

 9月からカタール・ワールドカップ・アジア予選がスタートする。そのメンバーに今大会を経験した若手が名を連ねてもおかしくないが、むろん、岡崎、川島、植田らの名前があっても疑問はない。

 代表チームに選手の拘束力がなく、メンバーを集めるのに苦労したコパ・アメリカだったが、終わって見れば、A代表、東京五輪代表の双方にとってターニングポイントとなり得る大会だった。

取材・文=飯尾篤史

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