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継続路線の大分、J1定着なるか。アジア王者・鹿島戦は今季を占う大一番【J1開幕戦・大分プレビュー】

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2019シーズンの明治安田生命J1リーグが、いよいよ開幕する。6年ぶりにJ1の舞台へ戻ってきた大分トリニータは、初戦でいきなりアジア王者の鹿島アントラーズと激突。片野坂知宏監督の下、継続路線で着実に力をつける大分にとって、鹿島との初戦はシーズンの今後を占う重要な戦いとなりそうだ。【文=ひぐらしひなつ】

■13年のJ1挑戦と異なる点

昨季J2を2位でフィニッシュして自動昇格を勝ち取り、今季は6年ぶりにJ1のステージに戻ってきた大分トリニータ。12年に開催された初の昇格プレーオフをJ2の6位から制してJ1へと上がった13年は、リーグ年間2勝と惨憺たる戦績で最下位となり、1年でJ2に押し戻された。このシーズンも人件費は4億5000万円と最少。その上、J1昇格に貢献した前年の主力選手と契約を更新できず、戦術的積み上げのない状態でJ1での新シーズンに臨まなくてはならなかった。

代わりにJ1経験値の高い戦力を多く獲得したが、相次ぐ負傷離脱などでフィットが遅れたことも、苦境に陥る要因となった。それでも、試合内容は決して悪くなく、決定機も多く作れてはいた。ただ、個々の力量が築き上げる地力の差を埋めることができず、勝点を拾えなかった。

外国籍選手枠拡大などによりクラブ間格差が広がるなかで、今季も人件費はダントツでリーグ最少と推定されるが、その他の条件は13年とはかなり異なっている。昨季J2での躍進を支えた主力のほとんどが引き続き在籍し、戦術が継続されている。

それを土台としてさらに強化する狙いで、戦術にフィットする新戦力を加えた。戦術のベースが確立しているため、新戦力の融合もスムーズに進む。フィットまでに時間を要しそうだと思われていた選手も、プレシーズン終盤にぐっとチームに溶け込んだ様子を見せ、開幕スタメンの予想がさらに難しくなった。

それでも、そうそうたるJ1の他クラブとの地力の差を埋めるに至ったとは言い難い。というのも、戦力のほとんどがJ1でのプレー経験を持たず、このカテゴリーでは未知数だからだ。

昨夏、山口からG大阪へと移籍した小野瀬康介や、岐阜から神戸へと移籍した古橋亨梧らの活躍を見るに、J2上位ランクのプレーヤーはJ1でも通用するという考えの下、昨季J2で輝きを放った戦力を多く獲得したが、彼らがJ1でどの程度ポテンシャルを発揮できるのかは計算できない。

コンスタントにJ1でプレーした経験を持つのは湘南や柏で主力を務めた高山薫くらいで、あとはJ1で思うように試合に絡めず、カテゴリーを落として出場経験と実績を積んだ選手や、J1は未知の領域という選手がほとんどだ。

■今後を占う鹿島との開幕戦

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そんな彼らの初陣はアウェイ。泣く子も黙る20冠を誇る名門・鹿島アントラーズに挑む。経験値の差は歴然だ。開幕戦でいつも以上に迫力あふれる県立カシマサッカースタジアムの雰囲気に萎縮することなく、自分たちの持てるポテンシャルを最大限に発揮できるチャレンジャーとしてのメンタリティーが問われる。

「これまで練習で積み上げてきたことを出せればチャンスはある」と、選手たちは口を揃える。片野坂知宏監督が辛抱強く築いてきたのは、形としてはGKを含め後方からビルドアップしながらゴールへと迫っていくスタイル。そこには局面ごとのプレーヤーの判断力と、組織での意識共有が、高いレベルで必要とされる。

チームは決して勢いに任せることなく、徹底して継続することで戦力個々の力量を向上させ、それを組織力のアップへとつなげてきた。開幕から試合を重ねて練度を高め、目指す戦い方がJ1でも表現できるようになるまで、地道に勝点を拾っていきたい。残留ラインとして想定する勝点45に向けて、6試合1クールを2勝2分2敗以上で乗り切るのが目標だ。初戦で絶望感を味わうか、次につながる収穫を手にするかは今後の戦いにも影響してくる。

■ベースは[3-4-2-1]だが、3ボランチ併用も視野に

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システムはここまで[3-4-2-1]をベースとしてきたが、対相手戦術や自チームの状況によっては、昨季も併用していたトリプルボランチの[3-5-2]で臨む可能性もある。今季は中盤の選手層が厚く、昨季以上に試合ごとの狙いによってオプションを使い分けて戦いそうだ。

ダブルボランチなら現在のところ、昨季からコンビを組んでいた丸谷拓也と前田凌佑のフィット感が抜きん出ていると思われるが、トリプルボランチになると島川俊郎や小手川宏基、小塚和季といったクレバーな面々も先発候補に食い込んでくる。アジアカップ後にチームに合流したタイ代表MFティティパンも戦術理解度が高く、いきなり開幕戦に絡んでくるかもしれない。

J3から大分を率い、指揮官としては初めての舞台に挑む片野坂監督だが、現役時代、またコーチやヘッドコーチとしてはJ1での経験が最も長い。このリーグでの戦い方は熟知しているはずだが、「コーチと監督では全然違いますから。僕自身が舞い上がることなく冷静に采配しなくては」と、国内最高リーグでの戦いに気を引き締める。

J2からの昇格組が、善戦しながらもなかなかJ1残留や定着を果たせていない昨今、J3時代から個の力量に頼ることなく組織で戦ってきた大分のようなチームが、Jリーグに爽快な刺激をもたらすことを期待したい。

文=ひぐらしひなつ

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